どうもウハルです!
今回は〈物語〉シリーズのオフ&モンスターシーズン『業物語』の「あせろらボナペティ 其ノ壹」の感想&解説を語っていきたいと思います!
これまでも〈物語〉シリーズという作品は高品質な作画や特徴的な演出、独特の映像表現などによって視聴者である私たちを魅了し続けてきましたが…
今回の「あせろらボナペティ」も例に漏れない素晴らしい出来映えに、もはや劇場版かと勘違いするレベルのクオリティでした!
よく動く作画もそうですが、様々な描き方で見せてくれる心の動き、色の強弱や陰影の付け方、そして美麗なキャラデザ作画とどこをとっても魅了されっ放しの30分でした
もともと原作勢なので内容自体は知ってはいましたが、それでも思わず息をのんでしまうくらい「美しい」と感じてしまったのは、もはや言うまでもありません
そして、今回の話でスーサイドマスター&トロピカレスクが登場したことで、今までずっと気になっていたキャストがついに判明しました!
どちらも見事にキャラクターにマッチした演技を見せてくれたので、作画による視覚的な部分のみならず、声による聴覚的な部分でも見事に魅了されてしまいました
ということで今回は、そんな魅了されっぱなしだった『業物語』「あせろらボナペティ 其ノ壹」の感想と解説を語っていきたいと思います!
なお、前回の〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズンの『業物語』「残酷童話 うつくし姫」の感想&解説も語っていますのでよろしければそちらも是非!
また、〈物語〉シリーズのアニメや原作小説についてまとめた記事もありますので、他の〈物語〉シリーズに触れてみたいと感じた方はそちらも参考にしてみて下さいね
『業物語』「あせろらボナペティ」とは?
”キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードってぇ名前は、俺様が考えてやった”
六百年ほど前、今はもう滅びた国に『うつくし姫』と呼ばれる女の子がいました。その美しさに誰もが命をささげ、彼女が歩く道は死体の山となりました・・・。
青春は、童話のように残酷だ。原作『業物語』巻末より
こちらの作品はシリーズ通巻20冊目の作品になり、今回の「あせろらボナペティ」を含めて4つの短編が収録された小説です
こちらに収録されている4つの短編というのは「残酷童話 うつくし姫」「あせろらボナペティ」「かれんオウガ」「つばさスリーピング」となり、時系列的には前回放送された「残酷童話」の後の続きの物語になります
そして、今回の「あせろらボナペティ」は全20章からなる物語になり、「あせろらボナペティ 其ノ壹」は1章から9章までがアニメ化した形になります
『業物語』PV
『業物語』「あせろらボナペティ 其ノ壹」感想&解説
モノローグ&プロローグ
画像出典:〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイトより
”キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード”ってえ名前は、俺様が考えてやった。
自分で言うのもなんだが、クールでハードで、最っ高にいい名前だ。
だけど、正直に言うと、俺様はそのことを、少しだけ後悔してもいる。
俺様はあいつに名前をつけるべきじゃなかったのかもしれないと思うんだ。
ほら、よく言うだろ?ペットに名前をつけたら情が移るって。
その情が、友情だったのか愛情だったのか、それとも劣情だったのかは、今となっちゃあ定かじゃねえが。
しかし確かに言えることがひとつある。あれは食欲じゃなかった。
だって”キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード”じゃあ、料理の名前としちゃ、あんまりいけてねえだろ?
デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターはのそりとその身を起こします
どうやらまた死んでしまったらしい
いつものことではあるので特に驚きはしないものの、それでも今回は凄惨な死を迎えたらしく、身を起こした先に目に飛び込んできたのは、自分の生首でした
自分で首をねじ切ったと思われる乱暴な切り口ではありましたが、スーサイドマスターはその生首を掴み取り、後頭部へがぶりと牙を突き立て食べ始めます
その食事中、その姿を見ていたひとりの女性がふいに声を掛け、「美味しいのですか?」と質問をしてきます
彼女の名前はアセロラ姫
”うつくし姫”とも呼ばれていた彼女の質問に対し、スーサイドマスターは「美味いに決まっている」と答えつつも、そもそも美味い不味いの問題ではなく、『自らが手にかけた食材は自ら食う』という矜持を持っていたので、それをそのままアセロラ姫に伝えました
しかし、そのスーサイドマスターの美学はアセロラ姫には伝わらず、「はあ」とため息をつきつつ、そこから続けて「もうやめたほうがいいですよ」という言葉をスーサイドマスターへと投げかけます
その言葉に、自身の食生活についてやめたほうが良いと言われたのかと思ったスーサイドマスターでしたが、アセロラ姫が言っているのは別のことでした
彼女が言う「やめたほうがいい」というのは、アセロラ姫を殺そうとすること
そもそもスーサイドマスターが死を迎えることになった原因というのは、アセロラ姫を殺そうとするからであり、それに失敗し続け、何度もスーサイドマスターの死を見てきたアセロラ姫は「私を殺すことは絶対に不可能なのですから」と言い、さらに「私を殺そうとしなければ、あなたが死ぬことは一度だってなかった」とも話しました
その言葉自体は最もであり、アセロラ姫を殺そうとしなければスーサイドマスターがこれまで四度も死ぬことはなかったものの、しかし、スーサイドマスターがアセロラ姫に対して持っている感情というのは殺意ではなく、あくまで”食欲”
その真意を聞いたアセロラ姫は、説得も含めて無理だと思いつつ、「召し上がれ。召し上がれるものなら」と自身の身を差し出します
それに対して、スーサイドマスターは「言われるまでもねえよ!」と不意打ちのように飛び掛かりますが、彼女の柔肌に牙を突き立てようとしたところで意識がなくなりました
その事実は、ひとつの現実をスーサイドマスターに齎した結果だとも言えます
どうやら五度目の死を迎えたようです
感想&解説
告知自体はあったものの、アニメでの情報はほとんど公開されていなかったスーサイドマスターがついに初登場!
声を誰が担当されるのか非常に気になっていましたが、演じられたのはベテラン声優である深見梨加さんで、全く違和感のないこのキャスティングは本当に良かったですね
深見さんは『美少女戦士セーラームーン』のセーラーヴィーナスである愛野美奈子を担当されていましたが、そのキャラクター性との違いもあって、最初は全く気が付きませんでした
私自身が深見さんが出演されている作品にそこまで多くは触れていなかったというのもありますが、この「え?この人このキャラ演じてたの?」と同一人物が演じているとは思えない演技を見せつけてくれる役者さんというのは非常にキャラクターに寄り添った演技をしてくれることが多く、抜群の安定感を与えてくれる印象があるので、今後も登場するスーサイドマスターの活躍が非常に楽しみになりました
そして、相変わらず〈物語〉シリーズはどのキャラもキャスティングが素晴らしいなと実感した序盤ではありましたね
なお、このパートの解説は無しになります
一応、序盤のモノローグで”キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード”という名前の由来が語られているんですが、それはこの「あせろらボナペティ」の終盤でスーサイドマスター自らが話してくれると思います
だからこそ、アニメの序盤ではカットしたんだと思いますし、その由来を知るのはこの「あせろらボナペティ」を見ていく上で、かなり楽しみになるポイントだと思っています
なので、ほぼ無いとは思いますが、もしも語られなければ、その時はその理由をここに解説として書かせて頂きますね
食へのこだわり
画像出典:〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイトより
時は遡り、『死体城』の玉座
そこで目を覚ましたスーサイドマスターは、どうやら今回もまた死んでしまったらしい
今回の死因は餓死のようでしたが、このところ食糧に不自由していなかったことを考えると、この死因は珍しいことでした
そんなことを考えていると、スーサイドマスターの唯一の眷属であるトロピカレスク・ホームアウェイヴ・ドッグストリングスが目の前で跪きながら、主の目覚めを待っていたようでした
そんな彼に「おもてをあげよ」と声を掛けると、声を掛けてもらったことが光栄かのように嬉しそうな顔をし、続けて、スーサイドマスターが餓死した原因を話し始めました
スーサイドマスターが餓死した原因は「食糧難」であり、王国の人間が絶滅してしまったかららしい
まさかの理由に驚くスーサイドマスターでしたが、さらに驚くべきは、その原因を作り出した疫病とも言える存在は、かつてその場に存在しているだけで国を滅ぼした『うつくし姫』というたった一人の人間によるものだったということでした
それを聞いたスーサイドマスターは、彼女に強く興味を持ち、さらにこの空腹を満たす一番最初の食材に最適だと考え、彼女を食べる事に決めますが、それを聞いたトロピカレスクは「どうか考え直してください」と平身低頭になりながら説得を始めました
しかし、スーサイドマスターはどれだけ言われようと、自身の”食への流儀”を変えるつもりは全くありません
スーサイドマスターの”食への流儀”とは、「自分が食うのは、自分が殺した人間だけ」ということ
そこはゆずれない一線であり、『うつくし姫』を食べると決めた以上、決めたことを決めた通りにやるのもまたスーサイドマスター
その”流儀”を通すため、善は急げと玉座から立ち上がったスーサイドマスターは、そのまま頭を上げないトロピカレスクの背中を踏みつけながら、「ついてくるなよ」と言い、さらに、起きてからずっとスーサイドマスターのことを”マスター”と呼び続ける彼に、「そんな平凡な呼称で呼ぶな」と言い渡します
その言葉にトロピカレスクは深く謝罪し、改めてスーサイドマスターへの敬意を込めて、スーサイドマスターを見送ることにしました
いってらっしゃいませ、スーサイドマスター。決死にして必死にして万死の吸血鬼、デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター
感想&解説
豪華絢爛とまではいわないまでも、スーサイドマスターが玉座で座っているシーンの豪華さたるや〈物語〉シリーズらしさ溢れる描きとなっていたように感じました
もともとこの作品に登場する内装関係はかなり広めに描かれていることが多く、阿良々木家のお風呂場だったり、『続・終物語』で登場する忍ことうつくし姫が住んでいたお城だったりと、巨大とも言えるような空間が展開されていることが多い気がしています
そんな中で、今回の玉座に関しても、それに負けず劣らずの広さを誇っていましたし、なにより周囲にあった燭台が、部屋の暗さとも相まって不気味さを感じさせながらも、威厳がありつつ、高貴な輝きを放っているようにも感じさせてくれたので、スーサイドマスターが放つオーラを具現化しているようにも感じさせてくれました
こういった演出に関しては印象の部分になってきそうですが、比較的にこのシーンに関してはスーサイドマスターの”王たる存在感”が明確になっていたように感じます
そして、スーサイドマスターの眷属であるトロピカレスクもここで初登場になりましたね
彼の声を担当されている平川大輔さんも多くの作品に出演されていますが、このイケボ感もありながら、少し気弱な感じがキャラとマッチしていて凄く良かったです
また、そのトロピカレスクですが、彼はスーサイドマスターに心から忠誠を誓っている忠誠心の塊みたいな存在なんですが、ここのシーンで彼はスーサイドマスターに踏まれているシーンがありました
このシーンに関しては、後々にスーサイドマスターの唯一の眷属に対する想いなどがしっかりと活きてくる描写だと思っているので、出来ればこの事実があったことを憶えておいてほしいですかね
ここでの解説は原作から1つです
その1つが、スーサイドマスターの食へのこだわりの異端さです
スーサイドマスターは「殺して食う」ことをこだわりとしていますが、その徹底ぶりはもの凄く、原作ではその辺りの描写が描かれています
人間については特にそうだが、人間以外の生き物に関してもそうだ――逆に言うと、自分で殺した食材以外は、できる限り食いたくねえ。
水を飲むのもつらいくらいだ。原作『業物語』より引用
スーサイドマスター自身も水分に関してはそこまで徹底するのは難しいとは考えていますが、実際のところ、血液から流れ出るものを補給できればそれでいいとは本気で考えているようです
しかし、それくらい”食”に対してこだわりを持っている吸血鬼は少なく、トロピカレスクからはそんな偏食は聞いたことが無いと言われ、他の吸血鬼からも異端視されていたようです
そして逆に言えば、「殺したら食う」というのもまたスーサイドマスターのルールであり、どんな理由であれ、自らが手にかけたものであれば、どれだけ不味かろうが毒だろうが、絶対に食べきり食べ尽くすというのを徹底しているみたいです
実際、異端視した他の吸血鬼が「それでは長生きしないぞ」と訳知り顔で忠告してきた時は、その吸血鬼たちを殺し、しっかりと食べたそうです
スーサイドマスター曰く、「好きなもんを好きなように食べる」のが長生きの秘訣らしいですね
アセロラ姫との出会い
画像出典:〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイトより
城を出たスーサイドマスターは空からアセロラ姫の元に向かいますが、その道中で見る死体の数に『うつくし姫』の童話が嘘ではないことを確信します
空中から俯瞰して見るその光景は、まさに異様
その異様な光景を作り出したアセロラ姫にさらに食材として興味がそそられたスーサイドマスターは、アセロラ姫がいる小屋へと辿り着きました
その小屋に入ると、アセロラ姫は火のついた竈門で鍋を焼いており、かつてお姫様だったとは思えない服装をしていましたが、その横顔は筆舌にしがたいほどに美しく、衝動のままに飛び掛かりますが、唐突に意識が無くなりました
そして、どうやらまた死んでしまったらしいスーサイドマスターが目を覚ますと、目の前にはアセロラ姫の顔があり、どうやらこのお姫様はスーサイドマスターが目を覚ますまで膝枕をしていたようでした
スーサイドマスターはその身を起こしながら、死んだ時の状況をアセロラ姫に確認すると、どうやらスーサイドマスターは自殺をしたらしく、しかもその原因がアセロラ姫を殺そうとしたからということを聞かされますが、その意味が全く分かりませんでした
自分で自分を殺すのもそうですが、その理由がアセロラ姫を殺そうとしたからというのがよりその意味不明さを増していましたが、それでもアセロラ姫が嘘を言っていないことは分かりました
アセロラ姫の美しさに牙を立てようとした自分が許せず、自分自身を攻撃してしまったという事実を知り、思わず笑いが込み上げてくるスーサイドマスターでしたが、アセロラ姫は特に動じることもなく、それどころか作っていたポトフを勧め、さらにスーサイドマスターの名前を聞いてきました
名前を名乗るの自体は嫌いでは無いスーサイドマスターが自慢の名を名乗った後、続けてアセロラ姫は自身の名を名乗ります
『うつくし姫』ではないことに驚くスーサイドマスターでしたが、それは「敬称ならぬ蔑称です」とアセロラ姫は言い、さらに「そもそもプリンセスでもなかったんですけれどね」と彼女は言います
そのまま続けて、「どうしてこんなことになってしまったんでしょう」と憂いを帯びた姿のアセロラ姫は美しく、再びその姿に食欲をそそられたスーサイドマスターは、また意識が途絶えました
どうやらまた死んでしまったらしいスーサイドマスターは、今度は右手に心臓の鼓動を感じながら目覚めます
今の状況から、自身が心臓をえぐり出したことが分かりつつ、その心臓を林檎を丸かじりするように食べ始めました
スーサイドマスターが起きたことが分かったアセロラ姫は”吸血鬼の不死性”に感心しつつ、自身がスーサイドマスターのみならず、国にも迷惑をかけてしまい、さらには自身が探している人もここにはいなかったことから、この国からすぐに出ていくことを伝えます
それを聞いたスーサイドマスターは、食材が国から出ていくことを許容できるわけもなく、アセロラ姫がこの国から立ち去らないよう説得を始めます
多くの死を齎しながらあてもなく流浪の旅を続けているアセロラ姫に対し、今の国民が全滅している状況は有効活用すべきものであり、さらに言えば、不死の吸血鬼であるスーサイドマスターであれば、アセロラ姫の近くに居ながらにして、呪いを解く方法を一緒に考えてあげることが出来る
スーサイドマスターとアセロラ姫の利害が一致した提案に、アセロラ姫は一瞬戸惑いますが、その提案を受け入れて、この国に留まることに決めました
「よろしくお願いします」と握手を求めるアセロラ姫の手を取り、握手で返したスーサイドマスターでしたが、初めて直接触れたその柔肌に、スーサイドマスターの衝動は再び喚起させられ、意識が途絶えました
どうやらまた死んでしまったようです
感想&解説
「何回死ぬねんw」って思ってしまうくらい死んでいるスーサイドマスターですが、これは逆に言うと、自身の衝動を抑えられなくなるほどの”美しさ”を持っているのがアセロラ姫だとも言えるんでしょうね
そもそも容姿からすでに特徴的で、金色の髪、銀色の右目、銅色の左目と生まれ持っているものの質が桁違いです
これだけのものを兼ね備えた姿であれば、『うつくし姫』の童話でもありましたが、肖像画として飾りたくなるほど魅了されるのも分かる気がします
ちなみに、アセロラ姫と出会った直後のスーサイドマスターの死因についてはアニメで描かれていませんでしたが、最初の死因は肉体がバラバラになる木っ端微塵です
スーサイドマスターは蘇生感で自身の死因が分かるみたいですが、原作だとその蘇生した感じが「木っ端微塵にされた肉体が再生した感じの蘇生感」と語られています
これに関してはそこまで物語の重要な部分ではありませんが、アセロラ姫に対して攻撃をすると、その攻撃力が跳ね返ってそういう死に方になるというのは頭の片隅に入れておいても良いかなと思っている部分ですね
ここでの解説は原作から3つです
まず1つ目ですが、スーサイドマスターがアセロラ姫の小屋に辿り着けた理由です
はアニメと原作では描き方が違ったので、あくまで原作重視の解説になります
スーサイドマスターはトロピカレスクから『うつくし姫』の話を聞いて城を飛び出しましたが、実はこの時はアセロラ姫の居場所までは知りませんでした
この居場所の部分に関しては、アニメでも特に説明はありませんでしたね
では、どうやってスーサイドマスターはアセロラ姫の居場所が分かったかと言うと、それは空から俯瞰して見た時に、死体がどんどん増えていく方へと向かって行ったその先がアセロラ姫の居場所だと分かったからです
国民の死体で見事に道が形成されていたその絶望的な風景は、足跡よりも明確にアセロラ姫の場所までナビゲーションしてくれていたので、スーサイドマスターはすんなり彼女の居るところに辿り着けたという訳ですね
ちなみに、ここが明確にアニメと原作との描きの違いですが、原作だとアセロラ姫がいたあばら家は死体の山に埋もれているほどの状態にあり、スーサイドマスターはうっかり見逃すところでした
つぎに2つ目ですが、スーサイドマスターが小屋に入れた理由です
これに関しては一見すると普通のことのように思えてきますが、実は吸血鬼にとってはそうでもないことだったりします
過去に『終物語』の「おうぎフォミュラー」で忍野扇が語っていることではありますが、吸血鬼は中にいる人の許可が無いと建物や部屋に入ることは出来ません
それを聞いた阿良々木くん自身は、その経験が無いのでピンとは来てなかったみたいですし、扇も「忍さんは特別性ですし」と話しているので、この〈物語〉シリーズを見ている人にとっても印象に薄く、気付きにくい部分ではあるかもしれませんね
ただ、原作だとその部分には触れられていて、さらに言えばスーサイドマスターも特別性なんだなと分かるような言い回しになっています
吸血鬼は許可がなければ室内に這入れないなんてルールは、俺様の決めたルールではないので、破らせてもらう。
そもそもこんなボロい建物に這入るのに、許可なんていらねーだろ。原作『業物語』より引用
吸血鬼全般のルールよりも自身のルールの方が優先度が高く、さらに言えば、自分が決めてないという理由だけであっさりとルールを破れる辺りが規格外っぷりを発揮してますよね
この辺りはさすがキスショットの生みの親って感じです
最後に3つ目ですが、アセロラ姫の心の美しさの異常さです
この”美しさ”に関しては、すでに多くの人間を殺している時点ですでに異常なんですが、そういう外的なものではなく、アセロラ姫自身が持つ内面的な部分の話です
これに関してはこれまでの言動や行動から見ても、一貫している真っ直ぐさや優しさという部分からも垣間見えてはいますが、それが行動として出ている特徴的なシーンがここでは描かれていたと感じています
そのシーンというのは、スーサイドマスターに膝枕をしていたシーンです
このシーンに関しては、意外とあっさりと描かれているような印象がありますが、逆に言うと、あっさりと見えること自体が異常だったりします
そもそもの話、自分を殺そうとしてきた何者かがいきなり目の前で木っ端みじんになったにもかかわらず、その誰かも分からない死体を膝枕して、起きるのをずっと待っていることって普通は出来ませんよね
原作でもスーサイドマスター自身がその行動についての異常さを語っています
造形の出来映えについてももちろんそうなのだが、この俺様を膝枕してみせるその度胸が、なんとも言えず美々しい。
なぜなら、俺様はついさっきまで死んでいたわけで――見知らぬ死体を膝枕するってのは、並の神経でできることじゃあねえ。原作『業物語』より引用
こうやって文面として見ると、彼女の心の美しさの異常さがはっきりと分かると思います
すでに知っている仲であるのならいざ知らず、知らない何者かどころか、自分に襲い掛かってきた者の死体を膝枕出来るほどの”心の美しさ”こそが、多くの人間に「自分が悪い」という罪悪感を与えるほどの光を放っていた訳ですね
ちなみに、別ヵ所になりますが、この正し過ぎるような”美しさ”に関しては、弱いものにとっては『毒』になるとスーサイドマスターは語っていて、「この女は美という毒によって多くの人間を毒殺してきたのだろう」とも語っています
食材の仕入れと調理法
画像出典:〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイトより
どうやらまた死んでしまったらしいスーサイドマスターでしたが、アセロラ姫を城に迎え入れることには成功し、アセロラ姫を一旦別の部屋へと行かせた後、玉座にてトロピカレスクにそのことを報告すると、彼からは猛反発を受けてしまいました
ただ、どれだけ反対されようとも、主であるスーサイドマスターが決めたことは決定事項であり、覆ることはありません
スーサイドマスターとしては、トロピカレスクに「アセロラ姫に絶対に近づくな」と忠告の意味で報告したつもりでしたが、彼はスーサイドマスターが人間の名前を覚えたことに驚いた様子でした
それは無視してスーサイドマスターは「貴様程度の吸血鬼ではアセロラ姫の前ではひとたまりもなくバラバラになるだろう」と更に釘を刺します
それを聞いてトロピカレスクはアセロラ姫をさらに危険視しますが、スーサイドマスターは「殺せるようになるまでの間の短い間だけだから何の問題もない」と伝え、トロピカレスクはそれでやっと納得します
トロピカレスクへの説明が終わったスーサイドマスターは、話を切り替えるように「で、トロピカレスク」と彼に意見を求めるように一つの質問を投げかけました
どうしたら『うつくし姫』を殺せると思う?
感想&解説
色々な言葉を並び立ててアセロラ姫を城に連れてきながらも、実は全くのノープランだったというのが今回の「あせろらボナペティ 其ノ壹」のオチですね(笑)
今回の話って、アニメで見ると作画も良いし、キャラデザも良いから全編通してシリアスに見えるんですけど、見方によっては意外とスーサイドマスターに対してツッコミどころがあるような描きになっていたりするんですよね
もともとギャグがあるような内容の話ではないですし、アニメでの描き方も比較的に”クールでハードなスーサイドマスター”の描きになっているので致し方ない部分ではありますが、この前半部分くらいはもう少し面白い部分のスーサイドマスターを出してもいいのかなと思ったりはしましたかね
実はその辺りは原作で少し描かれていたりもするので、この後の解説に回すとします
そんなわけで、見事にアセロラ姫を誘拐してきたものの、殺す方法が全く分からない状態のスーサイドマスターは今後どうするのか?
そして、ここからどのようにして鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼であるキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードが生まれたのか?
まだまだ多くの謎を残した「あせろらボナペティ 其ノ壹」はここで終わりとなります
そしてここでは先程も少し触れたように、原作からクールでハードではないスーサイドマスターの少し面白い語りの部分を4つ紹介していきます
まず1つ目が、アセロラ姫を『死体城』に招いた時のシーンです
これはアニメでは描写だけで終わっていましたが、原作だとちょっとしたやり取りが展開されています
巨大なる『死体城』を前に、あっけにとられた風だったアセロラ姫の様子を見れば、多少は胸が空いたというか、してやったりという気持ちになった。
三度連続で死ぬという失態を晒してしまった手前、多少は威厳を示さないと、今後の関係性に支障をきたす。
すごいんだぜ、俺様。
城主なんだぜ。
ただし、アセロラ姫は、必ずしも城の偉容に驚いたというわけではなかったらしく、
「あ、あなたはこんな大きなお城に、たったひとりで住んでらっしゃるのですか……?」
というリアクションだった。
精神の貧しい吸血鬼だと思われたらしい。
なんということだ。
寂しい俺様というイメージが定着してしまう。原作『業物語』より引用
お城の大きさに誇らしげになるスーサイドマスターも面白いですが、大きな城を見て感じた感想が「一人で住んでて寂しそう」というのがアセロラ姫らしくもあって面白いと感じた部分ですね
たしかに、これだけクールでハードな吸血鬼の部分を見せてきている中で、寂しい吸血鬼のイメージが付くのは嫌ですよね(笑)
そしてここからはアニメでも描かれていた部分になります
つぎの2つ目ですが、トロピカレスクがアセロラ姫の城の滞在を反対するシーンです
アニメだといきなり反対するシーンから入りましたが、実はこの前にアセロラ姫が「同居人の方に許可を取らなくていいのですか?」とスーサイドマスターに聞くやり取りがありました
ここはそれを受けてのスーサイドマスターの語りも含めた部分になります
「はあ。同居人の方がおられるのですか……、では、わたくしの滞在について、そのかたに許可を取らなくてよかったのですか?」
まったく、持てるその凶悪さ、凶悪な美しさに反して、いちいち気遣いと思いやりの女だ――吸血鬼の奴隷にまで配慮しようとは。
俺様は、事後承諾でまったく問題はない、俺様の忠実なる眷属が、主人である俺様の決めたことに反対意見を表明することなんてありえないのだからと説明してやった。
「絶対に反対です。何を考えているのですか、マスター。マスターの居城内に下等なる人間を招くだなんてありえません」
……大反対された。原作『業物語』より引用
ある意味で、王道のようなネタではありますが、前後があるだけであのシーンの印象がガラッと変わりますよね(笑)
アニメだとトロピカレスクに反対されたスーサイドマスターは「ふむ…」と唸っているだけですが、あそこで実は「反対するんだ…」みたいなことを内心で思っていたかもと思うと、少しだけ面白いシーンに見えてきますw
そして3つ目ですが、スーサイドマスターがトロピカレスクの前でアセロラ姫の名前を言った時のシーンです
「案ずるな。貴様に人間の世話をさせるつもりはない――と言うより、むしろお前はアセロラ姫に絶対に近づくなと、今のうちに釘を刺すつもりだったのだ」
「アセロラ姫……、か、下等なる人間の名前を、あろうことかご記憶になられたのですか、スーサイドマスター」
愕然としたように言うトロピカレスク。
ご主人様の記憶力をなんだと思っているのだ。
固有名詞くらい覚えられるわ。原作『業物語』より引用
これはトロピカレスクは別に記憶力について言った訳ではなく、言葉通り、下等な人間の名前を覚えたことに驚いている描写にはなるんですが、スーサイドマスターが記憶力について言われたと勘違いしているこの一コマは個人的には結構好きだったりします(笑)
この勘違い自体はそれぞれが考える”人間”についての考え方の違いから生じたものではあるんですが、それにしてもスーサイドマスターの被害妄想が凄いw
主従の関係ではあるものの、この描写はスーサイドマスターに少し残念感が漂うような雰囲気を感じる描写となっていましたね
最後に4つ目ですが、反対を続けるトロピカレスクに対して一喝するスーサイドマスターのシーンです
「くどいぞ、トロピカレスク。その辺にしておけ。俺様が一度こうと決めたことを、覆したことがあるか」
「け、結構あると思いますけれど……」
むう。
まあそうか。
あるある。原作『業物語』より引用
「いや、あるんかいw」とツッコみたくなる一コマです
アニメではトロピカレスクの返しの部分はカットされていましたが、ここもまたある種の王道パターンみたいな内容になっていました
こういう「一度決めたことをやり通す」とか「嘘をついたことが無い」とかいうキャラクターが、実は過去に幾度となくその信念を曲げていたというのはよくある展開ですよね(笑)
結構あのシーンもシリアス味溢れる感じで描かれてはいたので、もしかしたら空気感に合わないと思ってカットしたのかもしれませんが、この辺りを知っておくと、スーサイドマスターに親近感が湧いてきたりするので、ここも個人的には好きなシーンだったりします
まとめ
〈物語〉シリーズのオフ&モンスターシーズン『業物語』の「あせろらボナペティ 其ノ壹」の感想&解説でした!
もともと〈物語〉シリーズと言う作品は原作重視の作品になるので、そもそも表現も含めてクオリティ自体は高い作品だと思っていますが、今回のエピソードに関しても全体的にクオリティは非常に高く、原作未読勢のみならず、原作既読勢ですらも大満足の内容になっていたのではないかと感じています
実際、文字で見せる原作の面白い部分をしっかりと出しつつも、文字では見せられない世界観を見事に表現し、そこを幻想的に且つ魅力的に描き、「これは凄い!」と思わせられた内容は、一人のファンとしては大満足の内容となっていました
この感想ブログを書いて何度言っているかわかりませんが、本当にアニメ化してくれてありがとうと心から感謝したいくらいです
そして、この後もう少し続く”デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターの物語”とここから始まる”キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの物語”も存分に楽しませてくれることを期待しながら、次回を楽しみにしたいですね
そんな次回は『業物語』「あせろらボナペティ 其ノ貮」になると思いますが、今回の描き方と残りの章数を考えると、次回が「あせろらボナペティ」の最終話になると思います
まだ原作を知らない方にとっては、現状、気になる所満載の状態で「次はどうなるんだろう?」とワクワクしていると思いますが、原作既読勢の私としても「どう描いてくれるんだろう?」とワクワクしているので、一緒にワクワクしながら次回のお話を心待ちにしていきましょう!
それでは今回はこの辺で!
また会いましょう