どうもウハルです!

今回は、『鳥物語 採集話 よつぎリベイク』の感想をネタバレ有りで語っていきたいと思います!

この記事で分かること
  • 『鳥物語』のあらすじと内容
  • 『鳥物語』を読む前に押さえておきたい一冊
  • 『鳥物語』のネタバレ感想
  • 過去作の繋がりと登場箇所

まずは率直に、『鳥物語』が面白かったのか、面白くなかったのかを語らせていただくと…

今回の巻のメインで描かれるのは逃げだした月火の捜索

そして、そんな物語の中で描かれていく怒涛の展開には大興奮!

かつて、『偽物語(下)』にて実行された「しでの鳥」こと〈不死鳥〉の抹殺指令ですが、それが今回再燃し、その指令が意味する最大の理由が明かされた時は、思わず鳥肌が立ちました

この物語を西尾維新先生はいつから考えていたのかは分かりませんが、見事に符号がつながっていく展開に、思わず息を吞まずにはいられませんでしたね

そんな怒涛の展開を迎える『鳥物語』の感想を今回はネタバレを交えながら語っていきたいと思います!

なお、今回の『鳥物語』ではアニメで登場しなかったキャラが登場したり、「あの時にこんなことを言った」や「あの時にこんなことがあった」みたいな描写も多い印象があります

なので、その辺りも分かる範囲で「どの作品のキャラなのか」「どの描写で語られたセリフなのか」「いつの出来事なのか」も合わせて解説していきます

なので、ネタバレでもいいから『鳥物語』の内容を知りたい方だけでなく、すでに『鳥物語』を読んでいても「これって何のこと?」「これいつのこと?」と不明な部分があった方は是非参考にしてみてください!

また、アニメ版の〈物語〉シリーズを見ている方でもこれを読んでおけば『鳥物語』の大まかな部分は補填できる原作小説1冊ネタバレ感想の前に紹介しておきますので、ここまで読んだ上で、自分の目で『鳥物語』の結末を見届けたいと思った方「『鳥物語』概要」だけでもチェックしてみてくださいね

『鳥物語』概要

『鳥物語』あらすじ

”こんな偽物だらけの世界は滅んじゃっていいと思うんだよね、お兄ちゃん”
阿良々木月火が失踪した。あの臥煙伊豆湖の監視を出し抜いて。
〈不死鳥〉暗殺指令、再燃!
鳥探しに奔走する斧乃木余接の相棒は、人気漫画家・千石撫子──!?
青春の 灰の中から 蘇る。

原作者西尾維新
イラストVOFAN
刊行講談社BOX
発売日2026年9月4日
キャッチコピー300%趣味で書かれた小説です。
シーズン名ファミリーシーズンの3作品目
シリーズ作品数33作品目(混物語、短物語含む)

『鳥物語』を読む前に押さえておきたい作品は『結物語』

”私は何も知りませんよ。あなたが知っているんです――阿良々木警部補”
怪異譚となる前の”風説”を取り締まる直江津署風説課で働きはじめた警察官・阿良々木暦。町を離れた、ひたぎと翼。二十三歳になった三人が選ぶ道と、暦が最後に伝える想いとは・・・?知れば知るほど、知らないことが増えていく。
永遠に、この恋心はほどけない・・・・・

原作者西尾維新
イラストVOFAN
刊行講談社BOX
発売日2017年1月12日
キャッチコピー100%趣味で書かれた将来です。
シーズン名オフシーズンの4冊目
シリーズ作品数22作品目

今回の『鳥物語』は、時系列的にこの『結物語』よりも後のエピソードになります

厳密な時系列の流れとしては「『結物語』→『戦物語』→『鳥物語』」の順番になりますし、細かい部分も補完するなら『戦物語』も読んでおいた方がベストではあります

ただ、『鳥物語』において重要な部分は『結物語』の内容でカバーできますし、細かな部分まで触れると、33作品出ている現状でもまだ描かれていない部分もあるので、「阿良々木くんは今、そんなことになってるのか…」くらいの認識で大丈夫です

なのでもしも、『鳥物語』を読んでみたいけど原作を追ってないという人『結物語』だけでも読んでおくことをオススメします

ちなみに、『結物語』はアニメを全シリーズ追えていれば問題なく読めますのでご安心を

また、本を読む時間は作れないけど、作業しながら音楽を聴く時間は取れるという人オーディオブックで聴くというのも一つの手です

〈物語〉シリーズのオーディオブックは、アニメに出演したキャスト陣が朗読するという豪華なものとなっており、『結物語』は千石撫子役の花澤香菜さんが朗読してくれています

『結物語』Audible オーディオブック

『鳥物語』ネタバレ感想&解説

阿良々木月火こと〈不死鳥〉の暗殺指令

今回の物語は、『偽物語(下)』から8年経った時系列になります

その間に今回の語り部こと、斧乃木余接は様々な事件や怪異に巻き込まれていますが、阿良々木月火を監視していたのもその中の一つで、『愚物語 つきひアンドゥ』では酷い目にあっていた印象があります

ただ、そう記憶しているのは実は私たちだけなのかもしれません…

なぜなら、余接は今回の指令が下るまで月火のことを忘れていたから

私たちからすれば「月火みたいな強烈なインパクトの子忘れる!?」と思いますよね(笑)

ただ、余接からしてみれば月火以上に強烈な事件や怪異はたくさん見てきています

何より彼女自身は死体というのもあり、脳細胞も死んでいるらしいので、月火のことを覚えていないというのも無理からぬことかもしれません

しかし、だからといって思い出せないほどではないらしく、言われれば思い出すくらいには印象に残っていたようです

そんなモノローグで始まった『鳥物語』ですが、余接は怪異の専門家の元締めである臥煙伊豆湖からこんな感じで一つの任務を言い渡されます

「阿良々木月火を殺してこい」

『鳥物語』より引用

言い方だけ見ると臥煙伊豆湖っぽくないですが、正真正銘、臥煙伊豆湖です(笑)

実際、これはもはや命令ではあるんですが、こういう言い方をする伊豆湖は珍しく、真夏の西表島で命令された余接は南極にいるかと思ったくらい心が冷えたらしいです

伊豆湖からの命令を受けた余接は、それで過去のことを思い出し、それと同時に月火のことも思い出すんですが、それによって一つの疑問も浮かんできました

それは、阿良々木月火は無害認定されていなかったかということ

余接はかつて、月火の監視任務に就いていた際に報告書を上げ、「有害性はあっても危険性はない」と伊豆湖に伝えていました

伊豆湖自身、その報告書には目を通しており、その出来は良かったと褒めながらも、だからといって無害認定をしたわけではないと話します

あくまで監視を解いただけであり、月火の経過観察は続けていたそうなんですが、その経過観察がきっかけで今回の命令が下ったことを余接はここで聞かされます

余接の報告書の件もあり、様子見の段階で留まっていたものの、伊豆湖の目を逃れる能力を持っているとなると話は別

それもあって伊豆湖はあんな命令口調になった訳で、その理由を知り、なんとしてでも月火を見つけて殺さなければならなくなった状況を察した余接は、今現在の阿良々木月火の状況を伊豆湖に聞きました

月火が失踪するまでの足取り

  • 高校卒業後、大学に進学するも中退
  • 大学中退後、アメリカの大学に行くも中退
  • アメリカの大学中退後、アメリカのダンススクールに通うも辞める
  • その後は帰国し、おとなしくしていたものの、急に消息を絶つ

なんか月火らしい投げ出しっぷりではあるものの、そんな彼女らしさも話をしながら思い出してきた余接は、もう一人重要な人物を思い出します

それは、阿良々木月火の兄である阿良々木暦

かつて、彼の目の前で妹をぶっ飛ばすという所業をした余接

奇しくも今回の命令で再びあの時と同じことをしなければならない状況になってしまったので、彼女は阿良々木くんが今どこで何をしているのかも伊豆湖に聞きます

すると、阿良々木くんは現在FBIの研修中であり、”ある出来事”がきっかけで証人保護プログラムを受け、妻子と共に身を隠しているらしい

波乱万丈な人生を送っている阿良々木くんですが、逆を言えば、今回の件に関しては阿良々木くんの邪魔が入ることはないということでもあります

これで心置きなく任務を遂行できることを余接は知り、そのためにまずは”ある人物”の元へひとっ飛びすることにしました

感想

ここまで書くと余接が冷たい奴みたいな印象があるかもしれませんが、そもそも彼女自身、感情のない死体人形なわけですし、これこそが斧乃木余接らしい考えのような気もしますね

かくして始まり、再燃(リベイク)した〈不死鳥〉暗殺指令ですが、導入としては中々惹かれる展開

これまでも予測不能な行動で場を滅茶苦茶にしてきた月火ですが、今回ばかりは事態が大きすぎる

そもそも、「なんでも知ってるおねーさん」である臥煙伊豆湖の目を搔い潜る時点でかなり凄い(笑)

そんな不測の事態をどう収めていくのか、余接の今後に期待したくなる導入ですね

解説

ちなみに、阿良々木くんが証人保護プログラムを受けている経緯に関してはまだシリーズ作品では描かれていません

唯一触れられている作品としては、この『鳥物語』の前に発売された『戦物語』になります

阿良々木くんは、妻である戦場ヶ原ひたぎ(結婚して”阿良々木ひたぎ”になってますが、分かりやすく旧姓で)が巻き込まれた事件が原因で証人保護プログラムを受けることになったと作中では触れられていますね

しかもその事件が、控えめに言っても歴史的な大事件レベルだったらしく、あの手この手を使いまくった結果、証人保護プログラムを受けることになったそうな

この辺りは今後のシリーズ作品で描いてくれるとも思うので、その時を心待ちにしたいです

目標を失った影縫余弦

阿良々木月火暗殺命令を受けた余接は、”ある人物”の元に訪れるために西表島から京都府と大阪府のちょうど境目にある陰陽寺(おんみょうじ)へ向かいました

その”ある人物”というのは影縫余弦

実はこの陰陽寺は余弦の実家で、現在、そこに帰省していた彼女に今回の指令を伝達しに来た余接でしたが、余弦の反応はある意味、余接の予想通りの反応でした

「気が乗らへんのう。いまいち」

『鳥物語』より引用

以前であれば、不死身の怪異に対して好戦的に挑んでいた余弦でしたが、彼女は”あること”をキッカケにそのモチベーションを失っていました

それはデストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターの死

スーサイドマスターの死は、この吸血鬼を倒すことを目標としていた余弦にとって大きな喪失感となっていました

さらにはそれが自らの手ではなく、あっけなく病気で死んでしまったという事実が、以前ほど仕事に対してモチベーションが上がらない理由にも繋がっていました

余弦がこれまで不死身の怪異を相手にし続けてきたのは「やり過ぎることがないから」であり、その不死性と圧倒的な暴力が上手くシンクロして、余弦のやる気に繋がっていました

ただ、あの不死身の頂点であるスーサイドマスターでさえ、病気で死んでしまうのであれば、わざわざ不死身の怪異に自分が手を下す必要もないのではないかと思えてしまう

結果的に、仕事自体は以前よりも丁寧にこなすようになったものの、暴走っぷりは抑え気味になっていました

そのことを知っていた余接は、過去に一度失敗した〈不死鳥〉の暗殺を改めて実行できるのであれば、余弦のモチベーションも戻るかと期待しましたが、そう上手くはいきませんでした

そしてそんな余弦は、今回の指令を自分がやるのではなく、余接に任せることにしました

これはモチベーション云々もありますが、そもそも今回の指令は余接が伊豆湖から言われたものであり、さらに言えば、余接は将来的に誰よりも長生きするので、その時は一人で仕事をしなければいけなくなってくる

そのことを踏まえて、余弦は余接に今回の仕事を任せることにし、余接自身もそれに納得して、伊豆湖の指令に挑むことになりました

そして、早速取り掛かろうにも流石に一人では厳しい

なので余接は、阿良々木月火を殺すとなれば協力してくれるであろう”ある人物”の元に行くことにしました

感想

「え?スーサイドマスターって死ぬの??」と『物語シリーズ』を見てきた方は思うかもしれませんが、実際、死んでしまったんです

その原因は病死であり、そこに至る経緯に関しては『死物語(上)』にて描かれています

具体的な病気を言えば、当時流行していた「コロナウィルス」ではあるんですが、その一連の流れは過去に感想記事を書いているので参考にしてください

スーサイドマスターの死によって、仕事のモチベーションも下がってしまった余弦でしたが、この仕事を余接に任せる理由も一理ある

たしかに死体人形である余接は年を取ることがありませんし、相応のことが無ければ死ぬこともないので、誰よりも長く生き続けるのはもはや自明の理

仕事に関してはこれまでも余接が大活躍していたように思いますが、それはあくまで手伝いやお遣いなどと言った補佐的な部分が多かったようにも思います

今回のようにメインで仕事をこなす経験自体は多いに越したことはないとも思うので、余弦の判断は正解だったとも感じましたね

そんな余接が立てた白羽の矢

月火と関係性を持ち、余接の事情を知る人物となると多くはないので、その”ある人物”というのもなんとなく察しはつくかもしれませんが、その人物は一体誰なのか

想像していた通りの人物なのか、気になるところですね

解説

余弦と余接の会話の中で、余弦が阿良々木くんに「迷わないのか?」と聞かれたことがあると言っていますが、その質問をされたのは『忍物語』で、アニメだと『忍物語』「しのぶマスタード 其ノ陸」の時になります

女子高生木乃伊化事件の真相が判明し、その犯人を撃退した余弦に対して阿良々木くんが聞いたセリフです

作中でも「スーサイドマスターが来日した時」と余弦が話しているので、この辺りは覚えている人も多そうですが、念のため補足しました

余接が選んだパートナーは漫画家・千石撫子

「というわけで阿良々木月火をぶっ殺したければ僕に協力しろ、千石撫子」
「協力するわけないでしょう?」

『鳥物語』より

余弦と別れ、陰陽寺からひとっ飛びでやってきたのは大東京

そこにやってきたのは、今や週刊連載を持つ漫画家となり、さらにはその作品がアニメ化することまで決まっている漫画家・千石撫子に会いに来たからでした

余接が彼女に会いに来た理由は明白で、今回の指令を手伝わせる算段だったんですが、一も二もなく断られてしまいます

過去に色々迷惑をこうむられたことがあるとはいえ、それでも大親友である月火を殺したいとは、さすがに撫子も思いません

そもそも千石撫子は月火が不死鳥である”しでの鳥”だったという事実をいま初めて知りました

余接自身、撫子は臥煙伊豆湖の仕事を手伝ったりもしていたので知っているものだと勘違いしていたものの、だとしても、やはり撫子は月火暗殺の仕事を手伝う気はありませんでした

どころか、余接から月火の話を聞いて、撫子は一つの疑問を余接にぶつけます

たしかに”しでの鳥”は「不死性を持つ怪異」ではありますが、言ってしまえば「それだけ」

余接からも「不死性からトラウマを修復し、失敗から何も学ばないがゆえに、周囲にその影響を与え、ミスを誘発する性質がある」と言われましたが、それが殺すほどの脅威とは思えませんでした

この言葉には余接も納得する部分があり、伊豆湖から暗殺指令が出された理由を明確に言われていない以上、少し今回の指令に対して二の足を踏む考えに至ります

これがもしも以前の影縫余弦からの指令であれば、理由は「ぶっ殺したいから」とい単純明快である可能性も大いにあり得ました

ただ今回はそうではなく、あの中立の立場であり、道理も弁えている臥煙伊豆湖からの指令というのが混乱させる大きな要因となっていました

結局、余接はその理由が何なのかは分からなかったものの、考察自体は得ることができたし、撫子の協力は得ることは出来なさそうなので、お暇しようとしたところ…

「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

『鳥物語』より

とてつもなく長い溜息をした撫子

ここまで話を聞いた撫子は、最近実家に帰っていないという理由もあったので、今回の余接の仕事に同行することしました

ただし、撫子が同行するのは余接の仕事を手伝うからではなく、仕事を妨害するため

それをはっきり伝えた撫子は、漫画家として使っているデジタルのではないサインペンを手に取って、余接と共に地元に帰ることにします

感想

『撫物語』の段階では漫画家を目指して四苦八苦していましたが、彼女もついに大きな夢を掴むことが出来たようでなにより

こういうのを見ると、年月の流れを感じさせられますね

そして、肉体的にや精神的な部分の成長以外にも、親に守られていた子供から自立した大人になった成長を感じられて、ここまで〈物語〉シリーズを追ってきた自分としては、感慨深い部分もありましたね

特に千石撫子はその最たる例で、初登場の「なでこスネイク」の頃から比べたらもはや別人のレベルになってますしね(笑)

こういうキャラクターの成長をしっかりと感じられるのは、長く続いている作品ならではの楽しみだと思えて凄く良いですね

解説

撫子は漫画家になりましたが、彼女は本名のまま漫画家活動をしているわけではなく、ペンネームを使って活動しています

漢字自体は同じですが、「千石撫子」と書いて名前は「なでしこ」と読むペンネームとなっています

この辺りも『結物語』にて触れられている内容ですね

月火を探すにあたっての重要人物

撫子と共に月火を探すことになった余接は、新幹線にて撫子の地元へと向かうことになり、その車内でこれからの予定を話し合います

撫子はまず中学時代に同じクラスメイトで呪いをかけてきた一人である遠吠哭奈(とおぼえなくな)とアポが取れたので会いに行くことにします

それに加えて、今はかなり親しくなった老倉育にも会う予定を組んでいました

自分に呪いをかけた相手と親交を深めていたり、老倉育と想像以上に親しくなっている現状に余接は驚きながらも、余接は月火を探す上で重要だと考えている人物に話を聞くため、行動しようと考えていました

その人物は阿良々木火憐

証人保護プログラム中の阿良々木暦に月火がコンタクトをとる可能性よりも、現在も実家を守り続けている阿良々木火憐の方が月火と接触している可能性は圧倒的に高い

それもあってまずは火憐に話を聞こうと思っていましたが、余接にとっては一つの問題がありました

それは、余接はかつて人形として阿良々木家に居候していたことがあり、その姿を当然、火憐も目撃しているので、動いている余接の状態で会いに行くことは難しいということ

なので、火憐に会う時は作戦を考えた上で、火憐と少なからず親交のある撫子にも協力してもらうことをお願いします

さらに、老倉も一時期、阿良々木家にお世話になった経緯があったので、もしかしたら月火が接触しているかもしれない可能性を考えて、撫子が老倉育と会う時は余接も一緒に同行することに決まりました

ただ、地元に着いても撫子には予定があるので、すぐに阿良々木家に向かうことは出来ない

なので、余接のもう一つの策であり、今後のことを考えての必要な寄り道として風説課に寄ることにしました

風説課は臥煙伊豆湖が試験的に立ち上げた怪異専門の公的機関

そこはかつて阿良々木くんが在籍していた場所でしたし、何より、風説課のある直江津署には他部署ではあるものの火憐も働いているので、あわよくば取り次いでもらおうと考えていました

そんな話をしていると新幹線を降りる駅に到着し、そこから乗り継ぎに乗り継ぎを重ねて、目的地に到着

哭奈に会いに行く予定の撫子とは最寄りのバス停で別れ、余接はそのまま直江津署へと向かうことにしました

感想

「月火を探す上で誰が一番知っていそうか?」という質問があったら、誰もが阿良々木火憐を思い浮かべるだろうと思えるくらい二人はワンセットの印象があります

ただ、それも中学の頃までで、高校に入ってからはファイヤーシスターズの活動はそこまで活発になっていませんし、大人になってからは全く別々の道を歩んでいるものの、それでも月火と一番近しい人物であることには変わりない気がします

そんな火憐がどんな情報を齎してくれるのか非常に注目したくなる展開ではありますが、それにしても撫子の交友関係が少し心配になるレベル(笑)

老倉育ならまだしも、自分を呪った遠吠哭奈とも連絡先を交換するほどの仲になっているのが本当に凄い

撫子のメンタルはシリーズが進むたびにどんどん強くなっているとも感じさせられるパートともなっていましたね

解説(主にアニメ勢に向けて)

この辺になってくるとアニメ勢の方はハテナマークでいっぱいになっていそうなので、ここでは解説を2つさせていただきます

まず1つ目は、遠吠哭奈(とおぼえなくな)について

遠吠哭奈は原作小説で言うなら『扇物語』に収録されている「おうぎフライト」にて登場しており、彼女は撫子を呪った人間のうちの一人です

『撫物語』の終盤にて、撫子は臥煙伊豆湖の手伝いをすることに決めましたが、そこから漫画家と専門家の二足のわらじを履くことになり、その手伝いの一つが自分を呪った二人の呪いを解くことでした

見事にその仕事をやり遂げた撫子ですが、この時の哭奈との出会いが良い感じだったかと言われると決してそうではなく、どちらかというと空気最悪と言った印象の方が圧倒的に強かった気がします

それを知っているからこそ、いまだに交流を持っている撫子のメンタルに感心させられるんですけどね(苦笑)

ちなみに、撫子を呪ったもう一人は砂城寸志(さじょうすんし)と言い、撫子に告白して振られた男子です

彼も哭奈同様に呪い返しにあっていて、その呪いも撫子は解きましたが、その後どうなったのかは不明ですね

次に2つ目が、老倉と撫子の関係性

ここはアニメで言うなら『撫物語』で描かれていた部分が一番分かりやすい気もします

あの時、老倉はかなり撫子のことを気にかけていましたし、阿良々木くんと接する時とは違って、優しいお姉さんといった印象がありました

そして、老倉は大学卒業後、再び地元に戻り、役場で働く公務員になっていますし、それが今回の物語でも大きな役割を担っています

この辺りは『結物語』で描かれている内容になりますし、この後に度々登場してくる風説課というのも『結物語』で登場してくる部分になるので、ネタバレ感想の前に『結物語』を紹介したのはその辺も大きく関係しているからです

ここまでネタバレ感想を読んでいる方で、原作未読の方はかなり少なそうですが、色々と気になりだした方は、『鳥物語』を読み終わった後にでも『結物語』を読んでみるのも良いと思います

風説課・兆間臨との挨拶

「初めまして、斧乃木余接さんですね?私、風説課の課長、甲賀葛(こうがつづら)――の代理でご挨拶させていただきます、ゴーレムの兆間臨(きざしまのぞみ)警部です」

『鳥物語』より

直江津署の応接室に通された余接は、風説課の兆間臨にそう挨拶されたものの、最初は彼女の見た目から反応に困ってしまいました

というのも、彼女の見た目はどう見ても小学生くらいの小柄な女性で、警察官というより迷子という印象を受けるほど

ただ、それも会話をしていく内に払拭され、見た目に反して大人びた喋り方や社会人らしいマナーがしっかりしている辺り、中身が見た目に引っ張られているということもないんだと認識しました

そしてそれは同じ故人であり、同じ死体人形である余接にとっては興味深い点でしたし、そこからさらに会話をしていく内に似ている点もあれば違う点もあるのだと、兆間自身も感じていました

この似ている点と違う点というのは中々興味深く、例えば、似ている点としては死体人形同士なので年を重ねても変化することはないですし、不死性も強いのでそれぞれの弱点を突かれなければそうそう死ぬようなこともないという点

違う点としては二人の見た目は幼いながらも、余接は表情に乏しいが、兆間は表情豊かに話すことが出来、それ故に、見た目と中身の齟齬が二人でそれぞれ異なっているという点です

そんな二人の会話も一段落し、余接はここに来た本来の目的である「阿良々木火憐との仲介」を兆間にお願いします

兆間自身、臥煙伊豆湖のことはよく知っていたし、その伊豆湖の指令で動いている余接に火憐を紹介すること自体は問題なかったものの、その理由は聞いておきたいところ

余接自身もそのことは想定済みで、出来る範囲で火憐に会いたい理由を話します

ただ、その目的が月火を探しているためというのは話しても、本来の目的の殺すためだということまでは話しませんでした

あらかじめ「詳細は話せない」という前提の下で話をした余接に対して、兆間もそのことは重々承知していました

その話を聞いた上で、それであれば、別の人間に火憐の仲介をお願いした方が良いと提案してきます

その人間というのは同じ風説課で働く再埼みとめ(さいさきみとめ)

再埼は人狼の末裔であり、余接同様の戦闘要員でもありましたが、再埼は火憐と直接交流を持っている人物でもあるので、その人物を紹介するという話になりました

ただ、再埼は外回りに出ているということで、余接はその連絡を待つことになります

それであれば一旦、撫子と合流して、老倉との会合に同席しようと考えていましたが、流石に老倉も今日の今日で予定は空けられず、撫子は翌日の昼に役場の食堂で会う約束を取り付けていました

なので、それまでは撫子と一緒に撫子の実家に泊まり、翌日の老倉との会合に備えて余弦の設定付けをすることにします

流石に無策の状態で余接を会わせるわけにはいかなかったですし、何より、老倉は現在でも怪異とは全く関係のない所にいる人物ではあるので、その事情に巻き込みたくないという撫子の思惑もありました

そうして出来上がった設定は「中学校で”数学”につまずいて”不登校”になった近所の子」という老倉にピンポイントで刺さるような設定で、それを流暢に作り出した撫子の腕前に余接は感服していました

そんな子が、数学を教えてもらうために老倉に会いに来るとなれば断るのも難しい

服装はあえてそのままにして、老倉の意表を突く作戦で翌日、彼女に会いに行くことになりした

感想

こう言っちゃなんですが、老倉が初登場した時はここまで彼女の登場が多くなるとは思ってもいませんでしたね(笑)

実際、彼女自身、「そだちロスト」で街を離れていましたし、そのまま登場が終わってもおかしくないくらい綺麗に別れたような気もします

ただその後、阿良々木くんと大学で出会って仲良く(?)なったり、撫子とも『撫物語』で再会を果たし、親身になって相談に乗ってあげるという活躍ぶり

2026年9月時点ではまだアニメ化されていませんが、『愚物語』では「そだちフィアスコ」という「そだちロスト」の後のエピソードがあったり、『余物語』ではそもそも老倉の紹介がきっかけで阿良々木くんが事件に巻き込まれたりもするんですよね

そう考えると老倉は、オフ&モンスターシーズンでは意外と重要な立ち位置にいることが多い気がします

まあ、そのおかげで個人的に老倉がかなり好きになってきたというのもあるので、ありがたいことではありますが(笑)

そして、そんな老倉との再会が今回の巻でもかなり重要な意味を持つことになるとは、この段階では夢にも思ってませんでしたね

老倉育の動揺

「初めまして、斧乃木余接さん――私も撫子ちゃんみたいに、斧乃木ちゃんって呼んでもいいかしら?よかったら、私のことは、育お姉ちゃんって呼んでね」

『鳥物語』より

翌日、約束通り、役所の食堂で老倉と会うことになった余接と撫子

余接と老倉は互いにあいさつを交わし、撫子も六年ぶりの再会とは思えないくらいフレンドリーに接しながら、いきなり本題に入るわけにはいかなかったので、老倉に会うための口実だった数学の勉強を始めます

勉強を教えてもらいながらも、余接自身はそこまで数学にハマるようなことはありませんでしたが、なぜか付き添いの撫子の方が数学に夢中になってしまい、その教え方の上手さから「育お姉ちゃんが本当のお姉ちゃんだったら良かったよ。まあ、本当のお姉ちゃんだと思ってるけど」と見事なおべっかを使うほど

ただ、老倉自身は悪い気はしておらず、むしろ喜んでいる感じではありましたが、そこから、小学生の時にも同じように数学を教えてもらった話を振ります

その話に「月火」の名前も入れて

余接はその話の振り方の上手さに感心し、そのまま自然な流れで月火の話題になってもおかしくないとも思っていましたが、老倉は想定外の反応を見せてきました

老倉は、その名前を聞いた瞬間、手元にあったコップをひっくり返し、明らかに動揺した反応を見せてきました

この反応には余接だけでなく、撫子も予想外であり、取り敢えず、老倉と共にテーブルの上を片付けました

その事実に余接は考察の余地を見出してもいましたが、紹介してくれた撫子の手前、強硬手段に出るようなことはしませんでした

落ち着いた老倉が、コップをひっくり返した理由を「本当のお姉ちゃん」と言われたことが嬉しかったからと話すものの、余接も撫子も流石にそれを鵜呑みにすることは出来ませんでした

ただ、取り敢えずその場はその言い訳を通すことにして、今回は別れることにしました

老倉と別れた後、彼女の動揺ぶりを見逃すわけにはいかなかった余接は、月火を見つける手掛かりがある可能性も考えて、老倉の家を見に行こうと考えますが、その時、兆間から再埼とのアポが取れたと連絡が来てしまいました

それを聞いていた撫子は、代わりに老倉の家の様子を見に行く提案をし、夜にまた撫子の家で落ち合う約束をして別れることにしました

感想

ここに来ての新展開と言いますか、風説課のメンバーでもなく、火憐でもなく、老倉が月火を探す上で、大きな役割を担っているかもしれない可能性を秘めているとは夢にも思っていませんでしたね

作中でも言われていますが、老倉はいたって”普通の人間”ですし、怪異とは全く関係のないポジションにいるキャラクターです

にもかかわらず、「何か」を隠し、その「何か」こそが今回の物語において鍵となっているとはね…

本当に予想外というか想定外の展開を見せてくれる西尾維新先生には感服させられました

解説

このパートは小説の章数で言えば「014」と「015」をベースに内容と感想を語っていますが、その「014」の最後で、以前に余接が阿良々木くんに「こんな偽物だらけの世界は滅んじゃっていいと思うだよね」と言ったことがあると語っていますが、この部分はアニメではカットされた部分になります

この言葉は『偽物語(下)』で登場した言葉で、阿良々木くんが影縫余弦とのバトルに挑み、それぞれのマッチメイクが決定した後に言っています

余接自身、どういう意図でそんなことを言ったのか分かっていないようですし、文脈も忘れているようなので、その時の文章を載せるとこんな流れになります

「ねえ、鬼のお兄ちゃん」
 と、そんなことを言ってくる。
 なんだよ、と僕が問い返すと、
「あなたは世界をどう思ってるのかな?」
 と続け、更にそこから、僕に言葉を返す時間も与えずに――
「僕は、こんな偽物だらけの世界は滅んじゃっていいと思うんだよね、鬼のお兄ちゃん――僕はキメ顔でそう言った」

『偽物語(下)』より

個人的にこの部分に関しては、『鳥物語』を読みながら「いつ言ってたっけ?」と感じた部分になるので、解説としてここに載せておきますね

風説課・再埼みとめとのバトル

撫子と別れ、直江津署にひとっ飛びした余接は、兆間に案内されて警察署の道場へと案内されました

兆間とは道場付近で別れ、余接が一人で道場の入り口を開けて中に入ると、畳の敷かれた道場の中央で正座している再埼みとめ(さいさきみとめ)が待っていました

「どうも、こんにちは。風説課の再埼みとめだよ。階級はない」

『鳥物語』より

そう言って座礼する再埼に、同じく頭を下げる余接

挨拶もそこそこに、再埼は余接の目的を兆間からある程度聞いているらしく、火憐に取り次いで欲しい事情も、その理由を話せない事情も知っていました

余接としてはそれだけ知っていれば十分でしたが、再埼から”ある提案”を持ちかけられます

それは柔道で勝負をして、余接が勝てば何も聞かずに火憐を紹介し、再埼が勝てば余接は聞かれたことを全て話すというもの

非常にシンプルで分かりやすい内容に余接は了承しますが、問題が一つ

余接は柔道をやったことが無いということ

それもあって余接は細かいルールが全く分かっていないませんでしたが、再埼はそんなことは百も承知でしたし、何より、「言い訳の余地を残すような勝ち方はしない」という煽りっぷり

その言葉で火が付いた余接は柔道着を借り、審判なしの状態で、再埼との柔道対決に挑みます

再埼から始まりの合図がかかり、最初に勝負を仕掛けたのは余接

というより、再埼は合図をしても一歩も動かなかったので、余接から仕掛けた形になるんですが、襟首を掴むために接近し、見事に掴んで背負い投げで一本を決めようとしたところ、背後を張り手で叩かれて吹っ飛ばされてしまいます

ギリギリ場外に飛ばされることはなく、ライン際で踏みとどまったものの、掴んでいた両襟を引き剝がされるだけでなく、こんなにも簡単に吹き飛ばされてしまったことに少なからず驚かされていました

柔道技のみならず、純粋なパワー勝負でも再埼に負けていることが判明したものの、それで絶望する余接ではありません

強烈な張り手を喰らったものの、痛覚のない死体人形だからこそのメリットを存分に生かして、再埼に改めて勝負を挑んでいきます

「絶滅する覚悟はできてる?再埼さん」
「生まれたときからできてるよ。来な」

『鳥物語』より

互いの間に火花が飛び交っていそうな戦闘態勢の中、再び詰め寄り、再埼の襟首を掴む余接

先ほどの失敗を生かし、今度はいきなり投げ技に転じるのではなく、姿勢を崩そうと試みますが、再埼は微動だにしない

どころか再埼は、余接の奥襟を掴み、そのまま余接を腹から倒します

その倒れ方は肋骨が折れていてもおかしくないほどの勢いでしたが、余接自身、痛覚がないので何も感じることはなく、そのまますぐに動き出そうとしたものの、先に動いたのは再埼みとめでした

余接は腹這いのまま寝技に持ち込まれてしまい、そのまま動けなくなります

さらにそこから引っ繰り返され、抱えられているような状態から、道着を使った絞め技へと転じられていきますが、これは再埼の悪手

死体人形である余接は、息をしていないので絞め技が通用するはずもなく、そのことに再埼もすぐに気づいたものの、だからといって絞め技を解くようなことはしませんでした

再埼の絞め技になすすべなく、藻掻くことしか出来ない余接でしたが、突如、チャンスが訪れます

柔道初心者の余接なので、当然、柔道着の正しい着方など知るわけもなく、それが功をなして帯がほどけたことで柔道着に隙間が出来、再埼の絞めを多少緩ませることが出来ました

まさしくその隙をついて、自身と再埼の間に拳を入れる余接

痛覚のない余接は、圧迫で拳が背中に当たっても何ともありませんが、再埼はそうもいかず、掴んでいた手を放しますが、ガッチリと絞めていた足までは解くことはしませんでした

上に伸し掛かられたような体勢になってしまった余接が次にとった行動も死体人形らしいもので、そのまま顔面を支点に倒立前転へと移行し、再埼に対して二人分の体重を乗せたボディプレスを決めます

考えようによっては背中から叩きつけたので、これで一本と阿良々木くん辺りは言いそうなものの、余接はそんなことはせず、言い訳の余地もなく勝ちにいくことにします

幸い、足のロックも解け、互いに立つことが出来るようになり、余接は折れてしまった鼻骨を手で元に戻します

互いに再び向き合いながらも、立ち技でしか勝機を見出せないことを実感した余接でしたが、再埼も認識は同じようで、仕切り直してからの始めの合図とともに、今度は再埼の方から突っ込んできます

そのまま襟と袖を掴まれた余接は、上下左右に揺すられるような形になってしまいましたが、その反動を利用して、そのまま思いっきりジャンプします

そしてそのジャンプは止まることを知らず、その勢いは天井まで到達するほどのものでした

天井に着地するというまさかの行動に初めて意表を突かれた再埼だったものの、腕を伸ばした人間が二人がかりであれば手の届く高さだったのもあり、再埼は掴んでいた手を離すことはありませんでした

そんな状態でも手を離さなかった再埼に感心しつつ、そのおかげで手が届くこの状態を余接は利用し、再埼の両腕を掴んで持ち上げ、天井にぶら下がったまま屈伸をするような形でそのまま天井へと叩きつけました

こうして余接は見事に”天井”ならぬ”天上落とし”を決めたのでした

感想

〈物語〉シリーズにおいて、余接は戦闘要員というのは多くの人が認識していることだと思いますし、それについては自分も激しく同意なんですが、意外と余接がメインで描かれるバトルって少なかったように思います

というより余接の場合、誰かがが頑張っている間に裏でバトルをしていて描かれていないというのもありますが、『例外のほうが多い規則(アンリミテッド・ルールブック)』が強力過ぎてほぼ一撃で終わらせてしまうというのがあるんでしょうけどね(笑)

そういった意味では、再埼は人狼の力を使わず、余接は『例外のほうが多い規則(アンリミテッド・ルールブック)』を使わないというガチの肉弾戦だったので、かなり読み応えのあるバトルだったと感じました

正直な話をしてしまえば、所々の描写で「今どういう体勢だ?」と思う部分もあったりはしましたが、それでも激しいバトルが繰り広げられたのだけは十分に伝わってくるような展開だったので、もしもこの『鳥物語』がアニメ化する際は見所の一つとしてぜひ作画を頑張ってほしい所です

阿良々木火憐巡査との2ケツ

勝負も決まり、約束通り、火憐を紹介してもらえることになった余接

再埼自身、筋はしっかり通すタイプなので、変に詮索せずに火憐に連絡を取ってくれていましたが、逆にそのスムーズさが余接にとっては一つの問題を浮き上がらせていました

それは、かつて余接が阿良々木家に潜入していた際に火憐とも面識を持っており、その誤魔化し方をまだ思いついていなかったということ

なので、昔に阿良々木家に潜入捜査していた事情はあまり深くしられたくなかったので、そこまで細かく説明はせずに「火憐にバレないように紹介してほしい」と余接は頼みました

勝負のこともあり、そこも深くは追及しなかった再埼は、先程、余接が鼻を自分で治していたのを見て、「顔をボコボコにして整形する」という案を出してきましたが、残念ながら余接は復元力が高いためその案は通じませんでした

いっそのこと、ガーゼか包帯で顔を隠すのも考えましたが、あまりに怪しすぎるので、だったらお面でもしてる方が良いと話した余接に、再埼はそのナイスアイディアを採用しました

さらに、余接に行きたいところはないかと聞き、「北白蛇神社」の名前を出すと、再埼は火憐に白バイでそこまで送らせる手筈を整えてくれました

実は、これは火憐にかつて会ったことのある余接にとっては願ったり叶ったりで、白バイの2ケツであれば後ろに乗る余接の顔を見ることは無いし、何より、フルフェイスのヘルメットを被れば顔を完全に隠せる

「お面」からの発想ではあったものの、これは確かにナイスアイディアでした

また、昔と同じ服装で会うわけにもいかなかったので、着ていた柔道着をそのまま借り、火憐が来るのを待つことにします

顔を隠し、服も着替えたもの、火憐が来る直前に靴も履き替えなければいけないことに気が付いた余接は、風説課のオフィスに残っていた兆間から靴を借り、警察署の駐車場で火憐と会うことになりました

「おっすガキンチョ、強そうだな。あれ?その靴、風説課の兆間さんのじゃねえ?」

『鳥物語』より

同じ警察署なのですれ違うことくらいはあるだろうけども、課の違う人間の靴を一秒で見抜いてきた阿良々木火憐

そんな火憐を見て、改めて”阿良々木火憐”という人物のデザインを思い出しはしたものの、当時とは大きく成長しており、身長に至っては20センチ以上も伸びていたのでその変化を感じていました

ただ、声だったりガサツな性格はそのままなようで、初対面ながらもガキンチョ呼ばわりし、特に余接の名前を聞くこともしない辺りはそれを感じさせていました

そのまま余接は火憐が運転する白バイの後ろに乗り、北白蛇神社を目指しますが、距離的にすぐ着いてしまうということで、火憐の提案で少しだけ回り道をしながら向かうことになりました

その道中、期せずして月火の話になり、高校からの月火の過去を知ることが出来ました

  • エスカレーター式の栂の木第二中学校に通っていたものの、高校は直江津高校へと進学。明確な理由までは分からないが、兄である阿良々木くんの後を追った可能性があるもの、当の兄本人には「進路変更したことは言わないで欲しい」と言っていた。
  • 火憐の印象では月火は主体的に一人で何かをするイメージがなく、ファイヤーシスターズ解散後の自治活動もすぐに辞めていた
  • その後も大学には行ったがすぐに辞め、漫画家を目指したり、ダンサーを目指したりしていた

「漫画家を目指していた」というのは初めて聞いた情報だったものの、これは撫子の影響を受けたんだろうと察した余接でしたが、そこは特に言及せず、ダンサー以降の動向を火憐に聞くことにしました

ただ、火憐は今現在、月火が何をしてるのかまでは知らず、実家に帰ってきたのは結婚式の時が最後だと話しました

阿良々木家の結婚式というと、阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎの結婚式が北白蛇神社で行われたことは知っていた余接は、その時に何か言っていなかったのかをさらに聞きました

すると、「あーなんか言ってたような…」とその時の言葉を思い出していました

「本当にやりたいことが見つかったとかなんとか……?わたしはこれのために生まれてきたんだとかなんとか……?」

『鳥物語』より

内容としては曖昧ながらも、「『これ』のために生まれてきた」という重要そうなワードが飛び出してきたことで少し力が入ってしまう余接

ただ、火憐自身は『これ』について深くは聞いておらず、その内容は分からず仕舞いでした

他にも、キャリア警察官になるために必要な資格が取れる総合職試験を受けて、合格点は取っていたものの、大学一年生で受けてるのがバレて失格になった話も聞きつつ、あまり月火の話ばかりしていても不自然かと思い、余接は火憐が警察官になった理由を聞きます

すると火憐は「月火ちゃんがきっかけだった」と話し、中学の時に自宅の玄関にダンプカーが突っ込んできて玄関が大破していた事件の話をし始めました

その犯人は余接ではあるものの、当然、そんなことは口にしませんでした

そのまま火憐の話を聞いていると、彼女はそのダンプカーに乗っていた当て逃げ犯を捕まえるために警察官になったものの、時効をとっくに迎えていてその犯人を捕まえることは出来ないというのを遅ればせながら知りました

だからこそ迷宮入りしてしまったことが傷となって心に残ってしまい、玄関を大破させた当て逃げ犯を捕まえることは出来なくても、己の正義を成し遂げるために、概念としての『当て逃げ犯』を追っていると話します

さらに、その時に言われた、兄である阿良々木くんの言葉も大きかったらしい

大破した玄関のところで、「お前は月火ちゃんのために死ねるか?」と質問してきた兄に対して、「笑いながら死んでやる」と答えていましたが、火憐は妹を守るためには長生きしなければいけないし、長生きしたいんだったら、やりたいこととやることはなるべく一致させておきたいと考え、警察官になったとも話してくれました

あくまでその犯人が余接という点を除けば非常に良い話ではあったものの、だからといって深入りも深堀もせずに聞いていた余接は、そこまで姉に思われている妹からは結婚式以降は連絡がないのか聞いてみましたが、どうやら無い様子

そんな会話をしていると、目的地である北白蛇神社に到着し、火憐とはそこで別れることになりました

感想

今回の月火探しにおいて最も重要だと思われる人物でしたが、やはり重要な情報を持っていましたね

月火が失踪した理由において、『これ』というのは大きな意味合いを持っていると思わされる展開ではありますが、そこを敢えて濁す書き方は他作品においても物語の王道的な引っ張り方

ただ、こういうのがあるからこそ先が読みたくなるというのも読者の性というやつでしょうね(笑)

実際、自分がここまで読んだ時は、気になり過ぎてそのまま最後まで読み切りましたしね

もしも、わずかな可能性ではありますが、原作未読の状態でここまで読んでいる方がいたら、同じくそのまま最後までこの記事を読み切ってほしいものです

そして、月火の捜索とは直接のかかわりはないですが、火憐が警察官になった理由が明かされ、しかもそれが余接が関係していたという展開は驚き

『偽物語 つきひフェニックス』にて、余接が作中で初めて「例外のほうが多い規則(アンリミテッド・ルールブック)」を使ったのが、その阿良々木家の玄関を大破させた事件の際でしたし、何よりその実行犯こそが余接ではありましたが、それが火憐が警察官になるきっかけの一つになるとは思ってませんでしたね

〈物語〉シリーズに限らず、長く続いている作品&時系列が進む作品というのは登場キャラの成長を感じられるのが嬉しかったりもしますが、こういう物事の繋がりを感じることが出来る描きというのは驚きとともに、「よくあれを伏線に繋げたな」と原作者の方に感心させられることも多いので、こういう時ほどシリーズ作品を読み続けてきて良かったと思うことはありません

そういう意味では、今後も西尾維新先生には〈物語〉シリーズを書き続けていただき、さらなる驚きと嬉しさを提供し続けていってほしいなと感じました

八九寺真宵&忍野扇との再会

火憐と別れた余接は、北白蛇神社の目の前まで来て、詣でに行かないのも失礼かと思い、そこの神様である八九寺真宵に挨拶に行くことにしました

八「おや、お久しぶりですね――お似合いですね、柔道着。もう会えないんじゃないかと思っていましたよ、阿良々木さん」
斧「僕の名前を元変態みたいに言うな。僕の名前は斧乃木だ」
八「失礼、嚙みました」
斧「違う、わざとだ」
八「嚙みまみた」
斧「わざとじゃないのか」
八「相まみえた」
斧「今まさにね」

『鳥物語』より

八九寺に対して恒例の挨拶も終わり、余接は世間話をしつつも、この町に来た目的もそのまま八九寺に伝えました

斧「阿良々木月火を探しに来たんだ」
八「それはそれは」
斧「もっと言うと、殺しに来た」
八「だと思っていました」

『鳥物語』より

神様である八九寺にはすべてお見通しだからなのか、余接の言葉に全く動揺することもなく、また止めるようなこともしませんでした

続けて、余接は念のため、月火の居場所を知らないか聞いてみますが、八九寺は「神のみぞ知るとは言えませんね」とどっちつかずの返答

あくまで中立的な立場にいる八九寺は、余接の妨害も手助けもすることはありませんでした

ただ、一つだけ、八九寺は余接の重要な勘違いを正すアドバイスはしてくれました

さっき白バイで火憐と2ケツをしていた時に、彼女は「月火が来たのは”結婚式”の日が最後」と言っていましたが、その結婚式というのは阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎの結婚式ではありませんでした

火憐が言っていた”結婚式”というのは自分自身の結婚式のことで、火憐は中学の時から付き合っていた瑞鳥(みずどり)くんと結婚を果たしていました

さらに、職場では旧姓で通しているものの、本名は瑞鳥火憐であり、二人は今、阿良々木家に住民票を置いて暮らしているらしい

しかも、月火は姉の結婚式には出席したものの、兄の結婚式には出席していなかったことも分かりました

つまり月火は、兄の巣立ちから目を逸らし、姉の巣立ちを見届けて、ひとりだけ巣に取り残され、さらに「いつでも帰れる場所」をも失くした後、失踪したということでした

こうなってくると月火が言っていた『これ』というのが、姉に心配をかけないように虚勢を張った可能性すらも出てきましたが、いずれにせよ、巣立ちを強要されたような形になってしまった月火

そんな彼女のことを考えながら、余接は北白蛇神社から離れて、また別の場所を訪ねていました

そこは直江津高校の一年三組

正確には、存在しないはずの一年三組に訪れていた余接は、その教卓に座る忍野扇との対面を果たしていました

「やあやあ。僕のところにまで来てくれるとは思わなかったよ、斧乃木ちゃん――来なくてもよかったのに、愚かだねえ」

『鳥物語』より

かつてニアミスはあっても、ここまでの近距離で話すことはなかった余接でしたが、月火が直江津高校に通っていたという情報があったので、念のために寄ったことを扇に伝えました

そして、扇が月火の失踪に噛んでいないか聞いてみると、扇は「噛んでいない」と答え、さらに高校時代ですら噛んでいないと話してくれました

そもそも月火のようなタイプはこの一年三組に来ることはないので当然と言えば当然ではあるものの、それでも直江津高校に通っていたことは間違いないので、余接は月火がどんな高校生活を送っていたのか扇に聞くことにします

すると扇は、中学時代ほどのエピソードはなく、良くも悪くも普通の高校生だったと話し、「憧れの存在がいなければ、フェニックスと言えど、そんなものなんだろうね」と話しました

他にも、入学当初はバスケ部に入り、神原たち黄金世代が抜けてガタガタになった女子バスケ部の立て直しに尽力した後、すぐに辞めて、野鳥観察部を設立したらしい

そこまで話した後、またいつも通りの軽口に戻った扇でしたが、余接はこの他にももう一つ、この教室に居続ける忍野扇にだからこそ聞いてみたいことがありました

それは、変化も成長もせず、中退も卒業もせず、直江津高校の生徒であり続ける理由

その質問を聞いた扇は、面白がるように軽口を叩きながらも、その答えを教えてくれました

かつて吸血鬼になってしまった阿良々木くんは人間に戻りたがっていましたが、その理由は、直感的にとはいえ、成長も変化もしない不老不死や不死身が抱える孤独を見抜いていたからでした

逆を言ってしまえば、阿良々木暦の裏の存在である忍野扇の現状は、大人になりたくないという可能性の一つであり、それこそが宿命であり宿業なんだと話します

さらに扇は、余接の心の内を見透かすかのようにその質問の意図を汲み取り、「本当の自分はこうじゃない」と考えているように見える余接に対して、余接が制作された意図を教えようかと話します

ただ実際のところ、扇が知っているかどうかは定かではないし、その後に続く言葉は「僕は何も知らないよ――君が知っているんだ、斧乃木余接」といつも通りの口癖を発してはいたものの、続けて扇からその正体を知らずにいられるのかどうか質問されてしまいました

それを聞かれた余接は、同じく、自分がフェニックスだと知らない月火のことを思い浮かべます

彼女はどんな大けがをしても、死にかけても復活しますが、そういった時に誰かが口を滑らせてしまったしても、自浄作用によってその事を忘れてしまいます

逆を言ってしまえばその自浄作用は、月火にとって自分の正体を忘れなければいけないほどに衝撃的な事実だということ

自分自身に向き合うことはそれほどまでに厳しい事なんだと余接は考えながらも、余接は扇から自分の正体を聞くことはせずに、その場を去っていきました

感想

今回は登場するだけで良い意味でも悪い意味でも空気感が変わる2人のキャラクターが登場し、余接と絡んでいましたね

まず八九寺真宵ですが、彼女は相変わらず誰にでも噛みまくり(笑)

この辺りは言葉遊び風にいうなら、”神様”ならぬ”噛み様”だからこその噛みっぷりといった感じでしょうかw

そんな彼女が齎した一つの情報

火憐から”結婚式”というワードを聞いて、阿良々木くんと戦場ヶ原の結婚式だと思った人はかなり多いと思いますし、私自身もそうでした

特に、阿良々木くんが結婚したことに関しては、かつて『戦物語』の告知でメッセージムービーもあったくらいなので、原作を読んでいない人ですらそう感じるかもしれません

【『戦物語』メッセージムービー】

そんな思い込みの裏を突き、実は話している火憐自身の結婚式だったいう驚きの事実

かつて火憐は『猫物語(黒)』で阿良々木くんから「好きの定義」を聞かれたことがあり、その時に「顔見て、こいつのガキを産みてーなって思ったら、それが好きってことなんじゃねえの?」と答えていましたが、それを見事に有言実行していくかのような人生を送り続けていて、生き様の部分でも彼女らしさを実感しました

ただ、それによって月火が孤独になってしまったというのは皮肉な話

火憐自身、意図はしていなかったでしょうし、誰も責めることは出来ない事象ではありますが、こうして文章として見せられると、月火が感じた孤独感に虚しさを感じてしまいます

そして、次の忍野扇も相変わらず

今回は”彼女”で良いと思いますが、彼女が登場するととにかく空気が不穏になる

ただ、扇自身も語っていますが、変わらないことこそが宿命であり宿業でもあるのを考えると、彼女は存在し続ける限り、この不穏さを帯びたままで居続けるんでしょうね

そんな彼女との会合でも重要そうなワードが飛び出し、いよいよ物語の大詰めも近づいてきます

その結末を是非とも見届けてほしいですね

ちなみに、今回も八九寺は名前を噛む恒例のやり取りを見せてくれていましたが、この「噛みました」の一連の流れをまとめた記事を書いたことがあるので、興味がある方は是非読んでみてくださいね

解説

ここでの描写解説は3つさせていただきます

まず1つ目が、八九寺と余接の会話の中で登場した「幽霊になって、幸せかどうか」の部分

このやり取りは『傾物語』でされており、アニメで言うなら「まよいキョンシー 其ノ壱」で余接が阿良々木くんにこの質問を託し、「まよいキョンシー 其ノ肆」にてその答えを回収した流れになります

この質問からの回収は、『傾物語』のエピソードの流れも含めてかなり綺麗に回収されているので、うろ覚えの方は見直してもいいかもしれません

次に2つ目が、忍野扇が月火と2ケツをしたと言っている部分

これは『終物語(下)』「おうぎダーク」で、月火が漫画家を目指していた撫子の家に遊びに行って話をした後、帰ろうと撫子の家を出たところで扇と出会い、自転車に乗せてもらったシーンですね

アニメで言うなら「おうぎダーク 其ノ貳」で描かれていて、扇が登場した瞬間、白黒になる演出は不穏さが増して印象深かったです

最後に3つ目が、扇が余接に贈った言葉です

「不幸でい続けることは怠慢だし、幸せになろうとしないことは卑怯だよ」というセリフは『終物語(中)』にて登場しており、アニメでは『終物語』「しのぶメイル 其ノ陸」にて登場しています

この言葉は余接が阿良々木くんに言った言葉なんですが、あの時の名言を再び拝めるだけでなく、それを余接自身が考えさせられる展開になるとは思ってもいませんでしたね

ちなみ、この名言は個人的に〈物語〉シリーズにおいて屈指の名言だと思っています

そんな〈物語〉シリーズの名言の数々を集めた記事もありますので、興味があれば是非

完全に抜け落ちていた一人の「化物」

八九寺真宵や忍野扇との会合を終えた余接がそのまま撫子の家へと戻ると、撫子は老倉の家の調査がすでに済んでおり、家に戻ってきていました

ただ、撫子は両親と一緒に食事をしていたようで、かなりぐったりしている様子

それもあって、先に余接から一日の調査報告をすることにしました

柔道対決をしたり、火憐と白バイで2ケツしたり、北白蛇神社に行ったり、直江津高校に行ったり

その報告を聞いた撫子は、火憐が結婚していたことは知らなかったようで、元々繋がりも薄かったから招待もされていなかったらしい

その報告を聞いた後、撫子は老倉の家を覗きに行った報告を始めますが、どうやら老倉はかつて住んでいた実家をリフォームし、そこに住んでいるとのこと

一戸建てとなると月火を匿っている可能性も上がってきましたが、なんと撫子は外から覗くだけでなく、中にも這入ったらしく、その可能性を否定します

まさかの大胆な行動に驚く余接でしたが、撫子は自身の「蛇足のスキル」を使ってサインペンで老倉の家の壁に扉を描き、その扉を使って中に這入ったらしい

しかも、まずはペンでホワイトを描き、そのホワイトを使って扉を消してくるという徹底ぶり

そんな永久機関のような能力の使い方をしている撫子に余接は危機感を覚えますが、今はとりあえず考えるのはやめて、撫子の調査報告を聞くことにします

撫子は老倉の家の収納までチェックしたものの月火の痕跡は見つからず、洗濯物にもそれらしい物は無く、誰かが逃げるように物を撤去したような様子もなかったらしい

そこまで聞いた余接は、老倉は無関係だと判断し、一般市民である彼女にはこれ以上関わらないようにすると話します

それを聞いた撫子は、老倉は一般市民ではなく、役場の職員だから役人だと話したところで、とある可能性を思いつきます

余接はその可能性を聞いて、そんな隠蔽工作のような真似を経験もなく出来るわけがないと考えますが、そこで”ある人物”のことが思い浮かびます

その人物は、かつて直江津高校に通い、卒業後は世界を周りながらボランティア活動をしていたものの、いつの間にか戦争仲裁人として地球から戦争をなくすために行動を起こし、世界からすべての国境線を無くすことを理念に活動している人物でした

そして”彼女”は、「昔の自分」をあらゆる記録から抹消するための一つとして、生まれ育った町にある役場の情報もご丁寧に抹消していました

その世界規模の隠蔽工作は、当時の役場の職員であれば作業に駆り出されているし、時期的に老倉はそれを手伝っている

つまり、老倉は世界規模の隠蔽工作の経験があったということ

そのことを失念し、頭から抜け落ちていた余接は、撫子に一つの質問をぶつけます

「阿良々木月火って、どれくらい付き合いが深かった?羽川翼とは」

『鳥物語』より

阿良々木暦の同級生で、クラス委員長だった羽川翼

そして彼女は、怪異殺しの吸血鬼ともタメを張るほどの”人間”であり”本物の化物”でもありました

撫子は羽川翼との接点はほとんどなく、細かいことまでは分からないものの、月火と羽川は貝木が詐欺を働いた時に一緒に動いていたことは知っていたので余接に話します

ただ、だからと言ってそれが今回の月火の失踪とどう関わっているのかまでは分かっていませんでした

なのでそのことを余接に質問すると、余接はこれまでの月火の調査や逸話を踏まえた上での結論を話してくれました

  • 月火が「なんでも知ってるおねーさん」こと臥煙伊豆湖の目を逃れるだけでなく、姿を消し続けていられる理由は、同じことを成し遂げた羽川翼と一緒にいる可能性が非常に高いから
  • 火憐の影響でファイヤーシスターズを組んだように、千石撫子の影響で漫画家を目指したように、煌びやかに輝く人間を真似る傾向があった月火が、次は羽川翼を真似るために彼女の後を追った場合、それは言い換えてしまえば、フェニックスが化け猫を真似ることにも繋がり、その緊急度は桁違いに跳ね上がる
  • 羽川翼は「ひとりで怪異を作り出せる才覚の持ち主」であり、その能力で”しでの鳥”を群れを作って、戦争を停めるための軍隊を作るどころか、自分自身を不死身の化物に変えることも出来てしまう

この結論に思い至った余接は…

そもそも臥煙伊豆湖が余接にこのことを直接言わずに、自ら考えさせるように動かしたのは、無気力だった余接が自分で気付くことで危機感を持たせ、モチベーションを上げさせたかった狙いもあっただろうと考えました

そして、懐かしい人間たちや新しい人間たちと直接話しをさせることで「それだけは止めなければ」と思わせたかった狙いもあったんだろうとも考えました

そして、その狙いは見事に成功し、余接自身のアップデートも完了させて、改めて、阿良々木月火暗殺計画が再始動することになりました

感想

正直、この流れは全く予想できていなかったので、この展開を見た時は鳥肌が立ちました

序盤でも撫子が疑問に感じていましたが、たしかに”しでの鳥”は不死性を持っているというだけであって誰かに危害を加えているわけではないし、加えていたとしてもミスを誘発するだけで、そこまで危険視するほどの怪異だとは『偽物語(下)』や『愚物語』の時点でも感じていませんでした

ただ、それが他の怪異、ひいては羽川翼という人間と混ざり合った時の危険度がここまで高くなるとは…

それこそ、『化物語』や『傷物語』で登場した時なんかは夢にも思っていませんでしたが、羽川翼という人間の優秀さは味方であれば最高ではあるものの、敵に回った時は本当に最悪

当時から彼女の頭脳や能力はズバ抜けていましたが、それが悪い方向に向かった時の脅威は桁違いです

それを容易に想像させるだけの描きがアニメでもされてきましたし、『結物語』でも彼女が大人になってどんな活動をしてきたのかも描かれてきているので、それらの符号を見事に合致させて、余接だけでなく、読者にも脅威度を実感させる展開にした西尾維新先生には感服させられましたね

解説

この辺りになってくると解説というより補足になってきますが、大人になった羽川の動向も、自身の過去を消す際に月火に同行して戻ってきたという描写も、なんなら月火がアメリカの大学を辞めてダンサーになろうとしていた部分も、『結物語』の「みとめウルフ」にて語られていますので、細かな部分を思い出したい方はそこだけでも読んでおくと良いかもしれませんね

南極大陸

月火が羽川翼のところにいる可能性を見出した余接は、彼女を捕まえるために南極大陸へと向かいました

ここはかつて、忍野扇が忍野メメを軟禁した場所でもあり、厄介者を隠すにはうってつけの場所でもありましたが、余接がここに訪れた理由は羽川翼のアジトの一つが南極大陸の山にあったからでした

ご丁寧にも羽川は世界中にある住居の場所を公式ホームページに掲載しており、その中で月火と潜伏するならここだと判断しての来訪でしたが、時すでに遅く、アジトはもぬけの殻

きっと羽川は老倉に接触する人間が現れればすぐに動けるように監視していたのだろうと余接は思いながらも、誰もいないアジトの中を往生際悪く歩き回っていました

「私、もっと簡単だと思てたの――世界から国境をなくすのは」

『鳥物語』より

突然、背後から声を掛けられた余接

音もなく後ろを取られたことやアジトには誰もいないにもかかわらず、リーダーの羽川は残っていた事実に驚きながらも、そのまま振り向くことなく会話を続けます

彼女は、余接に掛けた言葉を本気で思っており、国境をなくすためであるならば、何年でも、何十年でも、何百年でもかけていく覚悟を持っていました

そのために月火を拉致したのか余接が質問すると、月火は自らの意志で羽川の元を訪れたことを話します

余接はこれまでの調査から、月火は煌めくものに惹かれやすく、自分の意志で来たとしても、羽川に賛同した同志というわけではないということを理解していました

その上で、世界中から英雄ともてはやされている今より、学生時代に「たかが恋愛」で怒りを覚えていた時の方が充実していたのではないかと羽川に話すと、彼女は不快感を表した様子でした

羽川が恋愛感情を「たかが」と言われることに嫌悪感を覚えることを知っていた余接は、この反応で、後ろの人物は羽川翼だと確信しました

そうであるならば、フェニックスである月火を殺すよりも、まだ不死身となっていない羽川翼を殺した方が手っ取り早いと、さらに彼女の動揺を誘うため、阿良々木暦の名前を出しながら揺さぶりをかけていきます

しかし、それが裏目となって羽川には余接が阿良々木暦と接触する前にここに来たことを看破されてしまいます

かつて、羽川翼に勝った人間は阿良々木暦しかおらず、わずかでも勝率を上げるのであれば、寄り道をしてでも阿良々木くんの元へ訪れるべきだったと反省しつつも、会話をしながら周囲の生体反応を探り、今は周囲も含めて一人しかいないことを確認していました

それを確認した余接は、振り返りながら身体を捻り、勢いのままアンダースロー気味に、必ず殺す”必殺技”を繰り出しました

必殺技を繰り出したものの、余接自身、あの羽川翼を一撃で仕留められると思ってはおらず、実際、2つの理由から照準がズレて、余接の肥大化した人差し指は標的の下半身に当たる形になってしまいました

1つ目の理由が、無理な体勢から必殺技を打ってしまったことで軸足の膝が抜けてしまったから

そして2つ目の理由が、後ろにいた相手は羽川翼ではなく阿良々木月火だったから

以前会った時からまるで成長していないかのような見た目ではあるものの、髪色は白くなっていた月火

月火は余接の技を喰らい、下半身が吹っ飛ばされた衝撃で余接の方へと飛ばされながら、大きく両腕を開いて余接の体に抱き付きました

それを躱すことが出来ず、そのまま押し倒される形になってしまった余接は、背中から伝わる振動で、先程の攻撃で膝が抜けてしまった理由も察しました

山全体が揺れているような振動は、地震ではなく噴火による揺れ

南極の活火山内部に基地を作るアホや天才がいるとは全く思っておらず、ましてや証拠隠滅の道具にするとも想定していなかった余接

しかも、余接を完全に消すために火が弱点の火山を使う徹底ぶりや月火を使って動揺を誘う小賢しさもあり、羽川のこの手腕に感心させられながらも、これはもはや眷属でも奴隷でもなく、人類の家畜化に近い思想だとも思っていました

そんなことを考えながらも揺れは徐々に大きくなり、抱き付く月火も全く微動だにしない中で、その月火が余接に話しかけてきました

火などものともしない不死鳥で、革命家でもない少女が、ぬいぐるみにでも話しかけるように囁く声は、余接の耳にしっかりと届きます

生き残ったら――ううん。
焼け残ったら伝えてよ。斧乃木ちゃん。

こんな偽物だらけの世界は滅んじゃっていいと思うんだよね、お兄ちゃんー―って。

『鳥物語』より

この日、南極大陸で起こった過去最大級の火山活動があったニュースが世界中を駆け巡ったものの、しかしこれは、これから起こる”不死鳥の翼”が巻き起こす平和大戦の幕開けにすぎませんでした

感想

失踪した阿良々木月火をやっと見つけたものの、やはり羽川が絡むと一筋縄どころの話ではないくらい、物事が大きくなる

彼女自身、自分の掲げる理想に従って動いているのは分かりますし、それが正義であるのも理解はできます

なにせ国境を無くして戦争を無くそうとしているんですからね

ただ、それはもはや一個人が口出しして良いレベルを超えている

ボランティア活動をしていたころは「和製ジャンヌダルク」と言われたものの、今や戦争仲介人と呼ばれて指名手配犯になってしまったのが良い証拠です

そう考えると、この”化物”を相手取るには余接では役不足のような気がしますし、今回、羽川に良いようにしてやられてしまったのもしょうがないような気もしますね

そんな中で、月火自身が語る「偽物だらけの世界」という言葉の重みも分かるような展開が、今回の『鳥物語』においては描かれてきたように思います

察するに、月火は自身が”しでの鳥”ということはすでに分かっている状態だと考えられます

その上で、自分は人間ではなく化物で、これまで家族だと思っていたものも”偽物”で、本物のように煌びやかなものに憧れているけど、自分は決して本物にはなれない”偽物”でもあると思ってしまった

自分という”個”を求め、変化や成長を求めながらも、どうあがいても偽物である自分にはそれを手に入れることが出来ないことを知ってしまった絶望感は、正体を知ってしまい、大人になっていくにつれて生じる周囲とのズレも相まって、変えようのない事実として月火は受け止めてしまったのかもしれません

また、余接自身もかつて同じ言葉を阿良々木くんに投げかけていますが、余接も影縫たちに作られた人形で”偽物”だからこそ、偽善的なこの世界に嫌気がさしていたのかもしれませんね

この辺りは個人的な考察ではありますが、それでも月火や余接には幸せになってほしいと思わせられるような展開で、今後がかなり気になる展開となっていましたね

解説

羽川が恋愛において「たかが」と言われることに嫌悪感を覚える描写がありますが、これは『化物語(下)』「つばさキャット」でも描かれていた部分で、アニメでは「つばさキャット 其ノ伍」で描かれた部分になります

「お前は羽川が家族のことでずっと積み重ねてきたストレスの権化なのだろう?そのお前が――たかが数ヵ月の恋愛のことで」
たかが?十数年積み重ねてきた家族の苦しさが、数ヵ月募らせた恋愛の切にゃさに劣っちゃいけにゃい理由でもあるのかにゃ?」

『化物語』「つばさキャット」より

ストレスを抱えてブラック羽川となった彼女に対して、阿良々木くんが「たかが数か月の恋愛のことで」と発した時、ブラック羽川がキレた描写はかなり印象深く残っている人も多いかもしれませんね

青年となった我らが主人公

後日談、というか今回のオチ

――というわけで、ぶっ殺されたくなければ僕の任務に協力しろ。義理の妹に、萌えてもらおうか

『鳥物語』より

月火に押し倒されながらも、再埼みとめとのバトルですでに寝技の経験があった余接

そのおかげでブリッジで体勢を引っ繰り返すことに成功したものの、火山の噴火をもろに浴び、そのまま吹き飛ばされてしまいました

月火の採集に失敗してしまったものの、噴火のおかげで基地からの脱出には成功させ、そのまま空中で『例外のほうが多い規則(アンリミテッド・ルールブック)』を使ってアメリカのアラスカ州に流れる雄大な川沿いにやってきました

そこにあるDIYと思しきログハウスに住んでいる青年は、斧をふるって薪を割っており、髪も髭も伸び放題で野性味が増し、もう高校生の少年とは思えない姿をしていました

証人保護プログラムを受けている彼が、今はなんと名乗っているかは分かりませんでしたが、焼けてほぼ裸に近い余接の姿を見て、話しかけてきます

久しぶりに空から女の子が降ってきたかと思えば――若い頃、ねんごろに遊んだ童女から責任を取ってと詰め寄られたら、マジにならずにはいられないな

『鳥物語』より

そんなことを口にする彼は、新たなる斧を持つために、持っていた斧を切り株に置きました

何があった?

TO BE CONTINUED
『TUBASA PHOENIX』

『鳥物語』より

感想

同じ失敗を繰り返さないために余接は彼の元へと訪れたんだと思いますが、それにしても物語のオチでやっと登場するとはね(笑)

よく他の作品でも「主人公は遅れて登場する」というのがありますが、彼の場合は遅すぎですw

それでも、やはり彼が動いてくれるというだけで、この状況を何とかしてくれるかもしれないという期待感を持たせてくれる展開になったので、次の「つばさフェニックス」が大いに楽しみになる展開になりました

解説

ここでは解説を2つさせていただきます

まず1つ目が、余接の「義理の妹に萌えてもらおうか」というセリフ

このセリフはかつて阿良々木くんも使っていて、原作小説だと『偽物語(下)』「つきひフェニックス」で、アニメだと『偽物語』「つきひフェニックス 其ノ陸」にて登場しています

これは影縫余弦との対決の際に、余弦から「偽物の妹でも愛せるのか?」と聞かれた際に答えた言葉ですね

その時のやり取りだけを抜き出すとこんな感じです

「本物や思てた妹が実は偽物やゆうて知ってもても、おどれはこれまでと同じように、その妹を愛せるんかいな?」
「愛せるさ。むしろこれまで以上に愛してやる。義理の妹なんざ――萌えるだけだろうがあ!

『偽物語(下)』より

この『鳥物語』は「再燃(リブート)」というのが一つの表題としてあるように感じていますが、まさかこんなところでも兄による妹愛が再燃する展開を見せてくれるとはね(笑)

そういう意味で西尾先生が今回このセリフを持ってきたのかは定かではありませんが、過去作+言葉遊びを絡めた良いチョイスだと思います

次に2つ目が、『鳥物語』と他作品との違いです

今回の物語は「TO BE CONTINUED」と次の物語へと続く終わり方となっていますが、なんだかんだでこういう次巻跨ぎの展開というのは稀です

例外的な話をしてしまえば、モンスターシーズンにて撫子が主体で描かれていた「まよいスネイク」「よつぎシャドウ」「おうぎフライト」から『死物語(下)』に続くというのがありますし、『暦物語』「こよみデッド」から『終物語(下)』「まよいヘル」に続いたエピソードというのもあります

ただそれはあくまで短編のような展開から別の物語に続く内容になっていましたし、今回の『鳥物語』のように次の『鳳物語(おおとりものがたり)』へと1巻丸ごと対をなして展開されるエピソードは本当に稀です

正直な話をしてしまえば、週刊や月刊などといった漫画や小説投稿サイトなど、一定の更新頻度が保たれている作品であれば、こういう跨ぎも良いとは思いますが、発売日も未定であり、下手したら一年以上空いてもおかしくない小説という媒体で、この手法を取るのはあまり良い手とは思いませんでした

なぜなら、内容を覚えている人の割合が少なくなってしまうから

人によっては発売日前に読み返したり、それ以前に何度も読み返して内容を覚えている人もいるかもしれませんが、どちらかと言えば一回読んで終わりの人の方が多い気がします

実際、自分は「こよみデッド」から「まよいヘル」に繋がった際は少し混乱しながら読んでいた記憶があります

多分、そんなことは重々承知の上で、今回の形式は取っていると思いますが、逆を言ってしまえば、そうなってでも次の巻へ持ち越さなければならないくらい濃密な内容が待っているということなのかもしれません

この辺りは一ファンとしての希望的な部分も混じってはいますが、それでも今回の『鳥物語』に続く『鳳物語』が最高のエンドを迎えることに期待したいですね

『鳥物語』ネタバレ感想まとめ

『鳥物語』のネタバレ感想と解説でした!

月火の失踪からはじまる一連の流れが、世界を巻き込む大戦へと発展するとは読み始めた時は考えてもいませんでした

ただ、そこに持っていくまでの展開は、西尾維新先生らしい言葉遊びが盛り込まれていたというのもあって非常に楽しめましたし、何より、過去作からしっかりと繋がりを感じられる内容が面白さと懐かしさを感じられて凄く良かったです

今回の『鳥物語』はファミリーシーズンとなっており、そのシーズンの最後を飾る『鳳物語』へと続く内容となっていますが、その次巻も大いに期待が持てそうな展開で、今から発売が待ち遠しくてしょうがないです

しかも、その『鳳物語』は「再終話 つばさフェニックス」というサブタイのようで、”再”び”終”わる”話”とはなんとオシャレ

そんな彼ら彼女らの「終わりの話」を是非とも見届けたいと思った今日この頃です

ちなみに、これを機会に原作小説を追ってみようと思った方は、オススメの読む順番などをまとめた記事を書いていますので、参考にしてみてくださいね

それでは今回はこの辺で!

また会いましょう