どうもウハルです
今回は化物語の第10話『なでこスネイク 其ノ貮』の感想と解説を語っていきます!
『なでこスネイク』篇もこれにて閉幕!
「放送大丈夫なのか!?」と思えるような問題シーンもありましたが、それもまた必要だったと分かる今回のエピソード
この《物語シリーズ》という作品は、見た目だったり会話の面白さで着眼点をずらされたりしますが、そういった描写こそ見るべきところがあるというのが面白いところですね
また、この『なでこスネイク』に関しては、《物語シリーズ》全編通しても異例とも言える、原作とは違う描き方をしたエピソードでもあります
他の作品であれば「原作と違う」というのはよくあることですが、一言一句ですら原作を忠実に描いてきたこの作品に関して言うのであれば、アニメオリジナルの解釈を入れてきたというのは、まさに異例と言っても良いと思います
それが間違いだとは思いませんが、この改変を知った時はかなり驚いた記憶がありましたね
そういった点も踏まえて、化物語の第10話『なでこスネイク 其ノ貮』の感想と解説をしていきたいと思います!
なお今回に関しては、前回の『なでこスネイク 其ノ壹』同様、原作でカットされた部分を多めに紹介しつつ、原作改変において決定的に違う改変部分も紹介していきます
先に言ってしまうと、その改変部分に関しては大きく分けると二つあり、それは今回の話数の最初と最後のパート
改変部分の解説に関しては、『蛇切縄』と『助けるべき相手を間違えるな』にてしていますので、目次から飛んでいただいてもOKです
また、スクロールしても分かるように赤文字で大きめにしてありますので、良かったらそこだけでも読んでみて下さいね!
ちなみに、感想に関しては2023年4月からの再放送をベースにして書かせていただいており、私自身はすでに《物語シリーズ》全編視聴済みの状態で書かせていただいております
そして、『化物語』の感想&解説に関しては「ひたぎクラブ」「まよいマイマイ」「するがモンキー」も書いていますので、興味がある方は是非!
最後に、《物語シリーズ》に関しては、アニメ&原作のまとめ記事も書いています
なので、「続きを知りたい!」や「原作に触れてみたい!」という方は是非参考にしてみて下さいね
化物語 第10話 あらすじ
第10話『なでこスネイク 其ノ貮』
神社で阿良々木暦とすれ違った不審な少女、千石撫子。妹の同級生で、阿良々木とも面識があった。蛇の呪いをかけられた彼女を救うため、忍野メメの力を借りる阿良々木だったが…。
『化物語』西尾維新アニメプロジェクト公式サイトより
原作だとどの範囲?
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ダウンロードすればオフラインで聴き放題だったり、《物語シリーズ》作品に関しては出演キャストが朗読してくれたりと、好きな時に好きな場所で好きな声を聞きながら作品を楽しむことが出来ます
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化物語 第10話『なでこスネイク 其ノ貮』感想&解説
蛇切縄
「蛇切縄(じゃぎりなわ)」
阿良々木くんから話を聞いた忍野は、そう答えました
そして、この怪異には様々な呼び方がありますが、その内の一つに”くちなわ”というのもあることを話します
”くちなわ”という単語で蛇ということが分かった阿良々木くんは、忍野に蛇切縄という怪異について尋ねます
すると忍野は、蛇切縄というのは人の悪意によって遣わされた怪異であるということを話し、阿良々木くんはそれに納得します
なぜなら、千石が蛇切縄に憑かれてしまった原因というのは色恋沙汰が原因だったと阿良々木くんは忍野の元に来る前に聞いていたからです
千石のことを好きな男子が告白し、その告白を断ったものの、告白をしてきた男子のことが好きだった女子に逆恨みされてしまった
そして、呪いを掛けられたことを知った千石は、本屋で『蛇の呪い全集』という本を参考に、蛇殺しを始めたという話でした
そもそも、「蛇の呪いを解くのに蛇殺しが有効なのか?」と感じた阿良々木くんでしたが、忍野曰く、「蛇切縄の解き方としては正法である」とのこと
ただ、千石の場合、蛇をぶつ切りにし始めてから呪いが悪化するという結果になっていますが、それは「手順が間違っていたからだ」と忍野は話します
そして、さらに言えば今回は運も悪かった
伝説の吸血鬼である忍がこの町に来たことでエアポケットの吹き溜まりとなっており、”よくないもの”が集まってきていたあの神社で呪いを解こうとしてしまった結果、本来は発動さえしなかった呪いが発動してしまった
そういった運と場所の悪さが今回の経緯へと至ってしまった話しつつ、加えて今回の蛇切縄への対処法としてお守りを阿良々木くんに渡した後、忍野は阿良々木くんに念押しするように一つの言葉を伝えます
”人を呪わば穴二つ”
よく聞く言葉ではあるものの、誰でも助けてしまう阿良々木くんにはこの言葉をよく憶えておいて欲しいと忍野は伝えます
基本的に放浪生活をしている忍野は、いつこの町を去ってもおかしくはないし、そうなったらもう相談に乗ってあげる事も出来ない
誰かを助けるために意図的に怪異に関わろうとする阿良々木くんに対して、忍野は改めてこの言葉を伝えておきました
その言葉の意味するところを理解した阿良々木くんですが、それと同時に、急に忍野がいなくなった時の話をし出したことに戸惑ってしまします
ただ、忍野はそれを気にすることもなく、「大人だから挨拶なしで突然消えたりしないさ」と伝え、最後にもう一つ阿良々木くんに大切なことを伝えます
阿良々木くんは、忍ちゃんを見捨てればいつだって、完全な人間に戻れるんだ。僕としては、それも、忘れないで欲しいな
感想&解説
忍野が『蛇切縄』の説明をするこのパートですが……
原作改変の点として、大きな二つの内の一つがここですね
基本的な説明内容ややり取りに関しては改変は無いんですが、原作だと忍野が説明している部分を、アニメだと阿良々木くんが説明しているというのがかなり大きな改変となっています
この部分に関しては阿良々木暦役の神谷浩史さんもかなり驚いたと「あとがたり」で語られていましたね(配信版の「あとがたり」には未収録)
また、原作だと忍野の解説や阿良々木くんとのやり取りが1つの章でまとめられていたものが、分割され、各章の合間で描かれている形になっています
この演出意図に関しては定かにはなっていませんが、少なくとも伝わりやすさという点に関してはアニメの方が良かったのかなと感じていたりするんですよね
確かに、そのままの流れで忍野の説明を聞いても伝わるとは思いますが、各シーンの直前にそれにまつわる様な解説の数々を挟むことで、阿良々木くんや神原の見解と忍野の見解のシンクロ度が増している気がしました
あとは新鮮味ですかねw
話数跨ぎで解説があるよりは、1話にまとまっている方が集中して見やすい気がします(笑)
ちなみにですが、これは《物語シリーズ》をこれから見るという方への解説ですが、ここで語られた”呪い(まじない)”ですが、それを流行らせた元凶は『偽物語』の「かれんビー」にて登場します
その男の名前は貝木泥舟(かいき でいしゅう)
「不吉」な男であり、金を大事にする詐欺師なんですが、この男は今回の千石の一件だけじゃなく、戦場ヶ原ひたぎとも深い関りのある男となっているので、『化物語』を見終わった後は、『偽物語』を是非見てみて欲しいですね
《物語シリーズ》において結構人気キャラだったりもするので(笑)
そして、アニメではカットされていますが、忍野が神原のことを「百合っ子ちゃん」と言うようになったのは、この蛇切縄の説明をする時になります
忍野は戦場ヶ原を「ツンデレちゃん」、羽川を「委員長ちゃん」、八九寺を「迷子ちゃん」などそのキャラの特徴に「ちゃん」付けをして呼んでいます
当然、神原も同じように「百合っ子ちゃん」と呼ばれるようになるんですが、実は最初は「百合っ子ちゃん」ではなく「えろっ子ちゃん」だったんですよね(笑)
そこから何故「百合っ子ちゃん」になったかと言うのは、阿良々木くんが止めたから
その呼称は的を射ているとも阿良々木くんは感じていましたが、神原も女の子なので「えろっ子ちゃん」はマズかろうと「百合っ子ちゃん」を提案して、忍野がそれを受け入れたので呼び方が変わったという経緯がありました
千石が告白を断った理由
神原と千石が待つ家に帰った阿良々木くんは、忍野から貰ったお守りで千石の呪いを解くことが出来ると伝え、その儀式をするためには北白蛇神社でしなければならず、今晩にでもその儀式を行いたいということも伝えます
それを聞いた千石は了承し、一晩家を空けなければならない為、親には友達の家でお泊り会をすると言っておくと話します
阿良々木くんはその儀式の準備のために千石を部屋に残して、神原と共に物置へと向かいます
二人きりになったところで、阿良々木くんは改めて神原に忍野から聞いた蛇切縄についての説明をしました
- 千石の呪いはすぐにでも対処しなければならない状態になっており、鱗の痕が顔まで来てしまえば命が危ない状況
- 鱗の痕は蛇に締め付けられている証拠でもあり、それは当然、痛みも伴っているため、千石はその痛みを我慢している
- 千石の呪いが発動したのは手順を間違えたのと運が悪かった
- 呪いを解く上で、北白蛇神社は蛇切縄の存在を際立たせるから、場所として都合がいい
一通りの説明と準備を終えた阿良々木くん達は、徒歩で北白蛇神社に向かって行きますが、その道中、阿良々木くんは千石が蛇に締め付けられていることで生じている痛みを我慢していることについて身を案じ、千石は自分を気遣ってくれたことに対して、昔と変わらない優しい「暦お兄ちゃん」であることに安心します
そして北白蛇神社がある山へと辿り着き、その山道を上っている最中、阿良々木くんはもう一つ気になっていたことを千石に質問します
それは、千石が男子の告白を断った理由
告白された時は、その男子生徒が女子生徒の想い人だということを知らなかったのであれば断る理由が分からなかった阿良々木くんの質問ですが、その質問に千石は一瞬黙りながらも、「他に好きな人がいるからだよ」と話します
そして千石は、阿良々木くんに小学生の時のことをどれくらい憶えているかと逆に質問します
正直、ほとんど小学生の頃のことを憶えていなかった阿良々木くんですが、千石は月火と遊んでいた事もそうですが、阿良々木くんと遊んでいた事も大切な思い出でよく憶えていると話します
そして千石は一人っ子だったから、「お兄ちゃん」というのは羨ましかったと話すのでした
感想&解説
なんかここのシーンに関しては、話の流れ的に「阿良々木くん察してあげなさいよ!」と思ってしまったりしましたが、基本的に阿良々木くんは自分がヒロインに好かれているというラブコメ展開を嫌っているので、致し方ない部分もありますかね
逆に、そういった展開を考えてしまう私の方がラブコメ展開に毒されているのかもしれませんが…(笑)
あと、意外にスルーされがちな部分ではあるんですけど、阿良々木くんが人前で「月火ちゃん」って言うのってここが初なんですよね
まあ、そうそう妹の名前を言うシーンがないというのもありますが、基本的に戦場ヶ原や羽川の前では「月火」というようにしているので、昔を知っている千石だったからこそ「月火ちゃん」呼びが出てしまったということなんでしょうね
ちなみに原作では、このシーンで「月火ちゃん」呼びは登場しませんが、それこそ執筆している時はまだ『偽物語』が存在していないからなのかもしれませんね(笑)
そして、先程の『蛇切縄』の部分でも語りましたが、ここのシーンで語っている阿良々木くんの説明は、本来、忍野が語っている部分になります
アニメだと、原作での忍野の立ち位置を阿良々木くんで描き、阿良々木くんの立ち位置を神原で描いている形になっています
そしてここでは、解説を一つとカットされていた面白いやり取りを二つ
まず解説ですが、阿良々木くんの帰りを待っていた千石が服を着ていなかったシーンですが、ここはアニメオリジナルです
厳密に言えば、原作にはそういった描写はないというのが正しいですかね
ここ以外にも千石が着替えていたところとか、準備をする為に物置に行った阿良々木くんと神原のシーンとかもアニオリなんですが、ここのシーンでは千石のこの格好に対して、この時のキャラコメを担当していた忍野が見事にツッコんでいて面白いんですよねw
前回のインパクトある格好そのままで待っているということに対して、自分も心の中で「おい」ってツッコんでしまいましたが、これは別に自分だけじゃなかったみたいです(笑)
ただ、その格好の理由もちゃんとキャラコメでは語られているので、そこも併せて紹介していきますね
メ「で、ここからAパートが始まるわけだけども、視聴者の皆さんは全員、同じタイミング、同じ場面で、まったく同じことを突っ込んだとは思うけれども、まあでもそれを総括する意味を込めて、副音声では、僕が、代表で突っ込みを入れさせてもらおうかな」
「なでこスネイク 其ノ貮」キャラクターコメンタリーより
千「突っ込み?」
メ「きみにだよ。まあまあまあ、残念ながら阿良々木くんほど華麗には突っ込めないだろうけれど、そこは我慢してくれということでね。んじゃ、お嬢ちゃん。号令、シクヨロ」
千「せーの」
メ「服着ろよ」
千「しまった。突っ込みを入れられるのに、自分で号令をかけちゃった」
メ「なんで暦お兄ちゃんの帰りを、ブルマー手ブラなままで待ってるんだよ、お嬢ちゃん」
千「上着を羽織ってるよ」
メ「羽織っていることによって、また別の味わいが出てしまっているじゃないか」
千「もし、暦お兄ちゃんが何らかの解決策を持って帰ってきてくれた場合、また脱がなくちゃいけないかもしれないでしょう。その手間を省いたんだよ」
メ「読みきれないことをする子だねえ」
いやいやいや、だったらせめて羽織ってる上着の前を締めれば良くないかな?w
まあ、もしかしたら改めて千石の鱗の痕を見せるための演出だったのかもしれませんけど、やっぱりこの格好はインパクト強いな(笑)
次に面白かった勿体ない原作カットを紹介
一つ目は忍野の説明を聞いた阿良々木くんが早々に家に帰った時の一幕です
かなり真面目なシーンが続く忍野の説明シーンですが、原作だとこの説明の合間に、阿良々木くんは神原が千石に手を出していないかと気になっている描写があります
その為、寄り道せずにすぐに家に帰り、千石だけじゃなく妹達にも手を出さなかった神原を褒めるところがあるんですが、ここがまた面白いのでご紹介しておきます
果たして、神原は、ずっと同じ部屋にいた千石にも、帰ってきていた二人の妹達にも、手を出してはいなかった。
化物語(下)「なでこスネイク」
阿「よく頑張ったぞ、神原!よく我慢した!」
神「うん……阿良々木先輩のその真剣な褒め言葉を聞いて、初めて、私は今まで、ちょっと阿良々木先輩の前でふざけすぎたのかもしれないと、後悔しているぞ……」
落ち込み気味の神原だった。
口説くどころか、ちゃんと千石の話し相手になってあげていたらしい。むしろ引っ込み思案な千石の方から、
千「暦お兄ちゃん。神原さんは優しかったよ」
と、見かねたフォローがあったくらいだ。
千「ブルマー、貸してくれたし」
阿「それは優しさの基準にはならない」
千石に対する記念すべき初突っ込みだった。
阿良々木くんの神原に対する信用度はエロ方面のほうが強かったみたいですね(笑)
まあ、神原も後悔していますが、ここまで散々ふざけまくってはいたので、しょうがないと言えばしょうがないですがw
でも、神原って阿良々木くんの前以外ではかなりちゃんとしているので、もう少し阿良々木くんの前でもその姿を見せてあげても良いのかもしれませんね
二つ目は、阿良々木くんが千石に告白を断った理由を聞いた時の一幕
アニメだと、阿良々木くんが質問した後、千石は少し黙ってから「他に好きな人がいるから」と答えていますが、原作だと質問の後に神原とのやり取りがありました
実は、傍から見ても仲良しに見えている阿良々木くんと神原の姿を見ていた千石は二人が付き合っていると思っていたんですが、ここで付き合っていないという事実を知ります
そこから阿良々木くんが神原にちゃんと否定するように説明を求めるやり取りがあるんですが、そこも面白かったので紹介していきますね
阿「神原。お前からもちゃんと否定してやれ」
化物語(下)「なでこスネイク」より
神「うむ。確かに付き合ってはいない」
千石に対して、神原は説明口調で言う。
神「私と阿良々木先輩はあくまで仲良く遊んでいるだけだ――まあつまり、遊びの関係だな」
阿「その言い方には大いなる語弊があるな!」
神「何かあっても事故で済むほど仲がいい」
阿「あるのは語弊じゃなくて悪意だったのか!?お前なんか大嫌いだよ!」
神「あ。今のはちょっと傷ついたぞ」
阿「う……あ、ごめん。大好きです」
僕には何を言われても嬉しいとか言っていた癖に、扱いの難しい奴だ。
というかここで謝る僕が弱い。
結構こういう「付き合ってる」からの「遊びの関係」ネタは色々なところでも見ますが、綺麗にキレのあるツッコミを入れたり、すぐに謝っちゃう阿良々木くんが凄く面白いw
阿良々木くんのこの弱さは、単純に可愛い神原に対しての弱さなんでしょうね(笑)
解呪の儀式
山道を上り、北白蛇神社に辿り着いた三人は早速、儀式の準備に取り掛かります
神社の広い場所にビニールシートを広げ、その中央を照らすように四隅に懐中電灯を置き、そしてそのシートの中央には千石撫子と言う配置
問題無く準備が終了しましたが、一つの問題があるとすれば、それは千石撫子の格好
鱗の痕が見えるように肌の見えやすい服を神原にお願いしていた阿良々木くんでしたが、その格好がまさかのスクール水着だとは思ってもいませんでした
それを準備した神原にツッコミを入れつつ、阿良々木くん達は儀式を始めます
シートの中央にいる千石に儀式のやり方を伝え、そのシートから離れていく阿良々木くんに千石はお願いするように言葉を投げかけます
撫子のこと……ちゃんと見ててね
その言葉に「任せとけ」と答える阿良々木くん
千石は阿良々木くんに言われた通り、シートの上でお守りを持ち、祈るようにその場に蹲りました
その時、千石が思い浮かべる一つの思い出
それは千石が小学生の時に阿良々木家に遊びに来た時の一幕
強引に月火に誘われたとはいえ、上級生の自分も一緒に遊んでいることに対して気を遣っていた阿良々木くんは千石に「やりにくいだろ?」とそのまま伝えました
ただ、千石はそんなことは全く思っておらず、優しくていい人だと話しました
さらに、そんな兄がいる月火を羨ましいと思っていることも伝えます
そして千石は、意を決するように阿良々木くんに一つのお願いをしました
あの……お兄さんのこと、「暦お兄ちゃん」って……呼んでいいですか?
そんな過去を思い出している中、千石の体に変化が訪れます
その変化と言うのは、千石の体に巻き付いていた鱗の痕が少しずつ消えていっているということ
その変化を見ていた阿良々木くんも神原も安心し、そして神原は「今回の件で忍野さんに大きな貸しを作ってしまったのはないか?」と質問します
しかし、阿良々木くんは「今回の件に関しては貸しはない」ということを話します
先日、忍野に依頼されて北白蛇神社にお札を貼りに来ましたが、それは未然に妖怪大戦争を防ぐほどの大仕事で、阿良々木くんの借金自体もそれで帳消しになるどころか、お釣りがくるほどの大事だったらしい
そのお釣りとして、今回のお守りを貰っているので貸しはないとのことでした
そんな話をしつつも、まだ千石の体からは完全に鱗の痕が消えておらず、気長に待つしかないとは思いつつも、千石の体調を心配した神原は「一気に取り除けないものか?」と質問します
それに対して阿良々木くんは、忍野から聞いたところによると、阿良々木くんや神原であれば蛇切縄に触れて引き剝がすことは可能だが、そうすると今度は引き剥がそうとする相手に襲い掛かってくるし、それを回避できたとしても、呪いを掛けた張本人の元に返るからやめた方が良いとのことなので、それを伝えました
その話を聞いた神原でしたが、その後すぐに「阿良々木先輩!」と大きな声を張り上げることになりました
その声に驚いた阿良々木くんが千石の方を見てみると、何やら様子がおかしい
びくびくと痙攣しつつ、大きく口を開けて倒れている千石の姿を見た阿良々木くんは、千石の体を見て自身の間違いに気付きました
鱗の痕は儀式によって確かに消えていましたが、消えていたのは半分だけ
残りの半分はくっきりと残り、さらにそれが千石の体を締め付けている
つまり、千石の体には一匹ではなく二匹の蛇が巻き付いていたということにここで気が付きます
阿良々木くんは神原に離れるように伝え、自分はすぐさま倒れている千石の元へと駆けよっていくのでした
感想&解説
まさか蛇が二匹いようとは!
これに関しては、本当に気が付きませんでした……
「見えない怪異」だったり、呪いを掛けた相手が女子生徒という情報から完全に一匹だと思い込まされていた点ではありましたが、これは中々上手い描写でもありました
そもそも【呪う】と言う行為を二人が同じ人間に行っているとは考えてもいませんでしたからね
ある種、人間の闇みたいなものを見せつけられた気分にもなりました
ただ、これはヒント自体はしっかりと描かれていたりもします
これは原作での語りになりますが、阿良々木くんはそのヒントがあったことについて、しっかりと気付いているんですよね
気付くべきヒントはあった。
化物語(下)「なでこスネイク」より
両腕と、首から上以外に、びっちりとまんべんなく、鱗痕はあったのだ。爪先から、むこうずねからふくらはぎまで――脚は二本ある。一匹の蛇が、両脚にまんべんなく巻きつくことなんて――構造的に、不可能に決まっている。たとえば、蛇が一匹なら、内腿に鱗痕が残るわけがない。
それぞれの脚の爪先から。
一匹ずつ――蛇切縄は巻き憑いていたのだ
確かに言われてみれば、千石の体には両腕両脚ともにびっちりと鱗痕は付いていました
これに関しては原作のみならず、アニメでもしっかりと描かれていた点
つまり、誰にでも気づくヒント自体はしっかりと提示されていたんですよね
これ、アニメなり原作なりを見た段階ですぐに気付いた人ってどれくらいいるんでしょうね?
あのブルマ姿に気を取られず、そこに思い至った強者がどれほどいたのか少し気になったりもしますね
そして、ここがまた「なでこスネイク」に於ける問題シーンその二!
ブルマに続き、まさかのスクール水着が披露されるという絵面がもの凄いことに(笑)
このスクール水着姿の千石を映すカメラアングルも、かなり絶妙な感じにもなっているので、制作スタッフさんもかなり力を入れたシーンなんじゃないですかねw
そしてここでは解説を四つさせて頂きます
少し多いですがご了承を
まず解説の一つ目ですが、阿良々木くんが忍野からお守りを貰ったことを「妖怪大戦争を未然に防いだ対価のおつり」という話をしていましたが、実はもう一つ明確な理由がありました
それは、今回の千石は完全に被害者であると言うこと
原作だと、いつもは勿体ぶる忍野が、蛇切縄の対処法をあっさりと教えてくれたことに対して阿良々木くんが絡む部分があるんですが、忍野が今まですぐに対処法を教えなかったのは意地悪をしていたわけじゃなく、単に全員が自分から怪異に首を突っ込んでいたからということを話しています
言うなら、きみたちは全員、加害者側の人間だった。意図があろうがなかろうが、きみたちは怪異と共犯関係にあったんだ。手を汚した人間が足を洗うには、それなりの手順が必要――なんだよ。今回のケースは違うじゃないか。千石撫子は明らかに、ただの可哀想な被害者だ。何も悪くない。蛇切縄をけしかけられる理由すらも薄弱だ。怪異にはそれに相応しい理由がある――しかしこの場合の理由は、お嬢ちゃんには全くないね。蛇を十匹かい?殺しちゃったけれど、それだって防衛策だ。運が悪かっただけ、ついてなかっただけ――さ。誰かの悪意によって狙われた被害者にまで、自己責任を求めるほど、僕は狂っちゃいない。そういう人は、ちゃんと救ってあげなくちゃ。
化物語(下)「なでこスネイク」より
これを知っておくと、今回の千石の件もそうですが、今までの忍野が怪異の対処法を教える手順をしっかりと踏みながら行っていたというのが分かるんですよね
被害者加害者というのもありますが、自分から首を突っ込んだ人間に対して安易に対処法を教えてしまえば、ことの重大さに気付きにくいし、また怪異に引き付けられてしまうかもしれない
それこそしっかりと手順を踏んでおかないと、怪異だけじゃなく本人にも効果がないということなんでしょうね
次に解説の二つ目ですが、儀式の際に描かれていた千石の過去回想ですが、これは全てアニメオリジナルシーンになります
千石が「暦お兄ちゃん」と呼ぶキッカケを描いたこの回想は原作では一切描かれていないんですが、何の違和感もないくらい、内容がしっかりしていました
そして、これはアニメコンプリートガイドブックでも書かれていることではあるんですが、このシーンで声があるのは千石のセリフのみ
阿良々木くんのセリフはテロップで描かれていることによって、千石の独白のように見える演出となっていて情緒的なシーンとなっていますね
そして解説の三つ目ですが、千石が蛇に襲われていた時に大きく口を開けて倒れていましたが、これは蛇切縄が最初に登場する『蛇呪集』での記述と一致させている描写になります
基本的に《物語シリーズ》に登場する怪異というのは西尾維新先生の創作になるので、ここで登場した本自体も存在しておらず、この本もまた創作になります
作中では忍野が蛇切縄の説明をする際に、『蛇呪集』というのは「蛇についての怪異だけを集めた異本」であり、その本では「蛇切縄」は絵付きで登場していると話しています
「一人の男が大蛇に巻きつかれている絵だよ。尻尾の方は荒縄のデザインになっていて、蛇の頭は――男の口の中に這入っている。男の顎は、限界まで開かれちゃって、まるで蛇――って感じの絵。蛇は鶏くらい、丸呑みにしちゃうからねえ」
化物語(下)「なでこスネイク」より
蛇切縄という怪異は、悪意で遣わされる怪異であると同時に、人を殺す怪異でもあります
口から入り、相手を殺そうとしているこの描写もまた、中々生々しいものがありました
最後に解説の四つ目ですが、これは少しネタっぽいです(笑)
というのも、千石が蛇切縄に襲われ倒れた際に、スクール水着の肩紐が片方落ちていたんですが、これ実は神原の教えで千石がわざとやったというクダリがキャラコメで語られてるんですよねw
メ「関係ないけどさ、さっき意識をなくしてたお嬢ちゃん。スクール水着の肩紐、ずれてたんだけど、あれ、気絶するときじゃなくて、その前からもうああなってたよね」
「なでこスネイク 其ノ貮」キャラクターコメンタリーより
千「なってました」
メ「なんで」
千「そうするのがスク水道の作法だと、師範に教わりました」
メ「神原師範はそんなことを言っていたのかい」
千「師範クラスになると、両方の肩紐を下すそうです」
神原師範の匠の技すげぇぇ……って、ならないから逆に凄いw
なんか千石は神原の教えを忠実に守り過ぎてる気もしますね(笑)
一応、原作者が書いたキャラコメ且つ、キャラ自身の語り&千石自身がふざけてる感じがしなかったので解説として挙げましたが、状況が状況なだけに未だに「冗談かな?」と思っていたりもしている裏話ですね
助けるべき相手を間違えるな
蛇切縄に襲われ、気絶する千石の元へと駆けよる阿良々木くん
千石に告白した男子生徒のことが好きだった女子だけではなく、千石にフラれた男子生徒も呪いを掛けていたと感じたものの、もう遅い
千石を助けるために、見えないながらも触れるはずの蛇切縄を、千石の首を締め上げている鱗痕を頼りに両手で掴み、そのまま引っ張り上げます
両の手の平には嫌な感触があるものの、それは掴んでいることに成功している証
しかし、引っ張り上げた瞬間、阿良々木くんの右腕がひしゃげ、二つの小さな穴が開きました
腕を蛇に噛みつかれた阿良々木くんは、あまりの痛みに悲鳴をあげます
その痛みの中、千石のほうを見てみると何やら不規則に動いている
蛇の姿が見えないながらも、千石の動きから蛇が千石から離れているのが分かりました
つまりそれは、次は阿良々木くんに襲い掛かってくる前触れ
案の定、突然左足に二つの穴が開き、腕と同じくひしゃげる音
阿良々木くんは、そこにいるであろう蛇を蹴りつけ、脚から蛇を離します
離すことには成功したものの、見えない蛇を探すのは至難の業……でしたが、場所が阿良々木くんに味方していました
確かに姿を見ることは出来ませんが、生い茂った草の動きや土煙から蛇が移動している痕跡が分かる
勝機が見えたかのように思えた阿良々木くんですが、ここまでに負った傷が大きすぎて意識が朦朧としてきます
今も多少の吸血鬼性を持っている阿良々木くんなので、傷の治りは早いはずなんですが、今回は相手が悪かった
吸血鬼は毒に弱く、全盛期の忍ならまだしも、今の阿良々木くんの吸血鬼性では、毒を治すどころか、傷を治すことすら出来ませんでした
ざざざざざざ
動くことも出来ない阿良々木くんに向かって蛇が近づいてくる中、「阿良々木先輩、許せ!」と神原が阿良々木くんを押し倒すように横に吹き飛ばします
そのまま阿良々木くんに覆いかぶさり、上から抑えつけるような状態で神原は、蛇は臆病であり、こちらから攻撃しなければやり過ごせると話します
しかし、それでは蛇が呪いを掛けた男子生徒の元に返ってしまうと感じた阿良々木くんは、そのことを神原に伝えようとしますが、それは神原の悲痛の叫びによって全てを言うことが出来ませんでした
阿良々木先輩!頼むから――助けるべき相手を、間違えないでくれ
その言葉を聞いた阿良々木くんが抵抗するのを止めると、蛇はそのままどこかへと行ってしまいました
その様子を見て、神原は阿良々木くんから離れます
阿良々木くんは正しい判断をした神原に謝罪をし、そのまま立ち上がりながら蛇の還っていった方へと目を向けていました
怪異もどきの自分が怪異そのものに勝てるわけがないということは分かっていたものの、諦めきることが出来なかった
改めて自身の薄さと弱さを自覚した阿良々木くんに、体から鱗の痕が消え去った千石が感謝の言葉を述べます
「暦お兄ちゃん。助けてくれて、ありがとう」
その言葉を聞いた阿良々木くんは、微笑みながらも、自分にそんな言葉を貰う資格はないと心の中で感じていました
やめてくれ。千石。お願いだから。
ありがとうなんて、言わないでくれ。お前からそんなことを言ってもらう資格はない。
僕は、あろうことか――お前を呪った人間までも、助けようとしていたのだから。
感想&解説
『なでこスネイク』篇、閉幕!
千石を救うことは出来たものの、後味としてはスッキリしない展開だったというのが正直なところです
ただそれは、全員が救われるハッピーエンドを求めてしまっているが故なのかなと自分でも感じている部分ではありますね
それこそヒーローのように、誰もが幸せになれるような結末を作り出すというのも一つの『物語』だとは思いますが、阿良々木くんは主人公であってもヒーローではない
彼自身出来る事は限られているし、それこそ神原が言ったように「助けるべき相手を間違えないこと」と言うのが、人に出来る責任の取り方なのかもしれません
そして、このラストシーンが原作改変として大きく違う点の二つ目
また、最大の相違点になります
アニメでは阿良々木くんは、二匹のうちの一匹が「男子学生の方に返る」と思い込んでいますが、そもそも原作では「どちらに返ったかを知るのは蛇足である」と語って〆ています
人を呪わば穴二つ。
化物語(下)「なでこスネイク」より
なんて、そんなの、全部、勝手な推測だ。確たる証拠は何もないし、たとえそうだったとしても、その蛇切縄が、女の子と男の子、どちらに帰ったのか、返った呪いが一体どうなったのかまでは、どうしたって僕にはわからないことである。
千石も知らなくていいことだ。
それはどう考えても、蛇足だろう。
アニメオリジナルの回想シーンだったり、大幅な原作カットだけでもこの『化物語』という作品に於いてはかなり珍しいのに、阿良々木くんのアニメオリジナルの心理描写となると異例といってもいいくらいの改変シーンです
この改変の意図に関しては、特に言及されていないので詳細は分かりません
ただ、この解釈自体が間違っているとは思いませんし、アニメでここが描かれたからと言って、原作内に何か影響があったかというと、それはありませんでしたね
これはある意味、阿良々木くんが言う所の”蛇足”になってしまうかもしれませんが、実はこの時に千石を呪った二人は原作小説のモンスターシーズンの一つである『扇物語』の「おうぎフライト」にて登場してきます
その際に登場した時の二人の姿は、共に呪い返しにあった姿となっており、どちらの元にあの時の蛇が返ったかが分からない状態になってるんですよね
原作未読だと「1匹は消したのに2人とも呪い返しっておかしくない?」って思うかもしれませんが、実はこの二人、千石以外にも呪いを掛けていました
その呪いが二人とも自分の元に返ってきていたので、千石を呪った事実は認めていても、どちらにその呪いが返っていったのかまでは分からないというのがその後の顛末です
これも少しモヤッとする顛末ではありますが、それこそ、それを知ろうとすることは無意味であり、蛇足なんでしょうね
ちなみにですが、今回の『なでこスネイク』ではラストで火憐&月火に叩き起こされるシーンがありませんでしたが、原作ではちゃんと起こされている描写があります
あの大怪我した状態から家に帰って、二人に何も言われないのかと思うかもしれませんが、そこは今回の儀式が終わった後、忍に血を吸ってもらって回復しているので問題ありません
千石が親に嘘をついていた都合もあって、学習塾跡に一晩泊まり、そこで忍に血を吸ってもらい、回復力を底上げして、日常生活に支障がない程度には治していたという訳ですね
まとめ
化物語の第10話『なでこスネイク 其ノ貮』の感想と解説でした!
ここまで読んで頂いた方且つ、アニメでしか『化物語』を知らなかった方の中には「こんなに違ったの?」と思った方もいるかもしれません
ただ、逆を言ってしまえば、それだけ違っていても、このエピソードを違和感なく楽しむことが出来たという証明でもある様な気がしています
実際、自分自身、オチに関してはスッキリしない部分はありながらも、話としては十分楽しんで見ることが出来ましたし、納得できるラストだとも感じています
そして、原作を読んで改めて『化物語』という作品を楽しむことが出来たので、ある意味、このエピソードは《一度で二度美味しいエピソード》とも言えるのかもしれませんね
現状、紙ベースの本だけではなく、電子書籍やオーディブルなどと言ったコンテンツでも『化物語』という作品を楽しむことも出来るので、一人のファンとして、この機会に是非原作にも触れていただきたいなと思っている今日この頃です
そして、次からがいよいよ『化物語』のファイナルエピソードである「つばさキャット」篇に突入です!!
校門前で、この間のお礼に来たという千石撫子とマニアックな会話を繰り広げる阿良々木暦。そこに、羽川翼が通りかかるが、彼女は急に頭痛を訴える。
『化物語』西尾維新アニメプロジェクト公式サイトより
満を持して、委員長の中の委員長こと羽川翼メインのエピソード!
ここまで語られてきたゴールデンウィークの出来事が語られ、9話で見せた頭痛の意味も明かされるエピソードとなっており、内容の濃さと面白さは折り紙付きです!!
また、TV放映2話&ネット配信3話という変わった放送形態でありながらも大反響を呼び、さらに”伝説の神回”とも呼べる話数が登場するのも、この「つばさキャット」篇になりますので、是非期待しておいてくださいね!
それでは今回はこの辺で!
また会いましょう