どうもウハルです!
今回は〈物語〉シリーズのオフ&モンスターシーズン最終話『忍物語』の「しのぶマスタード 其ノ陸」の感想&解説を語っていきたいと思います!
ついに、『忍物語』「しのぶマスタード」も閉幕!
今回の「しのぶマスタード」に関してはミステリー色が強く、多くの”謎”が示されてきましたが、それも今回で全て明かされることとなり、いわば今回は《解決編》とも言える内容となっていましたね
その《解決編》で見せるスーサイドマスターと連続吸血犯の”掛け合い”ならぬ”語り合い”の描写は、表現もさることながら、その語られる内容も惹きつけられるものがあり、最終話にふさわしい展開になっていたように感じます
そして、お久しぶりの影縫余弦や、登場を待っていたと言っても過言では無い戦場ヶ原ひたぎの登場など、懐かしのメンバーが見れたのもまた今回のエピソードの見所の一つとなっていましたね
登場時間としては多くはないものの、2人ともこの〈物語〉シリーズには欠かせないキャラクターとなっているので、これまでは蚊帳の外感のあった彼女たちの現在を知ることが出来たのもまた最終話らしい展開だったのかなと感じたエピソードとなっていました
ということで今回は、〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズンの最終話となる『忍物語』「しのぶマスタード 其ノ陸」の感想と解説を語っていきたいと思います!
なお、今回は最終話ということもあり解説が多めとなっています
また、〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズンを見て「続きを知りたい!」とこれから原作を読もうと思っている方のために、モンスターシーズンのみの解説にはなりますが、原作小説のあらすじや読む順番なども合わせて紹介していますので、是非とも参考にしてみて下さいね!
ちなみに、前回のお話である『忍物語』「しのぶマスタード 其ノ伍」の感想と解説も語っていますので興味がある方は是非!
また、〈物語〉シリーズのアニメや原作小説についてまとめた記事もありますので、他の〈物語〉シリーズ作品に触れてみたいと感じた方はそちらも参考にしてみて下さいね
『忍物語』原作情報&アニメ化章数
”たまには縁(えん)も縁(ゆかり)もない女子を助けてみるのも乙だろう”
直江津高校の女子生徒が、相次いで失踪する事件が発生した。ミイラ化した状態で発見された少女達の首筋には、特徴的な傷跡があって・・・?大学一年生になった阿良々木暦は、犯人を突き止めるべく走り出す!
青春は、眩しいだけだと思ってた?原作『忍物語』巻末より引用
『忍物語』はシリーズ通巻23冊目の原作小説で全50章の作品となり、今回アニメ化された「しのぶマスタード 其ノ陸」は46章から50章まで描かれた形になります
「しのぶマスタード 其ノ陸」あらすじ
女子バスケットボール部OG会に参加した暦は、彼女たちに行方不明となっている五人の共通点を聞く。話を聞いているうちにとある確信を得た暦は、急ぎその場を後にする。その頃、ひとり神原家で待っているスーサイドマスターのもとを訪れたのは――。
046~050
『忍物語』「しのぶマスタード 其ノ陸」感想&解説
仲間外れを探す国語の問題
日傘家で行われていた女バスOGのパジャマパーティーに参加することになった阿良々木くん
そのドレスコードとして、かつて直江津高校の女子用の制服を着て以来の女装をすることとなり、さらにはツインテールまで結うこととなりましたが、これでこのパジャマパーティーの参加資格を得ることが出来ました
そして改めて、新しいメンバーもいるので神原や日傘も含めての自己紹介タイムが始まります
「日傘星雨(ひがさせいう)!五月三日生まれ、十八歳!身長165センチ、ポジションはスモールフォワード。好きなプレイ、スティール!」
「樟脳水戸乃(しょうのうみとの)!四月九日生まれ、十八歳!身長170センチ、ポジションはポイントガード。好きなプレイ、ダブルチーム!」
「真横礼香(まよこれいか)!十二月十二日生まれ、十七歳!身長169センチ、ポジションはシューティングガード。好きなプレイ、ランアンドガン!」
「海川にかわ(うみかわにかわ)!一月十八日生まれ、十七歳!身長164センチ、ポジションはパワーフォワード。好きなプレイ、アリウープ!」
「シルビア・シビア!九月十九日生まれ、十七歳!身長185センチ、ポジションはセンター。好きなプレイ、ブロック!」
「大城誠子(おおきせいこ)!八月一日生まれ、十七歳、身長180センチ、ポジションは控えのシックスマン。好きなプレイ、応援!」
「神原駿河!五月九日生まれ、十八歳、身長160センチ、阿良々木先輩のエロ奴隷。好きなプレイ、放置プレイだ!」
エースがオチを担当する自己紹介を終え、阿良々木くんは会話を回すという意味も込めて、失踪した五人の共通点が無いかOGたちに聞く事にしました
しかし、失踪した五人の共通点と言うのは彼女たちも特に思い浮かばなかったようで、それを聞いた阿良々木くんは「それなら四人ならどうか?」という質問をしようとした時に、あることに気付いてしまいました
それは、五人の共通点を探すのではなく、五人の中から仲間外れを探すということ
もしもこの事件が、間違いを探す国語の問題のような事件なのだとすれば……
そこまで思い至った時、これまでの点が線で繋がり、捜査陣側の情報が漏れていた理由も分かった阿良々木くんは、「今いるべき場所はここじゃなかった」と日傘家を後にしました
感想&解説
前回はパジャマパーティーにおけるドレスコードの話で終わり、そこからの続きになるんですが、この阿良々木くんの女装姿は中々酷いw
こういう主人公が女装をするパターンの場合って、その可愛さに周囲の女子が歓声を上げるか、逆に似合わな過ぎて空気が微妙な感じになるパターンが多い気がしますが、そのどちらとも言えない中途半端な感じがまた、その似合わなさを表現しているように感じますw
まあ、結局のところ、このドレスコードに関しては「高校時代の内に理系の大学生とちゃらちゃら遊んだという実績が欲しかった」と原作では日傘も言っているので、似合う似合わないはそこまで気にしてはいなかったんだとも思いますけどね
ただこれで阿良々木くんの中の女装の歴史にまた新たな1ページが刻まれてしまったことを考えると、少し同情してしまう気持ちもありましたかね(笑)
しかし、その女装の甲斐もあって、阿良々木くんが気付いた今回の事件の真相
今回の事件は”間違い”が一つの鍵となっていましたが、その鍵を手に入れた阿良々木くんが向かう場所とはどこなのか気になる所ではありますね
ここでの解説はアニメ描写も絡めながら原作から1つ紹介していきます
阿良々木くんはこの後に、自転車で”自分が居るべき場所”へと向かって行きますが、あの自転車は日傘星雨のものではありません
というのも、日傘家には自転車がなく、なぜか一輪車しかないという絶望的な面白返答があったと原作では描かれています
では、あの自転車は誰のものかと言うと、このパジャマパーティーに唯一自転車できていたシルビア・シビアのものになります
彼女の自転車は自転車界のF1カーとも言われるロードレーサーであり、急いで移動しなければならなかった阿良々木くんにとってはかなり助かったみたいですね
そして、これらのやり取りに関してはアニメで描かれていませんでしたが、描写としてはしっかりとアニメで描かれていました
その描写と言うのは日傘家の外観が映っていた時で、彼女の家の前にはバスケットゴール、ロードレーサー、一輪車が描かれているんですよね
この辺りは今回のエピソードと直接関係のない部分ではありますが、原作の内容を忠実に描くこの作品らしさを感じることは出来る部分となっていましたね
スーサイドマスターと連続吸血魔の語り合い
画像出典:〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイト
阿良々木暦と臥煙伊豆湖が神原家を後にするのと入れ違いになる形で、その女子高生は神原家へとやってきました
靴すら履いておらず、裸体に漆黒のマントを羽織った金髪金眼の女子高生は、庭の方から声を掛けられて、その声のする方へと歩を進めます
そこには一週間前に出会ったスーサイドマスターが大層な庭に相応しい大層な岩の上に座りながら待ち構えていたかのように堂々とした態度を取っていましたが、女子高生自身も特に動揺することもなく、自身を吸血鬼へと変えた彼女との再会を果たしました
血を吸われたものの、勝手にミイラ化してしまったスーサイドマスターを埋めただけである女子高生でしたが、スーサイドマスター自身はなぜこの山に埋めたのかは分からず、それを質問すると、彼女曰く、供養するなら神社の近くの方が良いと思ったからとのこと
それが結果的にスーサイドマスターの早期発見に繋がった要因ともなっていましたが、スーサイドマスターが彼女に言いたかったのはそれだけではなく、彼女が起こしていたこれまでの行動の理由に対して不満があったからでした
ハードでクールな吸血鬼であるスーサイドマスターの眷属ともあろうものが、復讐と言うダサい理由で吸血鬼になりたがったことに不満があり、そして、スーサイドマスターは続けてこうも彼女に向けて言い放ちました
そんなことがしたくて、貴様は吸血鬼になりたがったのか――俺様に、食われたがったのか
この辺りの事実に関しては専門家たちには伝えていないことを話し、単に道を訊こうとしただけのスーサイドマスターに対して、いきなりひれ伏して「吸血鬼にしてください」と懇願したことは話していないと付け加えるように女子高生に話しました
その恩着せがましい言い方に女子高生は苛立ちを覚えましたが、そもそもスーサイドマスターがこの女子高生にしかたった話はそんなことではありませんでした
スーサイドマスターがしたかったのはいわゆる”いい話”ではなく”おいしい話”であり、女子高生にスーサイドマスターを食べるかどうかの選択肢を与えることでした
そうすれば今よりもパワーアップした吸血鬼になれると話すスーサイドマスターでしたが、女子高生にとってそれは自分は得をしてもスーサイドマスターに得がある話とは思えませんでした
そのことをスーサイドマスターに伝えると、どうやら彼女はこのまま何もしなくても死んでしまう状態となっているらしく、飢え死にで死ぬという
そんなダサい死に方を望んでいないスーサイドマスターは、自身が自殺したいと思う前に殺してほしいというのが今回の商談を持ちかけた理由だと話しました
かつての眷属であるキスショットの無事を確認し、あまつさえ楽しそうに生きている姿を見て思い残すことが無くなったスーサイドマスター
思い残すことが無いと言い放つスーサイドマスターの姿は、もはや何も残っていない女子高生にとっては怒りすらも覚える姿に映りましたが、彼女はスーサイドマスターの商談を受けることにしました
その受諾にお礼を言うスーサイドマスターは、最後に偉大なる吸血鬼である自身を殺す吸血鬼の名前を知るために、女子高生に名前を訊きます
女子高生はその言葉を受けて、自身の名前をスーサイドマスターに伝えようとすると、別の人物からその名前を言われることとなりました
「貼交帰依(はりまぜきえ)」
スーサイドマスターを殺そうとしていた貼交帰依が声のした方向へと顔を向けると、女子のパジャマを着てツインテールを結った阿良々木暦の姿がそこにはありました
感想&解説
ついに明らかになる今回の事件の犯人でしたが、この辺りに関しては意外な犯人という印象を持った人は少ないかもしれませんね
阿良々木くんたちにはこの情報がありませんでしたが、私たち視聴者にとっては一番最初の被害者が誰なのかと言う情報は、それこそ最初の段階で提示されていました
この『忍物語』における章ナンバーの001にて、貼交帰依がスーサイドマスターに襲われていますし、前回の「しのぶマスタード 其ノ伍」にて阿良々木くん自身も被害に遭った順で考察していますが、最初に襲われた女子高生こそが今回の事件の犯人だと前回の段階で明かされてはいましたしね
なので人によっては、犯人に関してはすでに前回の段階で分かっていた人もいたのかなと感じます
ただ、ここで明かされた意外な事実というのもあって、それは貼交帰依は自ら懇願して吸血鬼になったということ
冒頭で描かれていた彼女の絶望と願望は嘘偽りのない本物だったようです
こう言っちゃなんですが、確かに吸血鬼となった貼交帰依は冒頭と比べると、死んでいるのに生き生きしているようにも感じました
まあ、それは見た目上の問題なので、心の部分としては相変わらず真っ暗な感じも否めませんが、それでも彼女の願望が見事にかなった一つの形ではあるので、なんとも言い難い複雑な感じにさせられる事件の真相となっていましたね
ここでの解説は原作から3つです
まず1つ目は、貼交帰依が着ていた服についてです
貼交が神原家に現れた際、黒マントを羽織って登場してきましたが、あれは元々スーサイドマスターが着ていたものです
彼女はスーサイドマスターに吸血鬼化された後、そのマントを奪って犯行に及んでいたようですね
なのでスーサイドマスターが発見された時は裸だったというわけです
次に2つ目は、スーサイドマスターが貼交帰依がやって来たのを知った理由です
スーサイドマスターは決して頭の回転が速いわけではなく、今回の事件に関しては阿良々木くんたちから聞いていたものの、だからといって貼交が神原の家にやってくるというところまで頭が回っていたかと言うとそういうわけではありません
では、スーサイドマスターはなぜ貼交が神原家に来たことが分かったのかと言うと答えは単純で、彼女の接近を探知出来たからです
スーサイドマスターは貼交の血を吸ってミイラ化してしまったので、吸血行為自体は失敗している関係性ではありましたが、それでもキスショットとは違って貼交は完全に独立している訳ではありませんでした
その為、貼交がここにやってくることを探知できたスーサイドマスターは、彼女を待ち伏せつつ、八九寺にも席を外してもらったと原作では描かれています
ここの部分に関してはアニメでは特に描かれておらず、説明がなくても何となく察せられる部分かもしれませんが、この部分を知っておくと色々と辻褄は合いますし、吸血鬼の関係性と言う意味でも納得感のある内容かなと思います
最後に3つ目は、スーサイドマスターが言った「一挙両得」の部分についてです
ここに関しては細かな部分であり、それこそ国語の問題になってくるんですが、念のための解説ですね
スーサイドマスターはこの「一挙両得」を「両者どちらも得をする」という意味合いで使っていますが、それは普通に間違いで、この言葉はどちらかというと「一石二鳥」に近い意味合いの言葉になります
彼女自身は日本語に詳しいわけではないのでその辺は感覚で言った言葉になるんですが、これを聞いた貼交自身は、原作ではしっかりとその言葉の意味が間違っていることは気付いていました
ただ、海外から来たスーサイドマスターの表現の自由の挙げ足を取るのはそれこそ子供じみていると特に訂正することはしなかったんですよね
もしかしたら、国語に詳しい方がこのシーンを見た時に「使い方違くね?」と感じた方もいるかもしれませんが、そこは敢えてみたいな部分でもあるシーンとなっているので、気になったとしてもそこは流すのが正しい見方だと思って頂ければと思います
今回の事件の全貌
画像出典:〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイト
阿良々木くんが考え直した今回の事件の真相とはこうである
第一のミイラを阿良々木くんは貼交帰依だと紹介され、それに何の疑いもなくそのミイラは貼交帰依だと思っていました
しかし、そもそも髪型もほとんど同じであり、カラカラに乾いたミイラの状態では顔の判断すらも難しいにもかかわらず、どうしてそのミイラが貼交帰依だと分かったのか
それはそのミイラが持っていた所持品などから身元を確認し、その持ち主がそのミイラだと判断していたからこそでした
つまり逆を言ってしまえば、所持品を入れ替えてそのミイラに持たせてしまえば、身元のすり替えが可能だったということでもある
しかし、それが可能だったとしても、すり替えが一番目のミイラだと断定するほどの材料にはなり得ない
そこで重要になってくるのが、二番目の被害者が『B777Q』と書かれた暗号を持っていたということ
この暗号はスーサイドマスターに罪をなすりつけようとするために残された偽装工作ではありましたが、その偽装工作自体、臥煙伊豆湖を含めた専門家たちの存在を知っていなければ、する必要のないことです
つまり、第二の被害者が襲われた時点ですでに捜査陣側の存在や内部情報が漏れていたことになり、それは第一の被害者である貼交帰依のミイラが入れ替わっていたと特定することが出来る材料でもありました
では、どうやって捜査陣側の情報を知ることが出来たのか?
それは以前に食飼命日子(はむかいめにこ)とした何気ない会話がヒントとなり、阿良々木くんはその手段に思い至りました
2つ目の暗号が携帯に残されていた際に、命日子が発した「携帯は脳の一部みたいなもの」といった言葉
それにならうなら、貼交帰依が自身で生産した携帯電話をミイラに持たせておけば、自身の脳や目や耳をミイラに取り付けているのと同じことなのではないかと
生産した物でなくとも、ロック状態でも起動し続けるアプリのようなものは存在するし、携帯電話が監視カメラや盗聴器の役割を果たして、捜査陣側の情報を入手していたと考えることも出来る
しかしこの方法の場合、携帯電話が電池を使って動いている都合上、こまめに充電しなければ携帯電話の電源が切れてしまうという欠点があり、それはイコールで貼交帰依が情報を入手するのはある時期を境に歯止めがかかるということでもありました
その欠点があるからこそ、木石総和の携帯電話がロッカーに押し込まれていたのは、木石総和を犯人と思わせる狙い以外にも、貼交帰依が受信用として使っていた携帯電話の電池が切れて用済みになったからと言う見方も出来る
そうなった場合、スーサイドマスターを復活させるために神原には外出してもらったことを貼交は知らない
つまり、神原を襲うために神原家を狙う可能性は非常に高いということになる
その結論に至った阿良々木くんは、日傘家から神原家へと急いで戻り、その結果、これからスーサイドマスターを襲おうとしている貼交帰依の姿を目撃したのでした
感想&解説
ここでついに事件の全貌が明かされましたが、この事件は言うなれば最初の一歩から阿良々木くんたちは間違っていたということですね
暗号云々以前に最初の段階からミスリードされており、阿良々木くんたちはそれに見事に引っ掛かっていたというわけです
この部分に関しては疑問に思う所も色々あるかもしれないと思うので、感想もほどほどにその辺りも含めて解説をしていきたいと思います
ということで、ここでの解説は阿良々木くんの説明の補足になります
ここでは4つほど解説をさせて頂きますが、その解説の内容をざっくり言えばこんな感じです
- ミイラのすり替えがここまで分からなかった理由
- 阿良々木くんがすり替えに気付いた理由
- 木石総和の携帯がロッカーに入れられていた一つの可能性
- 阿良々木くんがパジャマ姿で向かった理由
まずミイラのすり替えがここまで分からなかった理由ですが、これに関しては今回の事件が警察などと言った怪異と全く関係のない法執行機関の協力を得られなかったというのが大きな理由となっています
そもそも今回の事件の場合、ミイラが持っていた所持品から身元を判明するという極めて不確かな部分から身元を特定していました
もし仮に、これが普通の事件で警察がDNA鑑定などを行えるような事件だったとすれば、第一の被害者の時点でその身元が木石総和だったと分かったのではないかと原作では語られています
また、なんでも知ってるおねーさんである臥煙伊豆湖がこの偽装工作に気付かなかったのも致し方ない部分ではあり、彼女は怪異の専門家ではあっても人間の犯罪の専門家ではありませんでした
そういった犯罪の訓練を積んでいるわけではない彼女が、この工作に気付かなかったのも無理はないというのも原作では語られていますね
次に、阿良々木くんがミイラのすり替えに気付けた理由ですが、それはパジャマパーティーで五人の中から間違いを探そうとした時に気付いた、四体のミイラのうち三体のミイラの携帯に付けられていたストラップが発端となっています
パジャマパーティーの時は五人の中から四人の共通点を探そうとしましたが、そこから阿良々木くんはこの時、四体のうちの三体がストラップを付けていたことに気が付きました
それは”ストラップを付けていなかった女子高生”が”ストラップを付けている女子高生”を襲っているという可能性に気付くきっかけともなり、そこに気付いてしまえばすり替えという可能性に気付くのも容易だったと原作では語られています
要は、一人目の被害者の携帯にストラップが付いていなかったのは、ストラップの付いていない犯人自身の携帯を持たせたのではないかと考えた訳です
確かに、そこに気付いてしまえば”すり替え”に関してはすぐに思いつくかもしれませんね
そして、木石総和の携帯がロッカーに入れられていた一つの可能性ですが、これに関しては先程本編の語りの方で少し書かせて頂きましたが、これは受信用として貼交帰依が使っていた木石総和の携帯の電池が切れたからというのが考えられます
この部分は実際に本人の口から語られている訳ではありませんし、偽装工作の一つとして仕込んだ可能性もありますが、それに付随するもう一つの可能性としても比較的に間違っていないのかなと感じている部分ですね
捜査陣側が携帯電話をこまめに充電する必要性がない理由に関してはアニメでも語られていましたが、犯人側である貼交帰依に関しては充電する必要性はあったものの、出来るような状態ではありませんでした
そんな彼女にとって、電池の切れてしまった携帯は邪魔にしかなりませんし、偽装工作という意味でも使えるのであれば、そのままロッカーに押し込んだ方が有効性としては高い気もします
ちなみに、この携帯電話で情報を得ていたと思わせる描写というのは「しのぶマスタード」の其ノ壹~其ノ貮でしっかりと描かれていて、不自然に携帯からの視点になったり、病室で音声を拾っているかのような描写が壁に映し出されていたりしていましたが、その描写は盗聴や監視を意味している表現になっていたんだと思います
最後に、阿良々木くんがパジャマ姿で神原家へと向かった理由ですが、それは貼交帰依が日傘家を見張っている可能性も考えてのことでした
というのも、ここまで阿良々木くんは散々事件の考察をしてきましたが、それはあくまで可能性に過ぎず、もしかしたら貼交が阿良々木くんが出ていく瞬間を虎視眈々と狙っていて、それが分かった瞬間に神原たちOGを襲う可能性も考えられました
その可能性を考慮した時に、阿良々木くんが下した決断というのが女性用のパジャマ姿を着たままで日傘家を出るというもの
携帯電話で情報を得ているという可能性を阿良々木くんは考えていましたが、実はそれは間違いである可能性も考えられた
その場合、現在も何かしらの手段で情報が漏れていて、日傘家に神原達が集まっていることや阿良々木くんがその場にいることがバレている可能性も大いに考えられました
しかし、それでも神原家へと向かわないわけにはいかず、臥煙伊豆湖にも神原達にも事情を説明するには時間が足りな過ぎる
そこまで考えた時に、現在は女性の格好をしている阿良々木くんが外に出るのであれば、傍目には女子がひとり外出したようにしか見えず、まだ部屋の中に阿良々木くんがいると思わせることが出来るのではと考えた結果、パジャマ姿で神原家へと向かうという判断に至ったというわけです
ああいう変な格好に関しては阿良々木くんは前例があるので違和感なく受け入れられる部分ではありますが、意外とちゃんとした考えを持ってあの格好をしていたということですね
まあ、これも原作で語られている部分ではありますが、この判断が考えのある行動と言うより考えなしの行動だったという点に関しては否定も出来ませんけどね(笑)
人間をやめた女子高生の末路
ギリギリのところでスーサイドマスターを食べようとする貼交帰依を止めることに成功した阿良々木くん
その姿を見た貼交は、おかしな格好をしていながらも、情報を手に入れていたこともあり、その不審者が阿良々木暦だと分かりました
貼交は軽く挨拶を交わしたものの、そこから話を続けることはなく、その沈黙に耐えられなかった阿良々木くんは貼交に思いつくままに話を振りました
貼交が自分の事情をすでに知っているのと同じように、少しは貼交の事情も把握していること
そして、貼交がやってきたことはやり過ぎだったこと
それを聞いた貼交は「やり過ぎじゃあなくて、やめ過ぎなんですよ」と自身のこれまでの行動を皮肉のように話しました
わたしは――部活を辞められないからって、何も生きるのを辞めることはなかったでしょうね
まるで自ら望んで吸血鬼になったかのような言い回しに阿良々木くんは戸惑いますが、今はそんなことを考えるよりも貼交を説得することを優先させます
しかし貼交は、これまでの行動は「彼女たちを襲ったのではなく、助けたのではないか?」とさらに阿良々木くんには理解出来ない言葉で会話を続けました
あんな生きているか死んでいるかも分からないような、からからの状態を”助けた”とは到底思えない
阿良々木くんのその思いを見透かしたかのように、貼交はさらに話を続けます
生きているのか死んでいるのかわからないなんて、高校生ならみんなそうでしょう?からからに乾いているのも。大学生になったらそんな気持ちも忘れちゃいましたか?
わたし達がきゃっきゃと青春しているように見えますか?悩みなんて何もない、女子高生に見えますか?阿良々木先輩。
青春の青は、思っているより濃いんですよ。暗闇みたいなダークブルーなんです。
その話に反応したのは阿良々木くんではなくスーサイドマスターで、「この掛け合いこそが青春なんじゃねえの?」と冷やかしつつ、「さっさと決めねえからこういうことになるんだよ」と阿良々木くんには意味の分からない言葉を続けました
食うか食われるか――食いたいか、食われたいか、だぜ。それとも。主人を食いたいか、主役を食いたいか。
これまた阿良々木くんには意味不明ながらも、意味深ではあるこの言葉を受けて、貼交は決断するかのように食べたい方へと――阿良々木暦へと襲い掛かりました
わたしは貼交帰依!四月十四日生まれ、十六歳、身長170センチ、ポジション控え、好きなプレイは――フェイクよ!
今度こそ、主役を食ってやるわ!
名乗るのが礼儀だと言わんばかりに襲い掛かる貼交帰依に対して、影から飛び出した忍も、物陰から飛び出してきた八九寺も間に合うことは叶わなかったものの、しかし阿良々木くんは貼交に食われることはありませんでした
その理由は単純で、貼交が阿良々木くんを食らう前に、貼交自身が空から降って来た人間の膝頭を脳天に食らってしまい、身動きが取れなくなってしまったからです
久しぶり、阿良々木くん。時間稼ぎ、ご苦労さん。ツインテイル、似合うやん?
貼交にニー・キックを食らわせた張本人であり、暴力陰陽師の影縫余弦は貼交を足場にしながら、久しぶりにあった阿良々木くんに何事もなかったかのように挨拶をします
ただ、影縫の行動はどう見てもやり過ぎだと感じた阿良々木くんは、返事を返すよりも先にそのことを彼女に伝えますが、影縫は「不死身の怪異相手にやり過ぎるっちゅうことはないんやで」と以前も阿良々木くんに言ったことを改めて言いました
そして続けて振り向きもせず、後ろにいるスーサイドマスターに話を振りますが、どうやら吸血鬼であるスーサイドマスターから見ても影縫の行動はやり過ぎらしい
そこから二人は、明らかに過去に出会ったことがあるような会話をしつつ、今のスーサイドマスターでは影縫の相手にならないということでこの場は収まり、予想していた激しい戦闘になることはなく二人の会話は落ち着きました
その落ち着きを見せたところで、影縫は今更のように足下を指差しながら、阿良々木くんに一つの質問をしました
ほんで阿良々木くん。これは、誰?
感想&解説
長かった事件も終わってみればあっさりと言った感じではありますが、これに関してはかつて『終物語(下)』の「おうぎダーク」で忍野扇が言った言葉がピッタリな気がする結末でした
推理小説でもそうだよね――どきどきはらはらしながら読むのは、犯人がわからないからだ。謎が謎でなくなり、容疑者が一人に絞られてしまえば――はっきり言って、そのあとは興ざめだよね。謎解きのシーンなんて、一行で終わってくれていい。正体がばれれば。恐怖も面白味も、消滅する――そういうものだ
今回は多くの”謎”が提示され、ミステリーのような雰囲気を感じさせましたが、正体がバレ、その動機も分かってしまえば、この作品にはもう”謎”はなくなってしまう
そこで読者や視聴者が期待するのは「スッキリするオチ」になるんだとは思いますが、「そんなもんは知らん」とでも言うかのように、一行どころか一撃で終わらせた影縫余弦
相変わらずの破天荒っぷりを見せる登場シーンでしたが、不死身の怪異に対する容赦のなさも健在の様子でしたね
なんか彼女が登場すると「ああ、もうこの事件は終わったな」っていう別の意味での安心感がある気もしますし、これまでの行動があったとはいえ、貼交帰依にも少し同情したくなるような事件の幕引きだったようにも感じましたね
そしてその貼交ですが、好きなプレイが「フェイク」というのもそうですし、ポジションが控えと言うのもまた皮肉な話な気がします
主役になれなかった彼女はまさしく”控え”の位置にいたからこそ、ダークブルーな青春を送ることになった訳ですし、偽装工作という”フェイク”を積み重ねて捜査陣側の裏を掻こうとしてきた訳ですしね
そう考えると、西尾維新先生のこのキャラ設定自体も中々上手く練られたものだなとも感じてしまいました
ここでの解説はアニメ描写から1つと原作から2つです
まずアニメ描写の部分ですが、それは貼交が影縫に踏み台にされていたシーンです
アニメで貼交は『犬神家の一族』で有名なワンシーンのように上半身は地面に埋まり、両脚だけ地面から飛び出しているような格好になっていましたが、これはアニメオリジナルの描写になります
原作では『偽物語』「つきひフェニックス」の時に阿良々木くんが影縫にやられた時のように、地面に折り畳まれた状態で踏みつけ、足場にしていると語られていましたね
このアニメオリジナルの表現に関しては、個人的には『忍物語』のオープニングテーマとなっている「万死のテーマ」と似たようなテーマ性を感じた気がします
「万死のテーマ」に関してはレトロ調でカッコいいオープニングとなっていましたが、その映像も非常に素晴らしく、昭和ミステリーを感じさせるような映像は今回の「しのぶマスタード」のミステリー感をより引き立たせるように感じていました
そういった中、映像の中の随所で有名なミステリー作品の一つである金田一耕助シリーズを思わせるような表現もあったように感じました
一番それを感じたのがキャラとキャストの紹介部分で、阿良々木くんが手を叩いているのは金田一耕助シリーズに登場する等々力警部の「よし分かった!」の部分のように思えましたし、忍が髪を掻いている部分は金田一耕助の癖を表しているのかなと感じたりと互いのシリーズ作品における名コンビがしっかりと描かれていたように思います
そんな金田一耕助シリーズで有名なものと言えば、それこそ今回の貼交が影縫にやられた時の格好である逆さの両脚の描写であり、「万死のテーマ」同様の昭和ミステリー感をここで表現したのかなと感じてしまいましたね
まあ、あくまで個人的な印象にはなるので定かではありませんが、こういうワンポイントで茶目っ気を入れてくる辺りはシャフトらしい表現方法なのかなとは感じた部分ではありましたね
次に原作からの1つ目は、影縫余弦が空から降って来た理由です
ここに関しては視聴した人の中には「普通に自分で飛んでやって来たのでは?」と思うかもしれませんが、実はそうではありません
そもそも臥煙伊豆湖が影縫余弦を呼び戻したことを阿良々木くんに伝えた際に「どんなに早くても数日はかかる」と言っていましたが、その”数日”はまだ経っておらず、想定したよりも早く影縫はこの場に到着しました
そのことに違和感を覚えた阿良々木くんでしたが、その答えはすぐに分かって、影縫余弦の式神である斧乃木余接が迎えにいったんだと思い至りました
ここの描写に関してはアニメで描かれていなかったので原作未読だと分からない部分ではあるんですが、火憐に話を聞くために一度自宅に戻って阿良々木くんは仮眠を取りましたが、その前に斧乃木余接と話をしようと月火の部屋へと行った描写が原作にはありました
しかしそこに余接はおらず、忙しいからいないんだとその時は思っていた阿良々木くんですが、実はこの段階で余接は影縫を迎えに行っていたんですよね
基本的には命令に従うだけの人形が、唯一、自分の考えで動く存在がいるとすればそれは影縫余弦だけであり、彼女の移動手段として迎えに行った後、遥か遠くから『例外のほうが多い規則(アンリミテッド・ルールブック)』で影縫余弦というミサイルを飛ばしたというのが、阿良々木くんが思い至った影縫の到着が早かった理由です
ちなみに、着地に関しては結構大雑把に考えていた可能性が高く、貼交帰依を目掛けて飛ばした可能性もありますが、もしかしたらスーサイドマスターかもしれないし、阿良々木くん自身だったかもしれないし、誰でも良かったのかもしれないと原作で阿良々木くんは語っていましたね
最後に原作からの2つ目ですが、影縫余弦の問いかけに対しての阿良々木くんの返答です
アニメでは「これ誰?」でこのパートは終わっていましたが、原作ではその問いかけにしっかりと阿良々木くんは答えていました
といっても、正直に「貼交帰依です」と答えたわけではありません
貼交はこれまで偽装工作などをしながら自分の名前を隠し続けてきて、ようやく最後に名前を明かしましたが、阿良々木くんはそんな彼女に対して素直に名前を言っていいものか悩み、さらにはスーサイドマスターがキスショットと名前を付けたように、そして忍野メメが忍野忍と名前を付けたように、阿良々木くん自身が名前を付けてあげるべきかどうか考えます
しかし、生憎、阿良々木くんはそんなカッコいい名前を付けてあげられるわけもなく、ハードでクールではない自分は、貼交と同じだと考えました
生憎僕は、ハードでクールな僕じゃなかった。
そう、彼女と同じように。
もしも僕が失敗していなければ――正しく吸血鬼になっていたならば。
「その子は――その鬼は」
吸血鬼に遭遇し、吸血鬼に襲われ。
主役に憧れ、化物に憧れ。
仲間を欲して、仲間を嫌い、仲間を傷つけ。
人間であることが嫌になるほど鬱屈した青春を送った末に、特別な力を手に入れた末に、最終的に、専門家にぐしゃりと踏み潰された、鬼にもなり切れず、人でもあれなかった、その高校生は。
「僕ですよ。僕みたいなもんです」
「はあ?」原作『忍物語』より引用
阿良々木くん自身、吸血鬼となってしまった貼交帰依と対面して、たびたび高校時代の自分と重ね合わせていました
高校時代に自ら多くの間違いを重ねながらも大学生へとなった阿良々木くんと自ら間違えていこうとする女子高生の貼交帰依
この二人の関係性を見事に表現したこの語りこそ阿良々木くんらしく、〈物語〉シリーズらしい幕だと感じた阿良々木くんの返答でしたね
後日談と言うか、今回のオチ
画像出典:〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイト
で、その女子高生はその後、どうなったの?播磨屋(はりまや)ちゃんだっけ?
「誰だよ、播磨屋ちゃん」と阿良々木くんはツッコミを入れながらも、彼の恋人である戦場ヶ原ひたぎに今回の事件の顛末を話しました
貼交帰依はあの後、影縫に虐殺されることはなかったこと
ミイラ化した女子高生を元に戻すためにも彼女を吸血鬼から人間に戻さなくてはならず、その方法も阿良々木くんが吸血鬼となった春休みとは違って”親殺し”という方法を取らなくても元に戻せること
そして、その親であるスーサイドマスターは国外追放と言う形で強制送還されることになったこと
それらを話した後、その強制送還の際の忍の様子を話しますが、その別れ際はさっぱりしているもので、忍の様子を見る限り、何かを知っていながらも阿良々木くんに黙っている雰囲気がありました
そして、何を隠しているのかは阿良々木くんが忍に問いかけた『お前にとって、人間ってなんだ?』の遅い返答の中にあったようでした
モンスターじゃろ
そこまで聞いた戦場ヶ原は話を変えるように、阿良々木くんに臥煙伊豆湖が持ち掛けた大学在学中は不干渉の口約束がどうなったのか尋ねると、それは一応成立したことを阿良々木くんは伝えました
一度裏切った時点で不成立になっていてもおかしくはなかったものの、それが許されてしまう辺りはまだまだ自分は子供なんだと思わされた阿良々木くん
その様子を見た戦場ヶ原は、特に何かを言ってあげるわけでもなく、「次の講義の時間が迫っているわ」と席を立ちますが、ふと阿良々木くんの携帯電話に可愛らしいストラップが付いていることに気が付きます
そのストラップには『F・C』というアルファベットがレタリングされており、そのタイプのストラップを女子バスケットボール部員が付けていることを知っていた戦場ヶ原は、阿良々木くんに「女子バスケットボール部の一員になったってわけ?」と質問します
どうやら阿良々木くんは事件の後も女子バスケットボール部の問題に関して色々と協力しているらしく、戦場ヶ原は笑いながら「阿良々木くんがまだまだ子供なのはそういうところじゃないの?」と言いつつ、その場を離れました
「まだまだ子供」と言う言葉で阿良々木くんは、あの夜に影縫に投げかけた質問を思い出しました
影縫さんは、迷わないんですか?
貼交帰依の行動は人の法に照らしても鬼の法に照らしても許されざる犯罪ではあったものの、それでも阿良々木くんは貼交の事情を考えてしまった
そのことが判断を迷わせてしまったのは事実ではありましたが、それに対して影縫の行動は今回の件と言い、以前会った時と言い、迷いを感じさせないものとなっていたため、阿良々木くんはその質問をせずにはいられませんでした
迷わへんよ。大人やから
その返答にすら迷いを感じさせなかった影縫の言葉に、阿良々木くんは思わず納得してしまう部分がありました
それが大人ってことなら、僕は子供でしかない。幼女よりも幼い、子供でしかない。
執行を猶予された吸血鬼達と同様に、不老不死になろうと、地獄に落ちようと、高校を卒業しようと、そして大学生になろうと、阿良々木暦はいまだ、モラトリアムの真っ最中だった。
感想&解説
オチにてついに戦場ヶ原ひたぎが登場しましたが、やはりこのカップルを見ているとほのぼのするというか、安心感があるというか、長年連れ添った夫婦かのような安定感を与えてくれましたね
そして、多くの視聴者が湧いた戦場ヶ原ひたぎの茶髪姿もまた非常に似合っていました
これに関してはしっかり原作通りの表現となっていて、大学入学後の戦場ヶ原の活動をざっと語るとこんな感じです
- ヘアサロンに通って茶髪にした
- ネイルサロンに通って爪を飾った
- サークルに入って旅行やコンサートに通った
- 海外からの留学生が多く暮らす女子専用のシェアハウスに入居した
かつての高校時代とは違って大分垢ぬけた印象がありますが、シェアハウスに住み始めたのは卒業までに五ヵ国語を習得するという目標のためらしく、卒業後のことをすでに考えている辺り、やはりただ者ではないと阿良々木くんも語っていましたね
そして、そんな変化を見せている戦場ヶ原に阿良々木くんが今回の事件の話をしたのは、かつて「互いに秘密を持たない」という約束を付き合った時にしていましたが、それが大学生になった今でも有効であるからで、その辺りは変わってないなと思わせる一面ではありました
そんな阿良々木くんが語った今回の事件のあらましですが、大人の事情はありましたが、それでも収まる所に収まったのかなと言う印象が強かったですね
多くの被害者は出ましたが、幸いなことに復調させることは可能であり、それを起こした張本人も元の場所に戻ると言った結末はハッピーエンドとは行かないまでも、良い所には落ち着いたのかなとは思います
また、阿良々木くんはこれまでも多くの物語の締めてきましたが、今回も綺麗に締めてくれましたね
貼交帰依に出会ったことで過去を思い出す機会を貰い、影縫余弦に再会したことで大人と言うものを知る
そういったものから改めて阿良々木くん自身が今回の事件を通して「自分は子供である」と認識し、「自分はまだまだ”モラトリアム”の真っ最中だ」と締める流れは今回のエピソードの締めとしても相応しいと感じましたね
ここでの解説は原作から2つです
まず1つ目が、貼交帰依を人間に戻す方法です
これに関しては本編で阿良々木くんは「日進月歩で」と語っていて、実際にはどういった方法なのか語られていませんでしたが、原作ではその方法がしっかりと語られています
その方法と言うのは、かつて阿良々木くんもその方法で人間に戻った二本の妖刀を使った方法です
この方法に関しては『忍物語』でも、「地獄に落ちてから生き返らす方法」として使われていましたね
そして、臥煙伊豆湖曰く、この方法を応用すれば吸血鬼になって間もない人間であれば戻せるらしいんですが、この方法に関してはまだ実験段階に過ぎません
なので、その実験に貼交帰依が付き合うことで、それが罰となり、罪を一等減じられた部分もあるのだろうと阿良々木くんは語っていますね
次に2つ目ですが、阿良々木くんが持っていた『F・C』のストラップについてです
このストラップは「女子バスケットボール部員がつけていたもの」ではありますが、実はこのストラップこそ、アニメ本編で明確に言及されていなかった神原にした頼み事の部分になります
阿良々木くんが神原の家を借りる際に「もう一個、頼まれて欲しいことがあるんだけど…」と言っていた描写がありましたが、その時に頼んでいたのがこのストラップの作成であり、それが出来上がったから携帯に付けていたというわけですね
また、そもそもの話になりますが、実は阿良々木くんがこの頼み事をしたのは事件に関係があったとかそういう意味で頼んだのではなく、単純に勘の鋭い神原の気を逸らす為に、口実として思い付いたことだったと原作では語られています
アニメではカットされていましたが、阿良々木くんが神原に頼み事をする前の会話中に、神原は忍が昔の知り合いと再会することを見抜きそうなワンシーンがありました
その勘の侮れなさから話を逸らす為に、阿良々木くんは咄嗟にストラップの作成を依頼したというわけです
また、この『F・C』についてですが、実はこれは完全なフェイクの暗号でした
そもそも、暗号は貼交帰依が作った張本人であることは間違いないんですが、そう考えるとたしかに『F・C』という暗号を残すのはおかしな話ではありました
『D/V/S』がスーサイドマスターに罪をなすりつける為に作られた偽装工作というのは分かる
でも、『F/C』が神原のファンクラブのことを指すのであれば、それは自分の次の標的は神原だと捜査陣側に自ら伝えていることになり、犯行をしやすくするどころか、しにくくしている
もしも、別のターゲットがいてそちらに目を向けさせたかったという意味であれば、偽装として成功していますが、実際はそうではなかったですよね
そう考えると、フェイクとして作った暗号が期せずして自らの首を絞めてしまい、捕まってしまったというわけですね
厳密に言ってしまうと、「存在しないフェイク」というのは原作にあるのでその通りではあるんですが、その後の部分に関しては個人的な考察になるので、実際のところはどういう意図があって貼交があの暗号を残したのかは定かではありませんが、吸血鬼になりたてで、犯人にもなりたての貼交は、ここでも”間違えていた”というのオチに繋がるのかなと感じた部分になりますね
アニメの続きから原作小説を読みたい方へ(モンスターシーズン編)
今回のエピソードで〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズンは終了しましたが、原作自体はまだまだ続いております!
今回描かれた『忍物語』はモンスターシーズンの第1作目となり、そのモンスターシーズン自体は上下巻合わせて全部で6冊もあるので、まだまだ〈物語〉シリーズを楽しみたい人には是非ともこの後の物語を読んで欲しい!
さらに言えば、そのモンスターシーズンは阿良々木くんが主役の物語のみならず、『撫物語』で大成長を果たした千石撫子が主役の物語も進行していくので読み応えとしても抜群だと思います
なのでここでは『忍物語』含めたモンスターシーズンの各作品のあらすじと読む順番をご紹介していきますが、さっそく読む順番の結論を言うのであれば刊行順で問題ありません
なぜなら、このモンスターシーズンに関しては「刊行順=時系列順」になっているから
なので、ここでは刊行順に『忍物語』を含めたモンスターシーズンのあらすじを紹介していきますので、それを目安に読む順番も含めて参考にして頂ければと思います
〈物語〉シリーズ モンスターシーズン あらすじ紹介
忍物語
”たまには縁も縁もない女子を助けてみるのも乙だろう”
直江津高校の女子生徒が、相次いで失踪する事件が発生した。ミイラ化した状態で発見された少女達の首筋には、特徴的な傷跡があって・・・?大学一年生になった阿良々木暦は、犯人を突き止めるべく走り出す!
青春は、眩しいだけだと思ってた?
- 第一話 しのぶマスタード
宵物語
”まだ探偵ごっこを続ける気かい?”
直江津高校の後輩・日傘星雨がもたらした、小学生女児誘拐事件の『噂』。大学一年生になった阿良々木暦は、八九寺真宵、忍野忍、斧乃木余接とともに調査をはじめるが・・・!
宵闇に、光射すのが青春だ。
- 第二話 まよいスネイル
- 第三話 まよいスネイク
以前解説しましたが、日傘の名前の読み方に関しては「せいう」も「ほしあめ」もどちらも正しい読み方になります
余物語
”斧乃木余接とも、思えば長い付き合いになった”
老倉育に児童虐待の専門家に仕立て上げられた阿良々木暦は、家住准教授から相談を持ち掛けられる。我が子を檻に入れたまま三日も家に帰っていないという。わけあって斧乃木余接と現場に急行した彼が、そこで見たものは。
こんなにも、手に余る怪異になろうとは!
- 第四話 よつぎバディ
- 第五話 よつぎシャドウ
扇物語
”洒落にならない化物でして。吸血鬼さえ、敵ではないほどの”
友人の食飼命日子に彼氏との仲違いを相談された阿良々木暦。自身も戦場ヶ原ひたぎから別れを告げられたばかりだった――謝罪の言葉と共に。騒動は怪異の仕業だと推理した暦は、裏面にして怪異のエキスパート・忍野扇のもとへ向かう。
眩しくて。君と広げる、この世界。
- 第六話 おうぎライト
- 第七話 おうぎフライト
死物語(上)
“儂が見るうぬの有様は、いつでも死に様ばかりじゃ”
デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターに会うため、故国『アセロラ王国(仮)』を目指す忍野忍と阿良々木暦。人間社会が異常事態に陥った中、怪異にのみ感染するウイルスが吸血鬼を死に至らしめていて――?
青春は、きみの隣で生きてこそ。
- 第八話 しのぶスーサイド
こちらは過去に感想記事を書かせて頂いてます
死物語(下)
”おやすみなさい。いい夜と、いい夢を”
専門家の見習いとして、斧乃木余接、貝木泥舟と共に西表島へ向かう千石撫子。敵は蛇遣い・洗人迂路子――全ての元凶にして、臥煙伊豆湖の実の娘である。撫子が挑む”死闘”の結末は――?
ありがとう。また遭う日までが、青春だ。
- 最終話 なでこアラウンド
こちらも同じく感想記事を書いてます
『死物語』刊行記念PV
モンスターシーズンの解説
このモンスターシーズンは阿良々木くんと千石撫子が主役の物語が進行していくというのを語らせて頂きましたが、それぞれが主役のエピソードをまとめるとこんな感じになります
- しのぶマスタード(忍物語)
- まよいスネイル(宵物語)
- よつぎバディ(余物語)
- おうぎライト(扇物語)
- しのぶスーサイド(死物語・上)
- まよいスネイク(宵物語)
- よつぎシャドウ(余物語)
- おうぎフライト(扇物語)
- なでこアラウンド(死物語・下)
各作品のあらすじ紹介やこの部分を見ても分かるように、『忍物語』&『死物語(上)(下)』以外はそれぞれ一冊の本に収録されている形になっています
だからといってめちゃくちゃ分厚い本なのかというとそうではなく、撫子が主役の物語が短編のような描きで進行しているんですよね
なので、「まよいスネイク」「よつぎシャドウ」「おうぎフライト」に関してはページ数自体は多くはないものの、それでもしっかりと物語として進行し、最後の「なでこアラウンド」へと繋がっていくので読み応え自体はしっかりと感じることが出来ます
さらに言うと、かつて「なでこスネイク」で千石撫子を呪った張本人二人が登場もしてくるので、過去作を知っている人にはまた新たな千石撫子の物語を楽しめると思います
まとめ
- ABEMA
- Amazonプライム(レンタル)
- U-NEXT(レンタル)
- dアニメストア(レンタル)
〈物語〉シリーズのオフ&モンスターシーズン最終話『忍物語』の「しのぶマスタード 其ノ陸」の感想&解説でした!
今回は解説多めに語らせて頂きましたが、楽しんで頂けましたでしょうか?
これまでのシリーズ作品でもそうでしたが、原作小説をアニメにするとなるとどうしてもカットしなければならない部分も多く、そのため、ある一ヵ所をカットしてしまうとその繋がりとなる部分もカットしなければならなくなってしまう
今回のエピソードをまとめるにあたって、今回の《解決編》においては一気にその部分が顕著に表れてしまったように感じました
ただ、それでもしっかりと”謎”の部分は明かされていましたし、明言はされていなくても表現としてしっかり描かれてはいたので、言われてみると確かにと感じる部分もあったのかなとは思いましたね
そういった点からも、これまで語らせて頂いた解説などから「そういうことか!」と思って頂き、より〈物語〉シリーズという作品を好きになっていただけたのなら、これまで感想&解説を書かせて頂いた甲斐もあったのかなと感じている今日この頃です
そして、今回で〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズンは最終話を迎えましたが、続報は来なかったですね…
そのことに少し寂しさを感じていますが、諦めが悪いのがアニメオタクの良いところ!
前回の『続・終物語』から今回のオフ&モンスターシーズンが放送されるのに6年待ち続けることが出来たんですから、次の続編の制作を待つなんて余裕です(笑)
また、ABEMAでの配信の方は最終話を迎えましたが、地上波の方はまだ放送中となっているので、もしかしたらそちらの方で最終話を迎えた際に新たな発表があるかもしれませんね
その辺りに僅かな期待を持ちつつ、まだまだ原作が続いている〈物語〉シリーズのアニメ化を心待ちにしていきたいなと思います!
それでは今回はこの辺で!
また会いましょう