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『短物語』全話あらすじ&感想&解説!三十九の”身近な”物語は日常感満載!【ネタバレあり】

どうもウハルです!

今回は、〈物語〉シリーズの原作小説である『短物語』の全話あらすじと感想&解説を語っていきたいと思います!

まず、この『短物語』の全体的な感想から書かせて頂くのであれば非常に面白かったです!

各キャラ毎の掛け合いもさることながら、本編に対する裏話のみならず、前日譚&後日譚のような位置づけになっている短々編も描かれていたりするので、「あの話の裏ではこんなことが…」みたいなことが知れるのは物語に深みが出てくるようでとても良かったです

また、この『短物語』は原作のみならず、アニメだけでも〈物語〉シリーズという作品に触れている人には十分に楽しめる内容だなと感じたのもこの作品の良いところ

たしかに、中にはある程度原作を読んでいないと分からない内容のものもありますが、それでも39の短々編のうち1つか2つ程度といったところでしょうか

少なくとも2024年時点でアニメ化されている〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズンまで見ていればほぼ全ての内容は分かるものとなっているので、原作未読の方でも気軽に手を出せる作品となっていましたね

そんな『短物語』の感想&解説を全話のあらすじを含めて語っていこうと思いますので、原作を読もうか悩んでいた方は是非参考にしてみて下さいね!

また、その短々編の時系列も分かる範囲で記載していますので、その辺りも作品を楽しむ上で参考にしてみて下さい

ただ、今回はネタバレ込みの感想にもなりますので、全くの無知識で読みたいと思っていた方はお気を付けください

『短物語』とは?

著:西尾 維新, イラスト:VOFAN

西尾維新がおくる青春怪異譚〈物語〉シリーズ、初となる短々編集!初期三十二編に六つの書き下ろし短々編を加えた、三十八編の身近な物語!
“人の心など、僕にとっては暗闇だ。”
忘れたい過去の記憶に魘される千石撫子。果てなき未来にいよいよ絶望する忍野忍。カウンセリングを試みるのは死体人形・斧乃木余接!
「なでこパスト」/「しのぶフューチャー」
未来過去、語り遭えるのが、青春だ。

原作者西尾維新
公式X:@NISIOISIN_info
イラストVOFAN
公式X:@VOFAN_TW
発売日2024年9月11日
出版社講談社

こちらの小説は『混物語』を除けば通巻30冊目のシリーズ作品になり、原作の巻末にも書いてありますが、〈物語〉シリーズ初の短々編集になります

読み方は『短物語(ミジカナモノガタリ)』で、キャッチコピーは「100パーセント身近で書かれた小説です。」になります

西尾維新先生はこれまでに刊行された原作シリーズのみならず、描き下ろしの短々編も数多く書かれており、その多くが何かしらの特典だったりしていますが、中にはイベントに行った人にしか手に入らないような短々編などもありました

そういった意味だと、今回の『短物語』は今まで読みたくても読めなかった貴重なエピソードが読めるいい機会ともなっており、ファン必見の小説とも言えますね

そしてこの作品は短々編なので、本筋とはほとんど関係がなく、ただただ登場人物たちの日常が描かれた物語ともなっているので、〈物語〉シリーズに触れたことがある人であれば気軽に楽しめる内容ともなっています

そんなお気軽さとは裏腹に「え?これここでやっちゃうの?」とも思えるような幕間的な意味合いの物語もあるのでその辺りもこの『短物語』の良い所ですね

『短物語』全話あらすじ&感想&解説

ひたぎブッフェ

あらすじ

「戦場ヶ原。お前、太った?」
彼女である戦場ヶ原ひたぎと共にケーキ屋にやってきた阿良々木暦。食べ放題ということもあり、そこのケーキの美味しさを十分に堪能する中、戦場ヶ原を見てふと思った一言を呟く。
その一言に怒りをあらわにする戦場ヶ原だったものの、太った理由には蟹に行き逢っていた頃の体重と深く関わりがあったようで……

収録媒体『化物語』アニメコンプリートガイドブック
時系列『偽物語』以降

阿良々木くん&戦場ヶ原のデート回!

そんなデート中にポロっと彼女に「太った?」っていう阿良々木くんのデリカシーのなさはさておいて、その太ったという言葉に対して「女の子は増えるのよ」と言う戦場ヶ原の返しは上手いなと思わされて意外と好きです(笑)

そんな戦場ヶ原ですが実際に体重は増えたらしく、五キロくらい太ったそうな

この重さは蟹に行き逢った頃の体重と一緒で好きな物を好きなように食べていたら太ったらしんですが、これに関しては致し方ない部分もあります

彼女は当時、重みを奪われていた為、食べるものもそうですが服すらも重みを制限していました

しかし、その重みから解放され、自由に好きな事が出来るようになった彼女は好きな物を好きだと感じられる自分が誇らしく思えるようになったそうです

そう考えると、色々と食べ過ぎてしまうのも分かるような気がしますね

ちなみに戦場ヶ原はこの後、神原とトレーニングをするという決して常人では真似できない方法によって短期間でダイエットを成功させています

まよいルーム

あらすじ

「やっべー。どうすんだよ僕。こんなことしちまって……」
受験勉強の息抜きにサイクリングに出かけた阿良々木暦は、道中で八九寺真宵と出会い、その勢いのまま彼女を誘拐してしまう。部屋に着いて我に返ったものの、自分のしでかしたことに思わず頭を抱える。春休みやゴールデンウィークとは比べ物にならない人生の岐路に立たされた阿良々木暦の行く末はいかに!?

収録媒体『化物語』アニメコンプリートガイドブック
時系列8月20日(日)
『猫物語(白)』の前日、『傾物語』の初日

ついにやってしまった阿良々木くん(笑)

正直、八九寺と接する時の阿良々木くんの暴走っぷりの時点で犯罪染みていましたが、ついに本当の犯罪行為を犯してしまったw

そして誘拐された側の八九寺は特に慌てることなく「いつかやるとは思ってました」と話す辺りが、二人の関係性(信頼感?)を表してましたね

さらにそこからエロ本を探すという神原と全く同じことをし始める辺りも、良い笑いを生んでて好きなエピソードです

なお、『猫物語(白)』で八九寺がリュックを背負っておらず、『傾物語』で阿良々木くんがリュックを持っていた理由は、この時に八九寺が阿良々木くんの部屋にリュックを忘れたからになります

アニメでは描かれていませんでしたし、原作でもこの短々編でしか描かれていない内容にはなりますが、本編とリンクする貴重なエピソードの一つですね

するがコート

あらすじ

「気を張ってお洒落してみたのは確かだがな。何せ、阿良々木先輩との二度目のデートだし」
ここ最近の神原駿河の行動は目に余るものがあったため、阿良々木暦は神原にお灸を据えるために果たし状を叩きつける。バスケ対決を挑んだものの、この後輩は何を勘違いしたのか思いっきりデートするような格好で現れた。予想外の展開ながらも、阿良々木暦は神原駿河に勝負を挑む!

収録媒体『化物語』アニメコンプリートガイドブック
時系列「するがモンキー」以降

これはある意味で阿良々木くん&神原のデート回です(笑)

阿良々木くん自身はお灸を据えるために神原にバスケ勝負を挑んだ形にしましたが、実際のところは左手が原因で長い間バスケから離れてしまい、元気がなくなっていた神原を心配した阿良々木くんが彼女を元気づける為に挑んだ勝負でした

こういった優しさを見せる辺りはさすが阿良々木くんと言った感じですが、神原自身もそのことに気付いた上で、この勝負に乗る辺りもまたさすが神原と言った印象がありましたね

ちなみに、阿良々木くん相手に手加減なしでバスケを楽しんだ神原は二時間の間に120対0という大差の圧勝をぶちかましていますw

なでこプール

あらすじ

「どうかな?この水着。撫子、ちょっと冒険してみたんだけど」
千石撫子から水泳を教えて欲しいと言われた阿良々木暦は二人で市民プールへと出掛ける。更衣室で水着に着替え、プールサイドに出たものの、阿良々木暦はそこでマイクロビキニ姿の千石撫子の姿を目にする。

収録媒体『化物語』アニメコンプリートガイドブック
時系列「なでこスネイク」以降

〈物語〉シリーズにおいて数々の挑戦的な衣装を着てきた千石撫子ですが、このマイクロビキニに関しては間違いなくぶっちぎりで放送ギリギリでしょうね(笑)

手ブラでブルマ姿というのも危ないと言えば危ないですが、あの時はまだ「蛇の痕を見せるため」という建前もあったので、まだギリギリ理解出来なくはないです

ただ、この時のマイクロビキニに関しては阿良々木くんの気を引きたかったというのがあったとはいえ、あまりに冒険しすぎw

これは完全に千石の中で黒歴史化すること間違いなしの内容でしたね

ちなみに、放送ギリギリとは言いましたがこのエピソードは〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズンの『撫物語』内で登場したアイキャッチで描かれている内容になります

あれはイラストだけで会話は描かれていないので、どんなやり取りがあったのか気になる方はこのエピソードを読んでも良いと思いますよ

また、『撫物語』の「なでこドロー 其ノ參」で余接が水着姿の”おと撫子”を見つけたと言った時に、千石が「まさか…マイクロビキニ!?」と言っていた理由もこのエピソードから来ていますね

つばさソング

あらすじ

「やっほー。じゃ、行こっか」
羽川翼からデートのお誘いを受けた阿良々木暦は、彼女と共にカラオケに行くことに。意外な場所に驚きつつも、彼女がカラオケに来た理由はストレス発散と”あるお願い”を阿良々木暦にするためだった。

収録媒体『化物語』アニメコンプリートガイドブック
時系列「つばさキャット」の数日後の日曜日、「かれんビー」の前

「羽川がカラオケ?」と思わず違和感を覚えてしまうくらい意外な場所でしたが、これはストレス発散の一つという理由で納得

溜め込んだストレスが原因でブラック羽川というもう一人の自分を生み出してしまったことから羽川が考えた一つの結論ではあるんですが、それにしても初めてカラオケに行って歌う曲全てが百点という歌の上手さは凄すぎる(笑)

この時の阿良々木くんも言っていますが、羽川は本当に学校のテスト以外でも百点しか取らないようですw

そして、ここで羽川がした”あるお願い”というのは「髪を切ってもらうこと」です

『化物語』の時は二房の三つ編みでしたが、それをバッサリと切ったのは阿良々木くんだったんですよね

一応その後、羽川は美容院で髪を整えてもらったらしく、さらに言えば切った二房の髪は阿良々木くんが持ち帰っています

この羽川の髪を切ったことに関しては原作やアニメでは描かれていませんが、『花物語』で阿良々木くんが「女子の髪を切るのは三人目だぜ」と言ったセリフはここでの出来事と繋がり、その一人目が羽川翼になります

ひたぎネック

あらすじ

「こよこよが私に家族を紹介してくれるというのは、やっぱり嬉しいことよ。彼女として認められたって気がするもん」
妹である火憐と月火に彼女がいることを打ち明けた阿良々木暦は、二人の妹から彼女に会わせろと強要される。戦場ヶ原に事情を話し、阿良々木家へと連れていく道中で、彼女はこの日が来ることを首を長くして待っていたことを打ち明けた。

収録媒体『偽物語』アニメコンプリートガイドブック
時系列「つきひフェニックス」の後の盆休み

過去に戦場ヶ原が阿良々木くんを父親に会わせるということをしていましたが、今回はその阿良々木くんバージョン

この話で戦場ヶ原も言っていますが、恋人を家族に紹介するというのは、恋人本人としては認めてくれたようで嬉しくもあるんでしょうね

実際、阿良々木くんが戦場ヶ原父と対面した時はかなり嬉しかったみたいですしね

さらに言えば、家族側としてもどんな人か見たいというのもありますが、自身の家族になるかもしれない人をしっかりと認めてあげたいというのもあったりするので、そう考えると頑なに二人の妹の彼氏とは会わない阿良々木くんの心の狭さも垣間見えたエピソードでしたね(笑)

かれんアームレッグ

あらすじ

「噓だああああああ!嘘だもおおおおおん!」
大きい方の妹である阿良々木火憐に、彼女がいることを打ち明けた阿良々木暦。それを聞いた火憐はダダを捏ね始め、鍛えた体とその長身で周囲の物を破壊していく。さながら破壊神と化した妹を落ち着かせるために、阿良々木くんは火憐をなだめすかせるが……

収録媒体『偽物語』アニメコンプリートガイドブック
時系列「つきひフェニックス」後の夏休み終盤

すでに〈物語〉シリーズを見ている人はご存じだと思いますが、阿良々木火憐の力の強さというのは半端なく、彼女がただ純粋に暴れた時、周囲の物は無惨に破壊尽くされます

しかも、彼女は長身なのでその破壊力は広範囲にわたり、ダダを捏ねた時の効果音が「どっかーん!」や「ぐっしゃーん」や「ばきばきばきばき!」らしいので、それはもはや災害級のレベルです

実際、ダダを捏ねた火憐を止めに入った阿良々木くんは彼女の裏拳をもろに喰らい、忍に血を吸わせていたので回復力が上がっていましたが、それがなければ死んでいたかもしれないと思わせるほどの破壊力だからシャレになりません

ただ、そんな近寄るのも恐ろしいような火憐が暴れている理由というのが、阿良々木くんに彼女が出来たからというのが火憐らしくもあり、シスコンな兄にしてブラコンの妹ありと言った感じがして面白かったですね

ちなみに、火憐は阿良々木くんから彼女がいることを聞いた時、トレーニングをしていたんですが、その告白のあまりの衝撃に、トレーニングで使っていた鉄アレイを握りつぶしたそうです

恐るべし…阿良々木火憐…

つきひエターナル

あらすじ

「いつまで黙ってるつもりだったの、それ」
小さい方の妹である阿良々木月火に、夏休み明けに彼女を紹介してやるとは言うべきではなかったと後悔する阿良々木暦。あの性格の妹が夏休み明けまで待つわけもなく、部屋に呼び戻された阿良々木暦は、千枚通しを持って仁王立ちした月火の前に正座させられていた。

収録媒体『偽物語』アニメコンプリートガイドブック
時系列「つきひフェニックス」にて彼女がいることを告白した直後

阿良々木月火の怖さというのは〈物語〉シリーズを見てきた人にとってはもはや周知の事実として認識されているかと思います

そんな彼女が仁王立ちし、さらには月火を語る上で印象的な道具の一つである千枚通しを持って立っている図なんて、自分だったら冷や汗しかかかない自信がありますね

ただ、月火の怒りというのはもっともで、兄に彼女が居たものの、それを黙っていたということもそうですが、「つきひフェニックス」にて月火のファーストキスを奪ったというのもまたボルテージを上げた要因となっていました

その怒り姿は想像するだけでも恐怖ではありますが、それでもやっぱり千枚通しのインパクトの強さが半端ないですけどね(汗)

ちなみに、「いつまで」という言葉が印象的なこのエピソードですが、月火の阿良々木くんへの追及は朝まで続いたそうです

しのぶハウス

あらすじ

「んったく、見ちゃおれんわ。仲良しごっこの家族ごっこ。ああいうのが儂は一番嫌いじゃ」
無事に戦場ヶ原ひたぎ、阿良々木火憐、阿良々木月火の会合を終え、ぐったりとしている阿良々木暦だったが、影に潜んでいた忍野忍はどうやらその時の阿良々木くんの態度が気に入らなかった様子。そんな不機嫌な彼女は阿良々木くんに対し、とても面倒な質問を問いかける。

収録媒体『偽物語』アニメコンプリートガイドブック
時系列「つきひフェニックス」後の戦場ヶ原と火憐&月火の会合が終わった後

この会合は後に『ガハラサミット』と呼ばれるものになるんですが、この三人の間を取り持った阿良々木くんの苦労は計り知れないものだったと思いますし、その為にニコニコしながら会話をしていたのも頷ける気はしますが、忍にとってはそれが気に入らなかった

かつて、「お前が明日死ぬのなら、僕の命は明日まででいい」とまで言っていた阿良々木くんが誰にでもいい顔をしているような感じは、忍にとっては不機嫌になるのに十分な要因となったのでしょうね

そして、そこから展開される質問というのはよくある「一人しか助けられない状況になったら誰を助けるか?」みたいなものです

もしも、忍、戦場ヶ原、火憐、月火の四人が崖にぶら下がっていたら誰に手を伸ばすのかという質問でしたが、これの阿良々木くんの返しが本当に上手かった

「手を伸ばす」というのを「助けを求める」という風に捉え、阿良々木くんは羽川に手を伸ばし、助けを求めると答えたんですが、この返答にさしもの忍も納得してしまいました

この作品において、全キャラからの羽川翼の影響力は絶大でしたし、忍だけでなく読者自身も思わず納得してしまう返答はお見事でしたね

つばさボード

あらすじ

「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」
多くの知識を持つ羽川翼はアーサー・C・クラーク著のオデッセイ四部作完結編『3001年終局への旅』の中で定義づけられる『インテリ』とはまさに自分のようだと考える。そんな彼女に、戦場ヶ原ひたぎは”知り過ぎる”ことのマイナス面を語る。

収録媒体読売新聞(2013年7月6日朝刊)
『鬼物語(上)』ブルーレイ&DVD完全生産限定版特典 新聞広告全集(上)
時系列不明

ここで定義づけられた『インテリ』というのは”自分の知能以上の教育を受けてしまった人間”のことを言い、羽川は知識や情報を得ることに終始しているからこそ、自分の名前を呼ばれているようだと感じました

彼女は多くのことを知りながらも、勉学を怠らないという勤勉さを持ち合わせていますが、彼女曰く、「知っていてるだけでは、知らないのと同じ」とも話しています

それに対して戦場ヶ原は、「今の時代は情報に溢れていて、その情報によって雁字搦めになってしまう」というマイナス面を話しています

たしかに、今のご時世は調べればすぐに分かるような便利さはありますが、調べてもいないのに情報が勝手に入ってくるというような、いわゆる”情報の波”に溢れていたりもします

その情報が良いことであれ悪いことであれ、一度知ってしまった情報を知らなかったことには出来ない

”情報の波”に溺れず、うまく泳いでいくには「心にビート板を持つ」というような話がこのエピソードでされていますが、それすらも心許ないと思ってしまうくらい今の時代は様々な情報が飛び交っているようにも感じるので、結局の所は安易に流されない強さこそが大事なのかなとも思っちゃいましたね

まよいキャッスル

あらすじ

「阿良々木さんだったら、もしも自分の余命が一年だって宣告されたら、どうします?」
八九寺真宵はルーシー・モード・モンゴメリ著『青い城』の主人公が一年の余命を宣告され、残りの人生をどう生きるのかを考えていくことから阿良々木暦にその質問をぶつける。それに対して阿良々木くんは、予想外の答えを返すのだった。

収録媒体読売新聞(2013年8月17日朝刊)
『鬼物語(上)』ブルーレイ&DVD完全生産限定版特典 新聞広告全集(上)
時系列不明

「自分の人生が残りわずかだと分かったらどうするか?」というような質問は、話題の一つとして取り上げられることもあったりしますが、実際そうなった時にどうするかというのは結構考える余地のある質問だと常々思います

「やりたいことをやるのか。それとも悔いのないように生きていくのか」などですね

多分その辺は至ってオーソドックスな答えだと思いますが、阿良々木くんの返答は「何もしない」でした

これは別に変わった答えを言いたかった訳ではなく、ちゃんと理由があって、人間というのは生きていくために労働したり、食事をしたり、睡眠をしたり、遊んだり、休んだりと様々なことをしています

そしてそれらの行動は全て”生きるため”にする行動であり、残りの命が分かったのであれば、そういった義務から解放されても良いのではないかというのが阿良々木くんの考えですね

この考えに関しては賛否ありそうではありますが、個人的には分からなくもないと感じました

八九寺自身も自暴自棄のように感じつつも、「何もしない」というのは「何かをする」時に支払う努力や頑張りという代価を支払わなくても良いということでもあるから、これは検討の余地があるかもしれないと言っています

最後だからこそ「やりたいことをやらなきゃいけない」や「悔いのないよう頑張らないといけない」という縛りから解放されるというのもまた、一つの考え方だと思わされましたね

ひたぎコイン

あらすじ

「人を欺くということと、騙すということは、似て非なるものであるということね。決して一緒くたにしてはいけないし、並べて語るべきでもない」
二年間、周囲を欺き続けてきた戦場ヶ原ひたぎに阿良々木暦は嘘のつき方のコツを教わる。自称・嘘の達人である戦場ヶ原が教える嘘をつくコツとは……?

収録媒体化物語[入門編]
時系列不明(ただ、作中での関係性が彼氏彼女ではないので「ひたぎクラブ」と「まよいマイマイ」の間と思われる)

多くの人は嘘を吐くことが嫌だと感じていると思いますし、その中には嘘を吐くのが下手だから嘘は吐かないという人もいるかもしれません

そんな人に教える「嘘の達人」である戦場ヶ原ひたぎの上手に嘘を吐くコツ!

まあ、結論から言ってしまえば、上手に嘘を吐くコツは「バレても気にしないこと」だそうです

結局のところ、噓を吐くというのは自分がいい思いをするためという理由が大半

であれば、自分がいい思いをするために、相手がどういう思いをしようと、相手にどう思われようと気にしなければ、嘘なんていくらでもつける

”欺く”と”騙す”を一緒にしてはいけないというのはその辺りの違いがあったみたいですね

一般的にこの2つの言葉の違いとして少し語るなら、”欺く”は「相手の期待や想像を裏切ること」で”騙す”は「相手に嘘を信じ込ませること」になります

今回の戦場ヶ原はその内の”欺く”を百円玉を使ったコイントスで説明しましたが、それはある種の引っ掛け問題のような手法であり、その内容も欺かれる側の阿良々木くんにもバレバレのもの

つまり、噓を吐くなら相手に自分の言葉を信用させるのではなく、相手の予想や想像を裏切ってでも自分が得をするように心掛ければ良いということですね

こういう結論に至り、それを実行するだけの強さを持ち合わせている辺り、さすが戦場ヶ原だなと思わされたエピソードでした

なでこミラー

あらすじ

「撫子ちゃんだったら、どう?もしも自分と正反対の性格の子が目の前に現れたら、その子のこと、好きになれると思う?」
ロバート・ルイス・スティーブンソン著『ジキル博士とハイド氏』を読んだ千石撫子は、正反対の自分と出会ったらどう思うかと友達の阿良々木月火に問いかける。その問いに対して、明確に自分なりの解釈を加えて返答してきた月火は、そのまま同じ質問を千石にもぶつける。

収録媒体読売新聞(2013年9月21日朝刊)
『鬼物語(下)』ブルーレイ&DVD完全生産限定版特典 新聞広告全集(下)
時系列「かれんビー」以降(阿良々木くんが千石の部屋に遊びに行って以降)

いわゆる”おと撫子”時代であり、”媚び撫子”時代の千石撫子のお話ですね

それもあって、この当時の千石撫子は被虐的で自虐的なこともあり、月火からの質問に対して最終的には「会ってみたい」という結論に至っています

ただ、今の千石とは逆の撫子とはいわゆる”逆撫子”でもあるので「会ったら怒られる」とは思いつつ、それならそれで「撫子が怒られればいいだけの話」という結論に至る辺りがまた、千石撫子に対して周囲がイラっとする要因でもあるんですよね

ちなみ、ここで登場する”逆撫子”はあくまで「今とは逆の自分」という意味合いで使われており、『囮物語』や『撫物語』で登場した”キレた撫子”ではありませんが、このワード自体はこの「なでこミラー」が初出しになりますね

しのぶサイエンス

あらすじ

「科学で作った便利アイテムのはずなのに、どうして使いこなせないんだろうって思うよ」
アイザック・アシモフ著『わたしはロボット』の中に収録されている短編の中で「迷子の小さなロボット」が好きな忍野忍。己よりも劣った存在に従わねばならないものの、人間を出し抜こうとする姿に心躍っていたが、それを聞いた斧乃木余接はこの関係性を人間社会に当て嵌めて話しだした。

収録媒体読売新聞(2013年10月26日朝刊)
『鬼物語(上)』ブルーレイ&DVD完全生産限定版特典 新聞広告全集(上)
時系列「まよいキョンシー」以降

機械とは人間が使うために生み出したものであり、さらに言えば自分たちの生活を便利にするために生み出していくものになります

そして、生活を便利にするという点においては「自分が出来ないことをしてもらう」というのも含まれており、それが出来るということは”使う側”の人間よりも”使われる側”の機械の方が優秀という見方も出来ます

まあその見方は局所的な見方でもありますが、そう考えた時、”使う側”よりも”使われる側”のほうが優秀であるというのは人間社会においても全然あり得ること

余接自身はそうなるのは当たり前だと話した後、「支配する側の視点に立てば、優れてない存在を支配する意味はないんだから」と結論付けていますが、これに関しては非常に納得

先程の”生活を便利にする”という点において言うのであれば、もしも自分で出来るし、それに不自由さや不便性を感じていないのであれば、わざわざ機械に頼る必要性もないですもんね

西尾維新先生の作品では、所々でこういう「一理ある」と思わされる内容が描かれたりするんですが、この『しのぶサイエンス』に関しては、まさにそう思わされた短々編でしたね

ひたぎフィギュア

あらすじ

「段々妖怪ハウスみたいになってきてない?阿良々木くんの家」
斧乃木余接との奇妙な同居生活が始まって直後頃、阿良々木暦の家にやってきた戦場ヶ原ひたぎは、彼氏の部屋に巨大な人形が置いてあることに絶句する。事情を話した後、その人形の可愛さと阿良々木くんの勉強の妨げにならないように余接を持ち帰ろうとするが、当然阿良々木くんに反対されてしまう。そこで戦場ヶ原はある提案を阿良々木くんに持ち掛けるのだった。

収録媒体『化物語』PremiumアイテムBOX
時系列「よつぎドール」の直後

確かに彼女の部屋ならまだしも、彼氏の部屋に等身大の人形少女が置いてあったら、多くの人は絶句するかもしれませんね(笑)

そしてそこから、その人形を持ち帰ろうとする戦場ヶ原も面白かったですが、このエピソードのさらに面白いところがグッドスマイルカンパニーから発売された、ねんどろいどの「戦場ヶ原ひたぎ」フィギュアと見事にタイアップしているところ

具体的に言えば、戦場ヶ原がした”ある提案”というのは、自分のねんどろいどを机の上に置いておけば大丈夫ということです

これ「グッドスマイルカンパニー製作」も「ねんどろいど『戦場ヶ原ひたぎ』」もそのまま登場してくるので、思わず驚いてしまいましたw

ただ、もともとこの短々編が収録されていた『化物語』PremiumアイテムBOXに、ねんどろいど『戦場ヶ原ひたぎ』が特典として付いてきていたので問題ないと言えば問題ないんですが、こちらの世界の物が実際に登場すると「これ大丈夫なの?(笑)」ってなんかドキッとしてしまいますよね

こういったメタネタ発言に関しては〈物語〉シリーズではよくあることではあるので、こういうタイアップに関しても、違和感自体は無く読めるところはこの作品の良いところだと感じたエピソードでした

ひたぎサラマンダー

あらすじ

「『華氏451度』なら読んだけれど――そんな話だったかしら?」
レイ・ブラッドベリ著『華氏451度』を読んで、貝木泥舟は主人公が少女と出会って変わっていく様子が良質なボーイミーツガールだという見方も出来ると話すが、それを聞いた戦場ヶ原ひたぎは過去に四回読んだ時の感想を思い出す。そして、戦場ヶ原は貝木に一つの質問をぶつけるのだった。

収録媒体読売新聞(2013年11月23日朝刊)
『鬼物語(下)』ブルーレイ&DVD完全生産限定版特典 新聞広告全集(下)
時系列不明(戦場ヶ原と貝木が面と向かって話しているので、「ひたぎエンド」中の一幕だと思われる)

ひねくれ者同士の会話というだけあって掛け合いは非常に面白かったこちらのエピソード

掛け合いの感じはそれこそ「ひたぎエンド」での空港でのやり取りを思い出してもらうのが一番良いかもしれません(笑)

そして、『華氏451度』を過去に4回読んだ時の戦場ヶ原の感想が面白過ぎるw

特に3回目に読んだ時の中学生時代のエピソードは「読書感想文でなんてことしてんねんw」と驚きと笑いをしっかりと頂きましたね

ひたぎスローイング

あらすじ

「あなたが神原さんでして?おみ足が速いとの噂をうかがいましたわよ――お邪魔にならないようでしたら、見学させていただいてもよろしくて?」
神原駿河が戦場ヶ原ひたぎと最初に出会った時の印象ははっきり言って悪かった。貴婦人かと思わせるような口調、陸上部への勧誘を断っても何度も訪ねに来るしつこさ。そんな中、神原は戦場ヶ原から一つの勝負を持ちかけられる。これは戦場ヶ原ひたぎと神原駿河の“ヴァルハラコンビ”の始点の物語。

収録媒体アニメ<物語>シリーズヒロイン本 其ノ伍 戦場ヶ原ひたぎ
時系列神原駿河の中学一年生時代、戦場ヶ原に初めて出会った頃

戦場ヶ原の登場セリフに対して神原は「貴婦人か」とツッコんでいますが、まさにその通りで、アニメで登場する戦場ヶ原からは全く想像もできない喋り方に思わず「いや誰だよ」と私なんかはツッコミたくなりましたね

ただ、これ自体は作り物めいたというか戦場ヶ原が作っているキャラではあるので致し方ない部分はありますが、この戦場ヶ原登場後の神原が彼女に対して言った言葉も実は中々酷く、「出直して来な」だったんですよね(笑)

ここもまたアニメで見せる神原と戦場ヶ原の関係性からは想像しにくい部分だったりもしますが、それくらい二人の最初の出会いは酷かったんですよね

そしてそこから戦場ヶ原の思いやりに触れた神原は次第にどころか急激に距離を縮めて、戦場ヶ原の犬となったというエピソードです

この過去に関してはアニメどころか原作でもここまで深く触れられていなかったと思うので、見ているのがアニメの『化物語』のみだったとしても、〈物語〉シリーズに触れたことがある人にはすんなりと理解できるエピソードだと思います

するがパレス

あらすじ

「知ってる?作家が言われて一番悩んじゃう言葉は、『好きなように作ってください』だそうよ」
A・Aミルン著『赤い館の秘密』を読んだ神原駿河だったが、その理由はこの著者が『クマのプーさん』の作者で興味が湧いたからだった。それを聞いた戦場ヶ原ひたぎと作品について触れたおり、神原が感じた原作者の”望まれるとやりたくなくなる性格”に戦場ヶ原は共感の意を示す。

収録媒体『鬼物語(上)』ブルーレイ&DVD完全生産限定版特典 新聞広告全集(上)
時系列不明

この新聞広告に掲載されていた短々編では度々、個人による「本の読み方」について触れられることが多い印象がありますが、個人的にはこのエピソードが一番その読み方について共感出来た気がします

読書家としての読書の基準というのはよく分かりませんが、今回神原が『赤い館の秘密』を読んだ理由が『クマのプーさん』の原作者だから読んだというのは別段不思議に感じることはなく、むしろ「有名な(好きな)作家さんがこんなジャンルの作品書いてたの?読む読む!」なんてのは本を読む理由としては十分な気もします

仮にそんな動機が不純だったとしても、それこそこのエピソードでも触れられていますが、食事の仕方ならまだしも、本の読み方まで横合いから言われたくはないですよね

そして、これもこのエピソードで触れられている部分になりますが、結局のところは作家も読者も好きなように書いて好きなように読むのが一番幸せだと思いますし、互いに満足の得られる結果になるのなら、それこそ言うことはない気もしますね

よつぎフューチャー

あらすじ

「時間とは何かということを考えると、それは結局、ゆっくりと死んでいくということだからね。だからみんな、時間を惜しむ。僕のように既に死んでいるものからしてみると、馬鹿馬鹿しいほどに――」
ミヒャエル・エンデ著『モモ』を読んだ斧乃木余接は”時間”について阿良々木暦と語り合うが、互いに意見は違うようで…

収録媒体『鬼物語(下)』ブルーレイ&DVD完全生産限定版特典 新聞広告全集(下)
時系列不明

”時間”についての捉え方というのは人それぞれだとは思いますが、この「時間=ゆっくりと死んでいく」という考え方自体はよく分かる意見のような気がします

死というのは生きていれば必ず付きまとうものではありますし、そのタイムリミットが絶対に訪れることを知っているからこそ、それまでの間を尊び惜しむ

それこそが”生きている”ことでもあるとも感じている中で、死体人形である斧乃木余接の考え方もまた面白かったです

すでに死んでいるからこそタイムリミットによる制限はなく、その時間を惜しむこと自体が馬鹿馬鹿しいと感じてしまう感性はやはり”生きている”とは言えないんでしょうね

ただ、だからといって忍などのような不死というわけではないので、死についても考える事が出来る辺りは死体人形の斧乃木余接らしい視点の解釈だなとも感じれたエピソードでした

おうぎトラベル

あらすじ

「旅をするっていうのは、物語を探すことでもあり、物語を作ることなのかもしれないね」
ジュール・ヴェルヌ著『八十日間世界一周』を読んだ忍野扇は、高校卒業後は世界一周を計画している羽川翼にこの本の感想を聞く。すると彼女は独特の感想を持っており、扇はその感想に興味が湧いてその話を掘り下げようと会話を続ける。

収録媒体『鬼物語(下)』ブルーレイ&DVD完全生産限定版特典 新聞広告全集(下)
時系列不明

個人的にですが、この〈物語〉シリーズにおいて犬猿の仲代表とも呼べるこの二人が会話をするというのはいつもちょっとしたスリルと恐怖を感じてしまう(笑)

この二人が本編以外でもやり取りを繰り広げるキャラクターコメンタリーもあるんですが、その時の不仲っぷりは凄かったですしね

そういった感想を持っていた中で、この「おうぎトラベル」における二人のやり取りは比較的に落ち着いていた雰囲気がありました

といっても扇は相変わらず喧嘩を吹っかけている感もありましたし、羽川の警戒っぷりも凄かったですが、それでも会話として成立し、会話の内容としても「なるほど」とも思えるような考えさせられるものになっていたのはお見事でした

特に、物語というものは書に表せるようなものだけを言うのではなく、経験などといったものからも生み出すことが出来ると言っているような部分は共感性もあって良かったですね

人によっては「些細な日常からも物語を生み出すことは出来る」みたいなのを聞いたりもしますが、劇的な事だったり悲劇的な事は中々無くとも、刺激的なこと自体は探せばいくらでもあるのかもしれませんね

するがニート

あらすじ

「広い海のように包んでくれた母の愛が、狭い井戸の中だったと知る――まことにもって、それが成長するということなんだとすれば、どこか寂しくもあるねえ」
神原駿河の夢の中に登場してきた神原遠江はメアリー・ヘイスティングス・ブラッドリー著『ジャングルの国のアリス』について語り出す。神原自身はその本を知らなかったものの、その作品に登場するアリスが意外な人物だったことに驚きを露わにした。

収録媒体読売新聞(2014年8月16日朝刊)
時系列不明

『○○の国のアリス』と聞くと『不思議の国のアリス』くらいしか知らない私ですが、この『ジャングルの国のアリス』はそれとは全く関係のない実話に基づいた作品みたいです

六歳の少女・アリスの視点で描かれていくこの作品ですが、神原遠江が語るこのアリスの驚くべき正体というのが、実はアリスは『たったひとつの冴えたやりかた』を描かれたジェイムズ・ティプトリー・ジュニアだということ

これに関しては神原自身かなり驚きを感じていたようですが、正直な話をしてしまうと『たったひとつの冴えたやりかた』は名前は聞いたことがあっても、読んだことはないので個人的にはそこまで驚かなかったんですよね(苦笑)

ただ、親子揃って有名な作家だったというのもそうですが、その内の一人の子供時代の実話が描かれているというのは中々興味深い

誰にでも子供時代があるというのは当たり前な話ではあるんですが、それをテレビやスマホなどが普及されておらず、情報として多くの人に知られる機会が少なかったであろうこの時代で、物語という形で残っているというのはかなり珍しい例なように思います

このエピソードでも、偉大な作家に限らず、自分自身もそういった子供時代があったという大前提は忘れがちというのが語られていますが、そういった意味だと良くも悪くも過去が思い出せるものを残しておくのは、自分を失わない為にも、そして自身がどう成長したかを確かめる為にも残しておいた方が良いのかもしれませんね

ろうかゴッド

あらすじ

「沼神さま。お前には悪魔をプレゼントしよう」
貝木泥舟は自身の経済活動の邪魔をしている沼神さまに文句を言ってやろうと、沼神さまこと沼地蝋花の元を訪れる。沼地自身、すでに貝木のことを知っているようだったが、そんな彼女は貝木に対して『人生相談』をしないかと持ち掛けるのだった。

収録媒体アニメ<物語>シリーズヒロイン本 其ノ陸 神原駿河
時系列不明

悪魔と死神、泥と沼という組み合わせとしてはまさに泥沼に嵌まる悪魔的コラボレーションともいえるようなコンビですが、この二人の出会いがあったからこそ『花物語』へと繋がっていくというのを思うと、混ぜるな危険感もあって少しヒヤリとしました

しかも、この二人での会話も明らかに互いを信用しておらず、嘘や騙りばかりの内容ともなっているので、口調は穏やかにも思えるものの、会話自体は冷めきっているような感じがなおのことそう感じさせた気もしますね

ちなみに、貝木はこの時に初めて沼地と出会った形になりましたが、その彼女の正体に関してはしっかりと気付いていたようです

まあ、だからといって何かしてやろうということは一切しない辺りは貝木らしいと言えばらしいという気もします

しのぶフィギュア

あらすじ

「し、忍が二人に増えた……?」
阿良々木暦の部屋で黙って寡黙にポーズを取っていた二人の忍を見つけ、驚愕する阿良々木くんでしたが、これは斧乃木余接と忍野忍が仕掛けたドッキリらしく、片方は本物、片方はグッドスマイルカンパニー製作のねんどろいどらしい。それを確かめる為に阿良々木暦が二人の忍に触ってみると……

収録媒体「偽物語」PremiumアイテムBOX
時系列不明

「どちらか見分けのつかないほどに完成度が高いねんどろいどなんて超欲しい!」なんて思いつつも、こちらの短々編も見事にタイアップをかましていましたね(笑)

この短々編に関してはオチも含めて結構好きな話ではあるんですが、これの見所は阿良々木くんのセリフがいちいち面白いところw

斧乃木余接のかつての口癖であった「僕はキメ顔でそう言った」ならぬ、「僕はグッドスマイルでそう言った」って阿良々木くんが言う辺りはタイアップならではの決めゼリフのような気がしましたし、『特別』の「別」の部分に”ロリ”が入ってることに気付いて繰り広げる会話がこれまた面白かったです

この”ロリ”に関してはこれで言われるまで本当に気付かなかった

作中でも阿良々木くんが言っていますが、この気付きによって『特別』が「特ロリ」になったり、『別格』が「ロリ格」に脳内変換されてしまって、もの凄く今後使いにくくなりましたね(笑)

この〈物語〉シリーズからはこういう言葉遊び的な部分でかなり多くの気付きを貰っていたので、この「別」に関しても中々に新鮮でした

かれんブラッシング

あらすじ

「い、嫌だ!あたしは絶対に行かないぞ!まだ虫歯だと決まったわけじゃないのに!」
歯磨きの最中の唐突な口腔内の痛みに悲鳴を上げた阿良々木火憐。それを聞きつけた阿良々木暦は歯医者に行きたがらない妹の為に、自らが歯科医として彼女の痛みの原因を取り除こうとフレンチクルーラー三個で雇った金髪の幼い助手と共に検査を始める。

収録媒体アニメ<物語>シリーズヒロイン本 其ノ漆 ファイヤーシスターズ
時系列『続・終物語』以降

『偽物語』で繰り広げられたあの歯ブラシ事件が再び!

本当にこの兄妹は仲が良過ぎる気がしますが、ただ今回はあの時ほどいやらしい感じにはなっておらず、どちらかというとかなり本格的

歯医者でよく見るような器具をしっかりと用意しつつ、阿良々木くんもあの歯ブラシの時以降は口腔内についても勉強したらしいので、それぞれの器具の用途自体は分かっているみたいですが、所詮は素人なので火憐はとてつもなく酷い目に合いますw

ただ、火憐自身はなぜか兄の言うことは全て正しいと思い込む癖があるので、阿良々木くんの誤魔化しをすんなり受け入れてしまう辺りは面白かったですね

そして、このエピソードの極めつけは阿良々木暦の変態性ですかね

これまでも散々描写的にも表現的にもデッドラインギリギリをひた走る本作品の主人公でしたが、今回は確実に一線超えたような気がします(笑)

このエピソードのオチで忍が語っていますが、この兄と妹は深刻な何かに蝕まれていると思わされたエピソードですね

つきひブラッシング

あらすじ

「今日のところは、お兄ちゃんがスタイリストとなって髪を切るということで勘弁してくれたまえ、月火くん」
自分の髪を踏みつけてしまうほどに伸びてしまった髪の毛を切るために、阿良々木月火は阿良々木暦に以前貸した三万円の返済を求める。しかし、その持ち合わせがなかった阿良々木くんは、自らが髪を切ることを提案し、ゴールデンチョコレート三個で雇った金髪の助手と共に、月火の髪を切ることにする。

収録媒体アニメ<物語>シリーズヒロイン本 其ノ漆 ファイヤーシスターズ
時系列『続・終物語』以降

かつて千石撫子の髪の毛をバッサリと切った阿良々木月火が、今度は兄にバッサリ切られる立場に回るというこの因果(笑)

このエピソードに関しては先程の「かれんブラッシング」の後の話になるので、「あれ?この流れ知ってるぞ」みたいな展開が結構あります

そういった流れの中でも火憐と月火では兄に対する信頼度の違いもあったりするので、同じような展開になると見せかけつつ、明確に違う部分を見せてくるのは流石だなと感じました

そして今回のエピソードではスタイリストになった阿良々木くんですが、これに関しては前回の歯科医と違って知識がほぼ無いw

素人以上に素人感も感じさせる阿良々木くんですが、それこそこの『短物語』に収録されている「つばさソング」にて羽川の髪を切っているので経験ゼロというわけではないものの、それでも不安しかないですよね(笑)

月火自身もその不安は感じていて、仮に失敗しても大丈夫なくらいの長さの髪を切ってもらうようにお願いはしていますが、その後に惨事が巻き起こるのはもはやお約束と言った感じのエピソードとなっていましたね

なお、少し「つばさソング」のお話をしましたが、そこでも触れた『花物語』で阿良々木くんが神原の髪を切る時に「女子の髪を切るのは三人目だぜ」と言ったセリフはこことも繋がってきます

一人目が羽川翼で、二人目が阿良々木火憐、そして三人目が神原駿河ということです

一応プラスの解説をしておくと、たまに「戦場ヶ原の髪を切ったのでは?」というのを見掛けるんですが、戦場ヶ原は阿良々木くんではなく、しっかりとヘアサロンで切ってもらったという描写が原作の『偽物語・下』にあります

その行為はある意味で、過去とのリセットであり、『偽物語・上』にて貝木泥舟と出会ったことが大きな要因ともなっていますが、その辺りはアニメでも描かれていないので、知りたい方は原作小説を読むことを勧めますね

著:西尾維新, イラスト:VOFAN

こよみヒストリー

あらすじ

”僕達は季節のように繰り返す。展開と展望の順路を歩む。この先も、めくるめく暦を、巡るべく。”

収録媒体MADOGATARI展図録
時系列不明

こちらは2016年に開催された『MADOGATARI展』にて販売された「MADOGATARI展図録」に収録された短々編になります

なので内容としてはかなり短いものとなり、今回の『短物語』の中では一番短い短々編ですね(全2ページ)

歴史を振り返ろうとする阿良々木くんに対してそれぞれのヒロイン達が声を掛けていく内容になっているんですが、ほんのわずかな文字数でも「これを言ってるのはこのキャラだな」と分かる書き分けに凄みを感じました

よつぎストレス

あらすじ

「お前、ストレス、にゃさそうだよにゃ」
レインコート姿の怪異と戦闘を繰り広げていた忍とブラック羽川の前に現れた斧乃木余接は難なくその怪異を撃破する。その後、忍に主人の居場所を教え、忍はその場に向かったものの、結果的に余接とブラック羽川だけがその場に残る。気まずさを感じながらも、ブラック羽川は余接に一つの質問をぶつける。

収録媒体アニメ<物語>シリーズヒロイン本 其ノ捌 斧乃木余接
時系列8月23日
『猫物語(白)』でブラック羽川と忍が出会った後
『終物語(中)』「しのぶメイル」にて忍と阿良々木くんが公園で出会う前

アニメ本編では描かれなかった裏話とも言えるエピソードですね

この部分に関してはある意味で”空白”とも呼べるワンシーンではないかとも思います

そんな中で、ブラック羽川が質問した「ストレス」という部分について語る余接の考えは中々に考えさせられるものではありました

「ストレス」というものがあるからこそ、人間はそれを時に道具として扱い、逆境や困難と言うものを楽しみ遊ぶ術を見出す場合もあるというのは納得してしまう部分が感じられました

まあ、その辺りは個人差と言うのもあるんでしょうが、それでも少なからず「ストレス」というものが人間が成長していく上で、必要なものであるのは間違いないとも思います

そういった中で感情を持たない余接は、同じく「ストレス」を道具として見ていながらも、それはあくまで人間らしくみせるための商売道具であり、人間にとっての遊び道具とはまた違うという言い方が死体人形らしい観点だなと感じましたね

人として

あらすじ

「神としては負けましたがね。人としては負けていません。あなたにも。そしてお前にも。あるいはきみにも。ついでに貴様にも」
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの従僕が三つ編みの携帯食を取りに行っている頃、彼女の前にギロチンカッターが現れる。一度は敗れたものの、プロとして目の前の吸血鬼を退治するために、彼は自らの命すらも手段の一つとして、キスショットとの対決に挑むのだった。

収録媒体映画『傷物語』ビジュアルブック PART2
時系列『傷物語』《Ⅲ冷血篇》で阿良々木くんがコンビニに行っている間

先に言っておくと、この巻に収録されている『傷物語』関連の短々編のほとんどは本編では描かれていなかった”空白”の部分になります

その”空白”のシーン第1弾がキスショットとギロチンカッターの再会シーンですね

ここに関しては原作でもそうですし、劇場アニメの方でもそうですが、阿良々木くんがコンビニから戻ってきたらすでにギロチンカッターは食べられていたので、二人がどんな会話をしていたのかまでは不明でした

その不明だったワンシーンがここでは描かれているんですが、一言で言うならギロチンカッターは最後まで「プロとして」、そして「人として」キスショットと対面していたと感じさせるやり取りでしたね

ギロチンカッター自身、この時点で自分をも殺せない阿良々木くんがキスショットを殺せるとは考えておらず、むしろ自分が死ぬことで阿良々木くんがキスショットを殺す動機が作れると考えていました

その考えに意味が分からないキスショットでしたが、それこそが怪異と人との差であり、そしてその人としての考えを持ち、自身の矜持を最後まで貫き通したギロチンカッターはまさしく”人として”キスショットに挑んだんだと分かる内容だったと思います

この後に登場する『傷物語』関連の短々編は、そういったサブストーリーのような内容が多いため、本編に深みが増すものが多い気がしますね

どうかして

あらすじ

「これから阿良々木くんが、どうなるかは分かりませんけれど。どうにかします。私が」
忍野メメが提案したバッドエンドを選択した阿良々木暦。キスショットの首に噛みつく彼の姿を見ていた羽川翼は、忍野メメとこれからの阿良々木くんについての話をする。

収録媒体映画『傷物語』ビジュアルブック PART2
時系列『傷物語』《Ⅲ冷血篇》の阿良々木くんとキスショットの戦い後

『傷物語』の”空白”のシーン第2弾です

この時に阿良々木くんが選んだ選択が正しかったかどうかというのはこの時点では定かではありませんでしたが、少なくとも”不幸になる選択”だったのは間違いない事実です

人間に戻れず、だからといって吸血鬼にもなれず、誰の願いも望みも叶わない結末

そういった状況、そう思わせる空気感の中でキスショットの血を吸う阿良々木くんの姿を見て「ああ、よかった」と心から安堵の溜息を吐ける羽川はやはり異常ではあるのでしょうね

誰も死ななかったということにスポットを当てるのであれば確かに共感できる部分もあるかもしれませんが、その助けた相手は人類の敵になるかもしれない吸血鬼です

仮に自分がその場にいたとして、その選択をしてしまった阿良々木くんに対して「ああ、よかった」と心から言える自信は全くありませんね

だからといって責め立てる気もありませんが、それでも羽川のようにはなれない自信だけはあります

実際、羽川と会話をしていた忍野も「どうかしてるよ」と言っているくらいですし、やはり彼女は次元が違うと思わされ、それでいて恋する一人の少女だったのだなとも感じさせるエピソードとなっていました

そして

あらすじ

「お前を退治することは諦めた。諦めていないのはスカウトだ。プロの専門家になる気はないか?」
高校を卒業していた阿良々木暦の前に、かつて死闘を繰り広げたヴァンパイアハンターのドラマツルギーが現れる。なぜ彼が突然やって来たのか不思議に思ったので尋ねると、どうやら彼は再び阿良々木くんをスカウトにやって来たようで……

収録媒体映画『傷物語』ビジュアルブック PART2
時系列春休みから一年後(正確にはドラマツルギーと戦った3月31日から360日後)

こちらは『傷物語』の”空白”というよりは後日談であり、もう一つのオチとも言えるエピソードになっています

ドラマツルギーが阿良々木くんを仲間に誘っていたのは『傷物語』でも描かれており、その時にきっぱりと断ってはいましたが、それでもまだ彼は諦めていなかったようです

まあ、結局今回も阿良々木くんは当然のように断るんですが、このエピソードにおいて面白いのがドラマツルギーと羽川翼との関係性が深くなっているというところ

原作を読んでいないと分からない部分ではあるんですが、羽川は『業物語』に収録されている「つばさスリーピング」という短編にてドラマツルギーと再会しています

著:西尾維新, イラスト:VOFAN

その際に、ドラマツルギーの仕事を少し手伝ったりもしたんですが、その縁もあってその後も一緒に仕事をする機会もあったらしく、ドラマツルギーにとって羽川翼の存在がかなり大きくなっているのが中々に興味深かったですね

しかも影響を受け過ぎているせいか、時々「にゃん」というブラック羽川の喋り方までしていく始末(笑)

あのゴツイ見た目で「にゃん」とか言い始めたら、もはやギャグにしかなりませんねw

どうして

あらすじ

「追われているのかい?ハートアンダーブレード。だったら、僕はいい隠れ場所を知っているよ」
怪異譚の蒐集家でありバランサーでもある忍野メメ。彼はキスショットの心臓を抜き取り、彼女の生と死のバランスを取ったはずだった。しかし、忍野が見た光景は予想外のもので、幼女となったキスショットが高校生の男子を引きずって歩いている姿だった。

収録媒体西尾維新祭2016 SPECIALFANBOOK
映画「傷物語」COMPLETE GUIDE BOOK
時系列春休み初日の出来事

『傷物語』の”空白”のシーン第3弾です

このエピソードは阿良々木くんがキスショットを助けた後、気絶している間の出来事ですね

『傷物語』でも忍野がこの学習塾跡の場所をキスショットに教えたというクダリがありましたが、その直前の出来事が描かれているエピソードとなります

基本的には忍野の語りがメインとなっているので、やり取りはほとんどありませんが、なぜ忍野はキスショットを生き続けさせ、死に続けさせる手助けをしたのかが分かる内容は、なるほど忍野らしいとも思える内容でした

それでもなにぶん、あの何を考えているかよく分からない軽い喋り方をしている忍野の語りなので、嘘くささも感じさせる点も所々ありましたが、しっかりと「作り話じゃない。僕は真実の話をしている」と言っている以上、本当のことではあるんでしょうね

そういった意味でも、中々に興味深いと感じさせるエピソードだと思いました

心して

あらすじ

「心ここにあらずな獲物に対し、僕達は、しゃきっと心を用意してかかりましょう」
左脚を肩に担いだエピソード、右脚をぶら下げるように持つドラマツルギー、右腕と左腕を握手するように持つギロチンカッター。彼らはキスショットから四肢を奪っていながらも、戦闘中に感じた違和感が拭えないようで……

収録媒体映画『傷物語』COMPLETE GUIDE BOOK
時系列三人のヴァンパイアハンターがキスショットを取り逃がした直後

『傷物語』の”空白”のシーン第4弾です

キスショットの四肢を奪った直後の話ということで、これこそ幕間的な意味合いが強いイメージがあるエピソードとなっていますが、このエピソードの興味深いところは、すでにキスショットの心臓がなくなっているのではないかという可能性を考えていたこと

といっても実際は、戦闘中も心ここにあらずな感じだったキスショットに対して、”心の空白”と戦っているような感覚に陥ったギロチンカッターがそれを言った時に、エピソードが「心臓でも落としたのか?」という疑問に至り、それを否定しなかったという展開ではあります

なので本当に心臓を無くしているのかどうかは議論に上がってはいませんが、それでも何かを感じ取る辺りは流石プロだなと思わされましたね

また、ここで繰り広げられる会話もそれぞれの個性が出ていて中々面白かったです

楽観的なエピソード、悲観的なドラマツルギー、客観的なギロチンカッター

「〇観的」という文字面もさることながら、会話の内容でもしっかりと個性を出す辺りは西尾維新先生らしいと思わされる描き方でしたね

まよいウェルカム

あらすじ

「どうやら、また死んでしまったらしい」
遥か上空から滑空してきたスーサイドマスターは、着地点に居たこの町の神を避けようとして着地に失敗し、死んでしまう。しかし、死など日常茶飯事なスーサイドマスターは復活を遂げ、目の前の神に来日の目的であるキスショットの居場所を聞く。だが、そのツインテールの神様は勿体ぶるようにして中々居場所を教えず、変わりに”ある約束”を提示してきたのだった。

収録媒体Anime Japan2017にて開催された謎解きイベント「西尾維新の挑戦状」クリア特典
時系列『忍物語』でスーサイドマスターが来日した直後

この部分に関しては、アニメの〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズンの『忍物語』でも少し語られていた部分ですね

その登場話数は「しのぶマスタード 其ノ參」になり、八九寺がスーサイドマスターと初めて会った時のことを話していましたが、その時の実際のやり取りが描かれているのがこの「まよいウェルカム」になります

またこのエピソードの語りはスーサイドマスターになるので、彼女が八九寺を見てどう思ったかが描かれており、その辺りが一つの裏話と言った位置づけになっているような印象がありました

実際、ここでのやり取りに関しては時系列としては本編に関係があったとしても、会話自体が直接関係しているというわけではありませんしね

それでも、八九寺が先んじて予防線を張っておいたからこそ、幼女化した忍を見てもスーサイドマスターは特に動揺もせずに再会できたのかなとも感じさせてくれたエピソードでした

よつぎスノードーム

あらすじ

「歓迎会?こいつはお笑いだ」
斧乃木余接が阿良々木家に居候することになったので、その歓迎会として、かまくらを作ってもてなす阿良々木暦。しかし、死体人形である彼女には感情も無く、機嫌も無いからご機嫌取りも不要と言うが、阿良々木くんには彼女を放っておけない理由があった。

収録媒体今巻書き下ろし
時系列『憑物語』にて余接が居候を始めた後のとある日曜日

ある意味で『憑物語』のもう一つの後日談とも言えるようなエピソード

この短々編に限らず、所々で死体人形だからこその「斧乃木余接の感情の無さ」についてピックアップされることはありますが、そういった部分については当然阿良々木くん自身も分かってはいることです

ただ、この時は手折正弦を自ら手にかけた後ということもあり、阿良々木くんは例え余接に”思い”が無かったとしても、自身の彼女である戦場ヶ原がその”思い”を失ったことがあったからこそ放っておけず、今回の歓迎会を開いたというわけです

それこそ”思い”違いも甚だしいと感じるかもしれませんが、それでも阿良々木くんの優しさが垣間見えるエピソードではありますし、なにより余接に一つの感情を覚えさせるという阿良々木くんの成果も見れるエピソードとなっていましたね

まあ、その感情が「危機感」というのもまた変態の阿良々木くんらしい部分でもありましたけどね(笑)

おうぎロードムービー

あらすじ

「波乱万丈な人生をお送りな我らが阿良々木先輩も、たまには他人の物語を眺めてみてはいかがでしょう?」
大学準備期間中の春休みとも言えないある日、阿良々木暦は忍野扇から映画に誘われる。その誘いに乗った阿良々木くんは、彼女に連れられて映画館に行くものの、指定されていた座席はなんと”カップルシート”だった。

収録媒体今巻書き下ろし
時系列阿良々木くん大学入学準備期間中のある日曜日

これまでも様々な思惑を企ててきた忍野扇ですが、今回の企てはこれまた茶目っ気に溢れていると言いますか、可愛らしい企てのように感じます

それこそ高校を卒業し、これから大学生になる阿良々木くんに対しての最期のわがままみたいな雰囲気すらも感じさせる気がしましたね

実際、内容自体はそこまでシリアスなものではなく、寝転がるような形でカップルシートに座りつつ、忍野扇は阿良々木くんに腕枕をしてもらうんですが、この姿はなんだか甘えているようにも見えました

また、”映画”が題材となっているだけあって、映画の見方に対する多様性が語られる部分があり、車の中から映画を観られるやつに関してはどこか懐かしさを感じてしまいましたが、あれって今もやってる所あるんですかね?(笑)

そんな多様性が多くみられる中で、正しさも間違いもルールも場所や国によって様々なものになっていきます

今回の”映画”という題材から、これから大学という新しい世界に飛び出していく阿良々木くんが、自らの世界を少し広げていく話に繋げていく流れはお見事だと感じたエピソードでしたね

そだちペナルティ

あらすじ

「こうしてお前と遊んでいるのも努力の成果よ。お前と向き合うことから逃げなかった、高校生の頃の私の努力の」
蛇蝎の如く阿良々木暦という人間を嫌っている老倉育から、いきなり遊びの誘いを受けた阿良々木くん。彼女が阿良々木くんを誘った理由はどうやら後期試験の結果が悪ければ阿良々木くんとデートをするという罰を課していたらしく、その結果らしい。デートすることになった中で、二人が向かった先は脱出系のイベントだった。

収録媒体今巻書き下ろし
時系列大学に入学し、後期試験を終えたばかりの日曜日

アニメだけを見ていた人は想像できるでしょうか?

あの老倉育が、あの阿良々木くんと一緒にデートをしているという図を(笑)

これに関してはかなり驚くべき光景ではあると思いますが、実は同じ大学に入ったということもあり、この二人は意外と仲良くやっていたりするんですよね

といっても、阿良々木くんが一方的に老倉のことを好いているだけという感じもするんですがねw

実際、老倉の阿良々木くんに対する接し方は以前ほどの暴力性はなくなったものの、それでも普通に「死ね」ということの方が多いですし、対応自体も冷たいことが多いです

そんな中でも自分で課した罰ゲームとは言え、二人で遊びに行けるくらいの仲になったというのは、中々微笑ましい光景のようにも思えてきますね

ちなみに、今回一緒に遊ぶにあたって、阿良々木くんは老倉の友達である戦場ヶ原を誘えばよかったんじゃないかと言いましたが、その老倉は「私以外に友達がいる友達を、友達と呼べるのかしら?」と激重のセリフを返しています

この辺りは老倉らしさ全開で面白かったですね

しのぶトゥナイト

あらすじ

「思えばお前様とも、随分と長い付き合いになったもんじゃ」
大学を卒業し、警察官になった阿良々木暦。アメリカへの出張も明日へと迫った夜、一心同体である忍も一緒に連れ回す形になってしまったことに対して、申し訳なさを感じていた。しかし、忍はそんな考えすらもお見通しだったようで……

収録媒体今巻書き下ろし
時系列警察官になり、アメリカへ長期出張する前夜の日曜日

この辺になると〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズンまで見ていたとしても全く分からない内容になるかと思いますが、実は阿良々木くんは大学卒業後、警察官になり、臥煙伊豆湖が立ち上げた風説課に勤務しています

その辺りの詳細は原作の『結物語』で描かれていますね

著:西尾維新, イラスト:VOFAN

そしてこのアメリカ出張に関しては自ら名乗り出て出張することを選んでおり、だからこそ忍の意見を聞かずに振り回す形になったことを申し訳なく感じていたというわけなんです

ただ、当の忍としてはさして気にもしていなかったどころか、少し楽しみにしていたというのが忍らしさを感じますね

というか、そもそも忍は海外に居たことの方が多く、この日本に居たこと自体がイレギュラーみたいなものなので、気にしていないのも納得と言った感じです

また、この二人の関係性は影で縛られている以上に、固い絆で結ばれているようなものでもあるので、阿良々木くんの考えは確かに愚問と言えば愚問でしたね

互いに死ぬまで一緒にいると誓い、今日を生きてくれるのであれば同じく今日を生きようと言っていた二人にとって、場所なんてものは些細な問題でしかないと感じさせてくれたエピソードでした

なでこパスト

あらすじ

「なんだかずっと、過去の自分と戦っている気がしてならないんだよね」
斧乃木余接がカウンセラーごっこをしている時に、観察対象である千石撫子はそんなことを話し始める。周囲の人間が”自分”というものを見る時に、どうしても過去の”自分”が相手の目に映り、それを中々変えることが出来ず、それがまるで亡霊のように感じているらしいのだが……

収録媒体〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイト
(YOASOBI『UNDEAD』原作小説)
時系列不明

千石撫子が過去の自分のことを”亡霊”といっていますが、これに関しては結構共感出来る部分ではありました

というのも、多くの人の場合、第一印象やこれまでの経験から「この人はこういう人だった」というイメージを持って接するようになり、たとえ現在の”自分”というものを見ていたとしても、実はその人の中にある過去の”自分”を見ていて、まるで現在の”自分”が透けているような感覚になる

この辺りに関しては私自身も思い当たる節はありますし、何人かはそういった”亡霊”を見て接している気がすると思わされたりしましたね

そして、その”亡霊”という例え自体も中々に面白い比喩ではありましたが、さらにこの短々編で面白いと思ったのが、過去の自分は”鏡”のようなものであり、鏡というのは身だしなみを整えるのに必要不可欠なものと言っている部分ですね

現在の自分を変える時によく「過去のことを忘れる」とかいうこともありますが、それって過去の自分から目を背けているのと変わらず、それは現在の自分の身だしなみを整えるのに鏡を見ないで変化しようとしているのと同じこと

結局のところ、”亡霊”であり”鏡”である過去は切り離すことは出来ず、むしろ現在の自分を変えるのであれば、それとしっかりと向き合わなければいけないんだと思わされる内容は中々に興味深い内容でしたね

なお、この短々編は〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズンのエンディング主題歌『UNDEAD』の為に描き下ろされた短々編となっており、その主題歌の一番にあたる歌詞がこの「なでこパスト」の部分になります

アニメ本編では『撫物語』にて流れていた部分ですが、相変わらずのYOASOBIの表現力の高さを感じれる歌詞となっているので、読む前に聴いた方は読んだ後に改めて聞くことをオススメします

【『UNDEAD』「なでこパスト」バージョン】

しのぶフューチャー

あらすじ

「長生きしても未来になんぞなんの希望もないような気がしてきたのじゃ」
六百年生き続けている忍野忍は、斧乃木余接にそんな話を切り出した。これまで多くのことを経験してきた彼女は、これから先の未来にキラキラするような刺激は訪れないのではないかと。そんな彼女に余接は、長生きしている者同士だからこその未来と過去についての考え方の話をする。

収録媒体〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイト
(YOASOBI『UNDEAD』原作小説)
時系列不明(「なでこパスト」よりは後)

「なでこパスト」が過去の話なら、こちらは未来の話

若い頃って色んなものが刺激的に見えたり思えたりして新鮮な気持ちになることがたくさんありましたが、歳を重ねるにつれてそういったものが減ってくるのもまた事実

それが六百年規模となると、もはや世紀の発明品ですらも「はいはいそのパターンね」となってしまうというのは面白い着眼点でした(笑)

ただ、言いたいことはなんとなくわかって、確かに様々な経験などをしていると意外と驚きというのは少なくなってきているようにも思います

そういう意味だと、未来にドキドキワクワクするような楽しさがあるようにも思えないというのは共感できる部分ではありますが、しかし未来と言うのは予想外の展開と言うのがあるのもまた事実

この短々編で言うのであれば、かつて殺し合った者同士が仲良くカウンセラーごっこをしている未来が待っているなんて誰も想像できなかったに違いありません

刺激的なことが無くとも衝撃的なことがあるのが未来ですし、過去に刺激が溢れていてもそれが一概に良かったとは言えず、刺激が無い未来だからこそ刺激的な平和な明日が来るかもしれないと考えさせられたエピソードでしたね

そして、この「しのぶフューチャー」も『UNDEAD』の為に描き下ろされた短々編となっており、二番にあたる歌詞になります

【『UNDEAD』「しのぶフューチャー」バージョン】

こちらは『業物語』&『忍物語』にて流れていましたが、こちらも「なでこパスト」同様に読んだ後に改めて聴くことをオススメしたい楽曲ですね

まとめ

著:西尾 維新, イラスト:VOFAN

『短物語』の全話あらすじと感想&解説でした!

全体的に日常感あふれる内容ながらも、しっかりと本編に関係する内容も描かれているこちらの作品は見事に各キャラ毎の裏話としての役割を果たしており、また〈物語〉シリーズと言う作品を見る上で新たな発見と驚きをくれる作品でもありました

そういった意味では、この作品は〈物語〉シリーズに深みを増すという点においてピッタリな内容だったようにも感じます

そして、この『短物語』にはこれまで西尾維新先生が描かれた三十九の短々編が収録されていますが、これが全てではないというのが中々に驚き(笑)

これ以外にも漫画版の『化物語』の特典として短々編を描かれていたりしますし、さらに言えば〈物語〉シリーズのキャラクターコメンタリーの脚本やこのシリーズ作品以外の小説も執筆されているので、相変わらずの西尾維新先生の執筆量には改めて感服させられましたね

そんな西尾維新先生ですが、この〈物語〉シリーズはまだ完結しておらず、現状では原作は新たにファミリーシーズンに突入し始めてもいるので、これからの活躍にも期待しつつ、これから出る続編も大いに楽しんでいきたいです!

最後に、〈物語〉シリーズの原作を読んでみたいと思った方やどんなシリーズ作品が刊行されているか知りたい方は、過去に原作小説のまとめ記事を書いていますので是非とも参考にしてみて下さいね

それでは今回はこの辺で!

また会いましょう

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