どうもウハルです!
今回は化物語の第5話『まよいマイマイ 其ノ参』の感想と解説を語っていきます!
ついに《物語シリーズ》屈指の神回が降臨しました!
迷子の女の子・八九寺真宵の正体が明かされ、そして描かれる感動の結末
シャフトが見せてくれたその感動的なシーンの描き方は、見るものの心を鷲掴みにし、記憶に残るシーンへと昇華され、原作を越えたと言ってもいいほどに最高の見せ方でした
そして、これまでしっかりと描かれながらも、巧みな言い回しで隠され続けてきた伏線の数々が回収され、「そういうことか!」と納得させられっぱなしのエピソードでもありましたね
ホント、「まよいマイマイ」を最後まで見ると違う視点でもう一度見直したくなる(笑)
さらにラストの締め方も凄く良かったりと最後の一秒まで楽しめるんだから、そりゃあ”神回”と言いたくもなりますよね!
ということで、今回は化物語の第5話『まよいマイマイ 其ノ参』の感想と解説をしていきたいと思います
ちなみに、感想に関しては2023年4月からの再放送をベースにして書かせていただいており、私自身はすでに《物語シリーズ》全編視聴済みの状態で書かせていただいております
なお、今回も『まよいマイマイ 其ノ参』以降のネタバレは無しで書いていきますので、《物語シリーズ》の初見さんはご安心ください
また、解説に関しては原作や関連書籍などから「より『化物語』を楽しめそうだ」と感じたものをチョイスして解説していきます
その都合上と言うのも変ですが、今回の「まよいマイマイ 其ノ参」に関しては、解説や小ネタよりも、アニメでカットされた掛け合いを多めに紹介していますので、楽しんで頂ければ幸いです
そして、前回の『まよいマイマイ 其ノ貮』に関しても感想と解説を語っていますので興味がある方は是非!
最後に、《物語シリーズ》に関しては、アニメ&原作のまとめ記事も書いています
なので、「続きを知りたい!」や「原作に触れてみたい!」という方は是非参考にしてみて下さいね
化物語 第5話 あらすじ
第5話『まよいマイマイ 其ノ参』
八九寺真宵が、母親の家にたどり着けない理由。それは、やはり怪異と関係があった。忍野メメからアドバイスを得た戦場ヶ原ひたぎは、阿良々木暦に驚くべき事実を告げる。
『化物語』西尾維新アニメプロジェクト公式サイトより
原作だとどの範囲?
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化物語 第5話『まよいマイマイ 其ノ参』感想&解説
母親への想い
忍野との電話も終わり、戦場ヶ原が戻ってくるのを浪白公園で待つ阿良々木くんと八九寺
待っている間、阿良々木くんはふとした疑問を八九寺にぶつけます
その疑問と言うのは「母親にはそこまでして会いたいものなのか?」ということ
この質問の意図としては、八九寺が蝸牛に行き逢った原因を知るという意味合いがありましたが、八九寺の答えとしては「子供が母親に会いたいと思うのは当然のことだと思う」という別段、怪異に行き逢ってしまうような特別な答えではありませんでした
そして八九寺は、阿良々木くんの口ぶりからあまり両親のことを好いていない雰囲気を感じ、そのまま阿良々木くんに質問します
それに対して、阿良々木くん自身は両親を好いていないという訳ではなく、ただ、高校に入学してから落ちこぼれてしまったことに気まずさのようなものを感じているから気を遣ってしまうだけだと話します
兄ちゃんは、そんなことだから――
「そんなことだから、僕は――いつまでたっても大人になれない、んだってさ。いつまでも大人になれない、子供のままだ――そうだ」
身体ばかりが大きくなって、中身がそれについて来ていないと言われている妹の言葉は、思っている以上に阿良々木くんの心に刺さっていました
そしてそこから話が広がり、阿良々木くんはつい口を滑らせて、先程のもみ合いの最中に、八九寺の胸を触ってしまったことを言ってしまいます
それを聞いた八九寺は激怒
八九寺は犬のようにガウガウと噛みつこうとし、阿良々木くんも最初は抑え込んでいたものの、ついに堪忍袋の緒が切れて取っ組み合いの喧嘩が始まりました
小学生女子を相手に我を忘れ、強引なセクハラ行為を力任せに迫る男子高校生の姿がそこにはあったが、それだけは僕ではないと信じたい。
……五分後
冷静になった二人は、互いに謝罪し和解
その後、今までの取っ組み合いの感じから阿良々木くんは八九寺が喧嘩慣れしていることに気付きました
八九寺自身は「学校ではよくあること」と答えつつ、阿良々木くんも喧嘩慣れしているように感じたと話します
阿良々木くんはこういった取っ組み合いなら妹たちと頻繁に行っているし、いつもならどっちかが謝って終わりになるものの、今回の妹たちとの喧嘩は口論
自分が謝らなければならないのは分かってはいるんですが、それでも憂鬱な気持ちになってしまうのも正直なところでした
それを素直に伝えると、八九寺も喧嘩ばかりしていた両親のことについて話し始めました
最初は仲のいい夫婦だったらしいけれど八九寺自身は口論ばかりしている二人しか見たことがないこと
喧嘩ばかりしていたし離婚してしまったけれど二人のことが大好きであるということ
そして、母親に会えなくなってしまったことで母親のことを忘れてしまい、大好きではなくなってしまうんじゃないかと不安になるということ
そこまで話をしたところで唐突に阿良々木くんは声を掛けられます
その声はの主は忍野の元に行っていた戦場ヶ原で、彼女の帰還を知らせる合図なのでした
感想&解説
「まよいマイマイ」の其ノ壹、其ノ貮で度々登場してきた火憐の言葉がここで回収になります
”兄ちゃんはそんなことだから、いつまでたっても大人になれない”
阿良々木くん自身が感じている負い目のようなものだったり、両親に対して感じている気まずさのようなものだったりがありながらも、その問題を後回しにしてきた
きっと心のどこかでどうにかしなければいけないと思っていたんだと思いますが、そこを妹から直接突かれたからこそ、ここまで阿良々木くんの心に刺さったのではないかと思いますね
理屈は分かるし筋は通っているものの、感情が追い付かずに心の整理が付かないから折り合いもつかない
肉体と精神がチグハグであり、子供と大人の境目とも言える高校生らしい葛藤は阿良々木くんの年相応の人間らしさを感じられるワンシーンだったりします
そして、ここのシーンでは小ネタを一つと解説を交えた原作の内容に触れていきます
まず小ネタを紹介させて頂くと、胸を触られた八九寺が激怒して阿良々木くんと取っ組み合いの喧嘩をするシーンがありましたが、実はこのシーンでは阿良々木暦を演じている神谷浩史さんのアドリブセリフが混じっています
アドリブ箇所としては阿良々木くんが「小学生女子を相手に~」のシーンで、このナレーション自体は原作通りなんですが、その裏で取っ組み合いをしながら阿良々木くんが言っている言葉はアドリブです
そのセリフとしてはこんな感じ
揉ませろ揉ませろ!1回揉まれてるんだ。2回も3回も一緒だろうが!
『化物語』アニメコンプリートガイドブック「まよいマイマイ」より一部引用
セリフとしては大分ひどいですが、阿良々木くんなら普通に言ってそうだなとも思えるセリフで笑っちゃいましたよねw
次に、解説を交えた原作の話ですが、これは奇しくもアニメではカットされてしまった面白い阿良々木くん&八九寺のやり取り三連発です
少し解説になりますが、この「まよいマイマイ」というエピソードは元々2話構成の予定でしたが、作品の特徴である掛け合いを増やす為に3話構成にしたと言うのは、以前の『まよいマイマイ 其ノ壹』の感想&解説記事の「原作だとどの範囲?」で触れさせてもらいました
その掛け合い部分がかなり多いのがこの其ノ参で描かれている部分で、3話構成にしたからこそ、Aパートで繰り広げられている掛け合いが当初の予定よりも増量されているらしいんですが、それでも足りないくらい面白い掛け合いをするのが阿良々木&八九寺ペア(笑)
そのカットされた箇所と言うのは八九寺が母親のことを忘れてしまうんじゃないかと言った後になります
この後、八九寺が蝸牛に行き逢った原因を考えながら、阿良々木くんは八九寺の顔をじっと見つめるんですが、そこから面白い掛け合いが始まります
天然なのかワザとなのか分からない八九寺のボケに対して、突っ込む阿良々木くんの勇姿をとくと見よ!
まずは一つ目!
八「おや。どうかされましたか阿良々木さん。急にわたしのことを見つめたりされて。そんなことをされると、わたし、照れてしまいます」
『化物語』(上) まよいマイマイより
阿「いや……なんていうか、そのな」
八「私に惚れると、火傷しますよ」
阿「……なに、その、台詞」
無意味に読点の数が増えてしまう。
八「なにって言われましても、ほら、わたしって見ての通りのクールビズですから、この手の格好いい台詞が似合って似合ってしょうがないのです」
阿「それ、クールビューティと言い間違っているのはそりゃすぐにわかるんだけれど、なんていうか、そっから先、いまいちどう突っ込んでいいのか、僕には思い当たらないよ、八九寺。ていうか、お前、クールだって言うなら、火傷するってのはおかしくないか?」
八「む。そうですね。では」
難しい顔をして、言い直す八九寺。
八「わたしに惚れると、低温火傷しますよ」
阿「…………」
八「とても格好悪いですっ!」
阿「しかも、それも別に、クールではないしな」
湯たんぽみたいに温かいって感じ。すげえいい人そう。
そしてそのまま続く流れではありますが、二つ目です!
八「あ、そうです、わかりました。発想を転換すればいいのです。阿良々木さん、こういう場合は、決め台詞をそのままに、クールと言う形容を変えればいいのですよ。クールな女という称号は惜しいですが、この際仕方がありません。背に腹は代えられないという奴です」
『化物語』(上) まよいマイマイより
阿「なるほど。ああ、確かにそうやって形容を変えてしまえば、逆に決め台詞に近づけるからな、セオリーと言ってもいい。連載第二回目の表紙アオリ文に早くも大人気と書くみたいなものか。よし、じゃあ、ものは試しだ、やってみよう。言い換えるのが、クールだから――」
八「ホットな女と名乗りましょう」
阿「ほっとするんだな」
八「いい人そうですーっ!」
さらにそこから間が空いて三つ目!
八「……では、阿良々木さんは、どうしてわたしのことを、情熱的な眼で見つめていたのでしょう」
『化物語』(上) まよいマイマイより
阿「いや、その……え、情熱的?」
八「そんな眼で見られると横隔膜がどきどきします」
阿「しゃっくりじゃん」
難しい振りだった。突っ込み担当としての力量が試されている
基本的には八九寺が言い間違えて、阿良々木くんが突っ込むという流れなんですが、この絶妙な間違え方とその切り返しのテンポ感が本当に面白いですよね(笑)
今回紹介していませんが、これ以外にも大黒柱を大黒天と間違えてその偉大さに突っ込んだり、目から鱗が剝がれると言い間違えて「痛そうだった。というか痛い二人だった」と突っ込んだりとかなり言葉遊びが光っている部分だったりするので、この二人のやり取りが好きな方は原作を十分に楽しめると思いますよ
戦場ヶ原の帰還と明かされる事実
「他の女の匂いがするわね」
本当に唐突に現れた戦場ヶ原に驚きながらも、戦場ヶ原はシャンプーの匂いで誰が来ていたかある程度は分かると話します
その場に残ったシャンプーの匂いから見事に羽川が来ていた事を言い当てたことに驚く阿良々木くんですが、それよりも聞いておかなければならないことがありました
それは、戦場ヶ原が忍野から教えてもらった八九寺を目的地に送り届ける方法
その言葉を受けた戦場ヶ原は、方法を伝えるよりも先に、阿良々木くんに対して謝罪を始めました
その謝罪の意味が全く分からなかった阿良々木くんですが、戦場ヶ原は忍野に言われた言葉を伝えます
正しい事実が一つあったとして――それを二つの違う視点から観察したとき、違う結果が出たとする。そのとき、どちらの視点が正しいかを判断する方法は、本来ない――自分の正しさを証明する方法なんて、この世にはないのだと。
でも、だからって、自分が間違っていると決めつけるのも同じくらい違う――んだってね。本当、あの人は……見透かしたことを言うわよね。嫌いだわ
そんなことを言い始める戦場ヶ原ですが、阿良々木くんは言っている意味が全く分からないし、それが今回の件の解決につながるとは思えない
そんな阿良々木くんを尻目に、戦場ヶ原はそのまま言葉を続け、蝸牛の対処法は「ついていかずに離れることだ」と話します
つまり、阿良々木くんが蝸牛から離れれば迷うことはないということ
八九寺のことを聞いているのに、なぜか阿良々木くんのことについて話し始める戦場ヶ原に混乱しながらも、今度は謝らなければならない理由を言い訳と共に戦場ヶ原は話し始めました
2年以上普通の状態では無かったために、自分が間違っていると思い込んでしまい、これまで何も言うことが出来なかった
それは悪気があったわけでもないし、わざとでもない
それを言われても混乱し続ける阿良々木くんに向かって、戦場ヶ原は自分が観察している事実を伝えます
つまりね、阿良々木くん。母の日で気まずくて、妹さんと喧嘩して、家に帰りたくない、阿良々木くん。その子――八九寺ちゃんのことなのだけれど。
私には、見えないのよ
八九寺を指差している……つもりなのだろうけど、戦場ヶ原が指しているのはあさっての方向
その言葉、その姿にギョッとする阿良々木くんは思わず八九寺を見ます
その目に映る小さな体に髪から伸びたツインテール、そして大きなリュックサックを背負っている八九寺真宵という少女の姿は、どこか蝸牛の姿に似ていたのでした
感想&解説
ついに明かされた”蝸牛”の正体
ここまで楽しいやり取りが繰り広げられてきましたが、そこから一気に緊張感と衝撃が走るまさかの事実
これを知った時は本当に驚かされましたし、ここまで視聴者に気付かせなかった描き方の見事さに感服しましたよね
そして、怪異に取り憑かれていたのは八九寺ではなく阿良々木くん自身だったと分かった瞬間も中々の衝撃でした
この後に、怒涛の伏線回収ラッシュが始まりますが、ここまでの描写に無駄が無かったことが分かって鳥肌が立ったのを覚えています
ここのシーンに関しては解説は特にないので、アニメでカットされている戦場ヶ原&阿良々木くんの面白いやり取りと、Aパート終了間際で繰り広げられたキャラコメを紹介します
まずはアニメでカットされた部分ですが、その部分は戦場ヶ原が忍野の元から戻ってきた直後
実は、戦場ヶ原は行きと帰りでかかった時間が違っていて、行きは道を間違えています
記憶力云々の話をしながら向かっていただけに、間違えたことに恥ずかしさを感じつつ、阿良々木くんイジリで「羞恥プレイを仕掛けて興奮する人」というレッテルを貼って遊んだやり取りがあるんですが、面白かったのはその一幕です
戦「私ならいいの……阿良々木くんにだったら、どんなことをされても、我慢できるもん……」
『化物語』(上) まよいマイマイより
阿「突如として正反対のキャラを演じるのをやめろ!そんなことしてもお前のキャラの幅はもうそれ以上広がらないんだよ!ていうか戦場ヶ原、本当に僕のことを思ってくれているなら、僕が少しでもそういう不健康な素振りを見せたときはすかさず注意してくれ!」
戦「まあ本当は阿良々木くんのことを思ってないし」
阿「ですよねえ!」
戦「私が面白ければ何でもいいのよ」
阿「いっそすがすがしい!」
どこまで行っても戦場ヶ原らしいなと感じつつ、毒があるからか阿良々木くんも戦場ヶ原への突っ込みは強めなんですよね(笑)
次に、キャラコメの部分ですが、これに関しては本編の内容とは全く関係ないです
どちらかというと八九寺の勘違いの面白さと羽川の凄さが分かる内容って感じですね(笑)
八「ふうむ。そう言えば昔、参政権の対義語を反対権だと勘違いしていた話とかをしようかと思ったのですが、もう時間的に厳しいですかね」
「まよいマイマイ 其ノ参」キャラクターコメンタリーより
羽「Aパート残り一分ちょい、かな?もうちょっとかな?いずれにしても、それが終わったら真宵ちゃんの回想。ちょーっと厳しいね。……そんな派手な思い込みをしてたの?」
八「恥ずかしながら。賛成権がないって、どんなハードな政治体制だと肩を震わせていたものです。どうでしょう、羽川さんは、その手の勘違いをしたことはないんですか?」
羽「うーん。勘違いをするというのがどういう感覚なのか、白状しちゃえば私にはよくわからないんだよね。それってつまりその、何かと何かを取り違えちゃうとか、不正解を正解だと信じちゃうとか、そういうことでいいんだよね?ただの無知や未知とは違うんだよね?」
八「苦笑いしか浮かんでこないコメントです……」
羽「けど、いちいちそんなことをしていたら、疲れない?」
八「疲れるものなんですよ。人生っていうのは。別にわざわざしたくて勘違いしているわけではありません」
羽「ふむ。だけど勘違いが間違いとは限らない」
八「おや?いい台詞が聞けそうですよ?」
羽「世界における重要なあれこれは、勘違いから生じることも多いからね。疲れているなら、それは疲れるだけのことを成し遂げたということだよね」
八「いや、いいコメントをいただきました」
参政権の対義語を反対権だと勘違いしていたというのは、なんとなく理解できる(笑)
というか、この手の勘違いに関してはしている人も多い気がしていますねw
そんな中、羽川の衝撃の事実が発覚
「勘違いの感覚が分からない」って、どれだけ規格外なのよこの子…
そりゃ八九寺も苦笑いしか浮かんできませんよね(笑)
I love you
――以下回想
ほんの十年ほど前の話
あるところで一組の夫婦が終焉を迎え、一人娘は父親に引き取られることになりました
時が過ぎ、その一人娘は驚きました
自分の母親の顔が思い出せなくなっていたのです
母親の写真を見ても、それが本当に母親なのか確信が持てなくなってしまうほどに
だから一人娘は、その年の母の日に、母親に会いに行く事にしました
けれど、一人娘は母親の家には辿り着けませんでした
どうしてでしょう。どうしてでしょう。本当に、どうしてなんでしょう。
信号は、確かに、青色だったのに――
――回想終ワリ
「その一人娘というのが、わたしです」
申し訳なさそうにも、今にも泣きだしそうにも見える八九寺真宵はそう告白しました
そして、八九寺が見えない戦場ヶ原は忍野から聞いた蝸牛について話し始めるも、阿良々木くんは動揺を隠せない
改めて、戦場ヶ原に八九寺が見えないのか確認するものの、返ってくる答えは先程と同じ
その答えを聞いて、阿良々木くんはこれまでの戦場ヶ原の言動と行動を思い出し、全てが合致します
公園で八九寺の漢字の読みを聞いた時に「見えないわよ、そんなの」と答えていたし、住所のメモも受け取らず阿良々木くんに読ませていただけであり、八九寺とはここまで一切目も合わせず会話も交わしていない
どれもこれも見えていないからこその言動と行動に他なりませんでした
「そうなら言ってくれれば…」と阿良々木くんはいう中、戦場ヶ原が謝罪しなければいけなかったのはその部分
やっと怪異から解放されたものの、二年以上”普通”ではなかった彼女にとって、それはまだ根強く残っている
だからこそ、阿良々木くんが見えていて自分が見えないのであれば、”普通”じゃないのは自分なのだと思ってしまう
それに気付いた阿良々木くんは、迷い牛に行き逢ったのは自分だったのだと自覚しました
さらに、戦場ヶ原から、迷い牛に行き逢う条件と言うのは”家に帰りたくない”と思うことだと聞かされ、羽川も八九寺が見えていた理由がはっきりしました
彼女は家庭に不和と歪みを抱えていて、阿良々木くん以上に家に帰りたくないと思っている
戦場ヶ原からの説明を受けて全て理解し、迷い牛から解放される条件も分かったものの、阿良々木くんが知りたかったのはそんなことじゃない
阿良々木くんが知りたかったのはたった一つ
”八九寺を母親の家に無事に送り届ける方法”
迷子で一人きりであるにもかかわらず、自身の存在がどういう存在かを知っているからこそ、ついて来て欲しくない一心で、声を掛けてくる初対面の人に「話しかけないでください。あなたのことが嫌いです」と言い続けなければならない可哀想で健気で優しい少女
彼女を送り届けることが自分の役目だとはっきりと言い切った阿良々木くんに対して、戦場ヶ原は「そういうと思ったわ」と言葉を返します
そして、阿良々木くんがどうして蟹に行き逢った自分を助けてくれたのかがこれで理解出来たと話し、続けて、忍野から教わった今回だけ使える裏技があることを話します
その裏技を使って、八九寺を母親の家に送り届ける為に歩き出す戦場ヶ原は「それから、阿良々木くん……」と振り向きざまに一言付け加えます
I love you
いつもと変わらない口調で、指差して言われた阿良々木くんはフリーズ
そんな間の抜けた阿良々木くんを横目に、その場にいた八九寺は「おめでとうございます」と一言祝いの言葉を投げ掛けるのでした
感想&解説
ここまで張られた伏線が、すべて繋がっていく爽快感が堪らないBパート!
一見すると気付かないような部分が多くはありましたが、言われてみれば確かにと思える所が目白押しなんですよね
それこそ、戦場ヶ原が最初に言っていた「見えないわよ、そんなの」とかに関しては、八九寺が怪異だと分かった今となっては至極当たり前の返答ではあるんですけど、知らなかった時には何の違和感もなかったワンフレーズ
その他にも、よくよく聞いてみると阿良々木くんとの会話がイマイチ噛み合っていない内容とかもあったりするんですが、言葉の使い方やその時の状況をうまく使ってその事実を隠していた西尾維新の描き方は本当に見事でした
この「まよいマイマイ」に関しては、其ノ壹から其ノ参まで見終わったらもう一度見ることを薦めたいですね
また別の視点で楽しむことが出来ると思いますよ
そして、ついに……
名シーンキタァァァァ!!!
戦場ヶ原の告白シーンは何度見てもニヤケてしまうw
ハッキリ言ってしまえば展開的に明らかに言えるような空気ではないし、見えていないとは言え、八九寺もその場にいるにもかかわらず、唐突に告白する戦場ヶ原さんはまじパねえっす(笑)
ただ、その不意打ち感がもの凄かったからこそインパクトがあったし、英語で告白するという変化球を投げてきたからこそ印象にも残るワンシーンになっていましたね
そしてここでは、解説と小ネタを一つずつ
まず解説ですが、迷い牛であり蝸牛でもある八九寺真宵の名前についてになります
ここまででも本編内で語られてきましたが、八九寺の名前は今回の怪異とかなり関係性や関連性が高く、まるで駄洒落のような繋がりを持っています
本編で登場していた内容だと「八九=厄」、「真宵=迷い」、四国八十八ヵ所巡りに関連性のあった巡り巡る巡礼「八九寺」
また、「まよいマイマイ 其ノ貮」の感想&解説記事で少し語らせて頂いた「綱手=ナメクジ」
そして、アニメ本編では登場しませんでしたが、”真宵”という名前にはもう一つ関連性がありました
原作によれば、マヨイというのは元来、縦糸と横糸がほつれて寄ってしまうことを言い、糸偏で紕(マヨイ)とも書き、そしてそれは、死んだ者の成仏を妨げる妄執をも意味します
また、”宵”と言う字は単体では逢魔が刻を意味し、それに”真”の字を冠する事で”真宵”になって、これは細かくは午前二時を指す古語となり、丑三つ刻を意味するようになる
そう考えると「迷い牛」「蝸牛」は、「八九寺」「綱手」「真宵」と糸が絡み合うように、意図と意味があってついている名前だと分かりますよね
次に小ネタですが、これに関しては知っている方も多いかもしれませんが、私が知らなかったので紹介します(笑)
この「まよいマイマイ」では戦場ヶ原の英語のセリフがこの告白シーンとPTAがなんの略称かを説明した時の2ヵ所ありますが、この発音流暢だなと感じませんでしたか?
それもそのはずで、戦場ヶ原ひたぎ役の斎藤千和さんはニュージランドへの留学経験があり、その時の経験が生きていたそうです
西尾維新先生と斎藤千和さんのインタビューで、西尾先生が戦場ヶ原の印象に残っているシーンは「I love you」のところだと話している時に、斎藤千和さんは「留学しておいてよかった(笑)」と語られていましたね
迷い続けた女の子の結末と同級生への告白の答え
忍野から伝授された裏技というのは、新しく作られた道を通って目的地に向かうこと
幽霊である彼女は情報的記憶を保有できず、つまり知識が蓄積しない
基本的には観測した時にしか存在しないからこそ、知識が蓄積しない幽霊である彼女は知らないことに対して対応が出来ない
だからこそ、区画整理で変わってしまった道を通りながら目的地に向かえば、迷い牛では対応出来ないため、迷わず送り届けることが出来る
そして、無事に目的地に着いた阿良々木くんたちですが、阿良々木くんは目の前の光景に驚きます
なぜなら、八九寺が持っていたメモに書かれていた住所には家がなく、すでに更地の状態になっていたから
その光景に思わず「こんなことってあるのかよ…」と嘆いてしまった阿良々木くんですが、そんな中、隣から八九寺の嗚咽の声が聞こえてきました
その声に隣を振り向いてみると涙を流した八九寺の姿がありましたが、その視線の先は下ではなく、しっかりと前へと向けられていました
そして、そのまま阿良々木くんの脇を抜けて、家があったであろう更地の方へと駆けていきます
――ただいまっ、帰りましたっ
阿良々木くんにとっては更地にしか見えないその場所は、八九寺にとっては別の何かに見える場所
そこに向かって行った少女は、すぐに目の前からかすんで、いなくなっていきました
その光景に笑顔を浮かべる阿良々木くんに、戦場ヶ原は労いの言葉を掛けます
さらに、戦場ヶ原は先程した告白の返事を聞いていないと阿良々木くんに問いかけます
告白の答えに戸惑っていた阿良々木くんですが、戦場ヶ原は阿良々木くんへの想いをしっかりと伝えます
そんな戦場ヶ原を前に自分のみっともなさを自覚しながらも、阿良々木くんは一つの約束を提案します
その約束と言うのは、互いに意見が食い違った時はちゃんと話し合うということ
見えていないものを見えているふりをしたり、見えているものを見えていないふりをしたりせず、おかしなことがあったらちゃんとおかしいと言う
隠し事は一切なしという約束に対してノータイムで了承した戦場ヶ原
無事二人が付き合うことになったところで、阿良々木くんは帰ろうとしますが、戦場ヶ原は彼の手を掴んで、「一応、ちゃんと言葉にしてくれるかしら」と引き留めます
その言葉を受けた阿良々木くんは彼女への想いをしっかりと言葉にします
はやるといいよな。戦場ヶ原、蕩れ
感想&解説
もうね…ここの八九寺のシーンを見ると毎回思うんですけど…
これは神回でしょ!!
十年近く一人で迷い続けた女の子が、やっと家へとたどり着いたと言う内容だけでも感動的なのに、そこを見事に作画と演出と劇伴でさらに盛り上げるスタッフさんの本気具合!
ここに関しては、『まよいマイマイ』の「あとがたり」で神谷浩史さんも語られているんですが、原作を越えた瞬間だと自分も思いましたね(この語っている部分は、DVD特典の完全版にしか収録されてません)
そして、阿良々木くんへの想いを伝える時の戦場ヶ原の本心だったり照れ隠しのようにも見える多彩な表情やポージングの数々も非常に可愛らしかったですし、ここで「staple stable」のピアノ伴奏バージョンを流すところも最高でしたよね
真宵が消えてしまう時は「帰り道」のアコースティックギターバージョンが流れるし、こういう時に各ヒロインのテーマソングを流すのは本当にズルいですね(絶賛してます)
そしてここでは、アニメでカットされていた戦場ヶ原に対しての阿良々木くんの気持ちを紹介します
告白の答えに関してはアニメでもしっかりと伝えていますが、実は少し前に、ちゃんと阿良々木くんは戦場ヶ原を特別な女性だと感じている描写があるんですよね
その描写と言うのは、戦場ヶ原が自分のことを貶めてまで阿良々木くんの答えを聞こうとしたシーンの後
ここまででも、戦場ヶ原と色々やり取りしてきた阿良々木くんですが、改めて、戦場ヶ原と話をすることが面白いと感じている描写が原作では描かれています
戦「だから、阿良々木くん。色々言ったけれど」
『化物語』(上) まよいマイマイより
阿「なんだよ」
戦「この申し出を、阿良々木くんがもしも断ったら、あなたを殺して私は逃げるわ」
阿「普通の殺人犯じゃん!お前も死ねよ!」
戦「それくらい、普通に本気ということ」
阿「……はあ。そうっすか……」
心の底から、反芻するように、嘆息する。全くもう。面白いなあ、こいつは。
クラスが三年同じで、たった三日だなんて――なんて、勿体ない。本当に、阿良々木暦はどれだけ途方もない、莫大な時間を、無駄にしてきたのだろう。
あのとき、こいつを受け止めたのが。僕で、本当によかったと思う。
戦場ヶ原ひたぎを受け止めたのが阿良々木暦で――本当によかった。
戦場ヶ原が阿良々木くんともっと話がしたいと言っていたように、阿良々木くんももっと戦場ヶ原と話がしたいと分かるこの描写
これを知っておくと、付き合い始めの段階から、ちゃんと二人は相思相愛だったんだなと分かるんですよね
個人的にですが、アニメだと戦場ヶ原の気持ち自体はしっかりと描かれていましたが、阿良々木くんの気持ちに関しては描き方として少し弱いと感じていたので、紹介させて頂きました
後日談
翌日、いつものように二人の妹に叩き起こされる阿良々木くん
来年の母の日は家から出ないという約束をしたのが功を成したのか、二人の妹の怒りは収まっていました
そして、ママチャリに乗って学校に向かっている途中、目の前を歩いている女の子の姿を見て、思わず急ブレーキを掛けます
八「あ……阿良木さん」
阿「それだと、々が少ないからな」
八「失礼。嚙みました」
大きなリュックサックを背負い、名前を嚙む彼女は間違いなく八九寺真宵
消えた彼女がなぜこんなところにいるのか分からない阿良々木くんに対して、八九寺は照れるように地縛霊から浮遊霊へと二階級特進したことを話します
まさかの事態に驚く阿良々木くんですが、そんな阿良々木くんに八九寺は笑顔でこう言いました
あの、阿良々木さん。わたし、しばらくはこの辺り、うろうろしていると思いますから――ー
見かけたら、話しかけてくださいね
感想&解説
大爆笑ww
あれだけ感動的に成仏したかと思ったら、まさかの二階級特進(笑)
ホントもう、八九寺は予想を遥かに超えてくる女の子だなと改めて感じた瞬間ですねw
そして、この「まよいマイマイ」に関しては、この最後の一言の締めがあるからこそ最高だとも思えるんですよね
今までは、出会った人たちに「話しかけないでください」と言い続けてきた八九寺の言葉が、「話しかけてくださいね」と変わったこの瞬間は本当に堪らない!
ここまで見て、最後を見ない方と言うのは中々いないとは思いますが、ラスト一秒までしっかりと見届けて欲しいと感じている理由は、正しくこの瞬間を見て欲しいからに他なりません
いやあ、ホント、終わり方が綺麗ですよね
ちなみに、このラストのセリフに関しては原作者の西尾維新先生もインタビューでコメントしていて、「原作を書く時にも最高にいいセリフとして書いた」と話しているんですよね
そして、アニメで流れたエンディングのタイミングも良くて「きれいな終わり方だった」とも話しています
私が原作を書くときにも、最高にいいセリフとして書いたのが「見かけたら、話しかけてくださいね」という締めのセリフでした。「まよいマイマイ」はこのセリフのためにあった話といってもよくて、アニメでエンディングが流れて、このセリフで終わるのは素晴らしかったなと思います。エンディングテーマが本編に重なるのは実は尺の問題と聞きましたが、その方が逆によかったなというくらいきれいな終わり方でした。
『化物語』アニメコンプリートガイドブック「まよいマイマイ」より
このエンディングの点に関しては激しく同意で、狙ったものではなかったのかもしれませんが、音楽が流れるタイミングから最後の八九寺のセリフのタイミングにいたるまで、ここがベストとも思える絶妙な感じがしていました
偶然の産物だったとしても、これに関しては大成功だったと言わざるを得ないラストでしたね
まとめ
化物語 第5話『まよいマイマイ 其ノ参』の感想と解説でした!
視聴者のみならず、原作者、そして演じるキャストの人でさえ、素晴らしいと感じさせる結末を見せてくれた「まよいマイマイ」
ここまで作品に関わってきた人たちの解説を交えながら語らせては頂きましたが、そういうものを知っていくと、多くの人のこだわりや信念、そして想いがあったからこそ”神回”と呼べるエピソードが出来上がったんだなとつくづく実感しています
ただ、やはり惜しいなと感じてしまうのが掛け合いの部分ですね
尺の都合上、致し方ないことではありますが、「ここ面白いのに!」みたいな部分がカットされてたりしたので、興味がある方は是非とも原作を読んで頂きたいものです(笑)
さて、次回は満を持して阿良々木くんの後輩である神原駿河の登場です!
5月末、阿良々木は、一学年下の女子生徒・神原駿河からストーキングされていた。弱小バスケ部を全国大会に導いた校内一のスターである彼女が、何故、阿良々木につきまとうのか……。
『化物語』西尾維新アニメプロジェクト公式サイトより
学校一のスターである彼女が、一生徒である阿良々木くんに執拗に付きまとう理由とは?
次回、「するがモンキー 其ノ壱」!
彼女の極端すぎる性格やインパクト大のその個性を是非ともその目で確かめてみてくださいね!
それでは今回はこの辺で!
また会いましょう