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『忍物語』「しのぶマスタード 其ノ貮」感想&解説!ギャグもシリアスもアクセル全開な内容は”ぱないの”!

どうもウハルです!

今回は〈物語〉シリーズのオフ&モンスターシーズン『忍物語』の「しのぶマスタード 其ノ貮」の感想&解説を語っていきたいと思います!

前回はミステリー色が強く、ラストの空気も含めてこのままシリアスな感じで行くのかと思えるような終わり方でしたが…

『撫物語』以来の登場となる忍野忍の可愛さ全開&おとぼけ全開のやり取りはやはり面白かった!

また、『愚物語』以来の登場となるものの、その時には見れなかった八九寺真宵の「嚙みました」のやり取りが阿良々木くんバージョンだけでなく忍バージョンでも再び見れたことにはもはや歓喜に近いくらい嬉しかったですね

そしてやはり、少女と幼女が登場した時の阿良々木くんとのやり取りにおけるギャグ方面の安定度が全然違うなと感じさせてくれました

ただ、そんなギャグ要素も見せてくれた今回ですが、しっかりと話自体も進み、さらに言えば展開としては大きく進んだ回ともなっていました

五人の行方不明者の存在とそれぞれの繋がり、忍の生みの親とも呼べるスーサイドマスターについて初めて知ることになる阿良々木くんと今回の事件の繋がり、変わり果てた姿になってしまったスーサイドマスター

そういった事柄も今回の「しのぶマスタード 其ノ貮」では提示され始め、点となっていた事象が少しずつ線で繋がりを見せ始めた回ともなっていたので、今回事件の”謎”と言う部分においても非常に興味がそそられるエピソードとなっていました

ということで今回は、そんな『忍物語』「しのぶマスタード 其ノ貮」の感想と解説を語っていきたいと思います!

なお、前回のお話である『忍物語』「しのぶマスタード 其ノ壹」の感想と解説も語っていますので興味がある方は是非!

また、〈物語〉シリーズのアニメや原作小説についてまとめた記事もありますので、他の〈物語〉シリーズ作品に触れてみたいと感じた方はそちらも参考にしてみて下さいね

『忍物語』原作情報&アニメ化章数

著:西尾維新, イラスト:VOFAN

”たまには縁(えん)も縁(ゆかり)もない女子を助けてみるのも乙だろう”
直江津高校の女子生徒が、相次いで失踪する事件が発生した。ミイラ化した状態で発見された少女達の首筋には、特徴的な傷跡があって・・・?大学一年生になった阿良々木暦は、犯人を突き止めるべく走り出す!
青春は、眩しいだけ・・だと思ってた?

原作『忍物語』巻末より引用

『忍物語』はシリーズ通巻23冊目の原作小説で全50章の作品となり、今回アニメ化された「しのぶマスタード 其ノ貮」は9章から17章まで描かれた形になります

「しのぶマスタード 其ノ貮」あらすじ

五名が行方不明になっている直江津高校女子バスケットボール部。神原駿河と日傘星雨いわく、問題はそれだけではなかった。彼女たちの問題を引き受けた暦は、伊豆湖とともに残りの行方不明者の捜索にあたる。

〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイトより

『忍物語』「しのぶマスタード 其ノ貮」感想&解説

五人の行方不明者

画像出典:〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイト

「名簿に記載されているメンバーの内、五人が行方不明になっている」

神原駿河のその言葉に多少の驚きはあったものの、さらに驚くべきことはその五人の内三人はすでに阿良々木くんは知っていたという点でした

貼交帰依、本能あぶり、口元教実

ただこの辺りに関しては阿良々木くん自身も予定調和のようなものを感じていたし、まだ納得の出来る部分ではありましたが、その三人以外にさらに二人行方不明になっているという事実は受け入れがたい部分ではありました

日傘は阿良々木くんに女子バスケットボール部の現状を知ってもらうために、自分たちの考えも含めて、話しを始めました

神原駿河が在籍していた頃の女子バスケットボール部は彼女の為の部活へとなっていた節がありました

それもあり、高すぎる目標やハードなトレーニング、逃れられない同調圧力など、なまじ神原がいた頃のそのシステムが結果を生み出してしまった為、神原引退後もそのシステムが残ってしまい、三年生引退後はそれが二年生や一年生にとって大きな負担となっていました

その問題自体は三年生のOGもどうにかしようと対策は打ってみたものの、それが逆効果となってしまったのか、ここ数日で部員が学校に来なくなるという結果を招いてしまいました

だからといって、その体制自体を神原や日傘たち三年生が変革するというのも作り出した本人たちとしては難しく、ついに切羽詰まって来たところで阿良々木くんからのアプローチがあったことは彼女たちにとって大きな救いとなりました

そこまで話を聞いた阿良々木くんは、「吸血鬼に襲われてでも楽になりたい」という強い絶望のような切望が今回の件における被害者同士を繋げるミッシングリンクになっているとすれば、行方不明になった二人の所在を突き止めない訳にはいかないと考えます

その点も踏まえ、神原や日傘からの相談を受け入れ、どこまで女子バスケットボール部の問題を手助け出来るかは分からないものの、少なくともこれ以上は行方不明者が出ないように全力を尽くすことを約束しました

その言葉に安心した日傘は阿良々木くんに女子バスケットボール部の名簿を託すことにします

名簿を預かった阿良々木くんは、臥煙伊豆湖がいる直江津総合病院へと戻り、名簿と併せて神原達から聞いた情報を臥煙伊豆湖に話しました

五人の行方不明者、女子バスケットボール部の現状、ミッシングリンクの一つの可能性

臥煙伊豆湖は概ね阿良々木くんの意見を否定することはなく、可能性としては十分あり得ることも考慮した上で、行方不明となっていて所在がつかめていない官宮鶚(かんぐうみさご)、木石総和(きせきそうわ)の二名の行方を重点的に捜索する方針を固めました

そこまで話が進んだ時に、阿良々木くんは神原のところに行く途中で思い浮かんだ「リビングメッセージは犯人が残したものではないか?」という考えを臥煙伊豆湖に話すと、やはりその可能性は彼女も考えていたらしい

すでに筆跡鑑定などは済ませていましたが、確たる結論は出せず、さらに言えば、もしも犯人が残したものであれば、すべての被害者に暗号が残されていても良さそうなものだと話しました

そこで話に区切りを付けた臥煙伊豆湖は、阿良々木くんに新しい任務を与えることにしました

臥煙伊豆湖は、それは阿良々木くんにしか出来ないことと前置きをした後、彼に今夜してほしいことは話します

忍ちゃんを一晩、押さえつけていて欲しい

感想&解説

今回の女子バスケットボール部の体制とそこから生じた問題に関しては、なんとなく理解も出来る内容のような気もします

古臭いと思っていたり、間違っているとは思っていても周囲がそれを許さず、しかもそれによって過去に結果が出てしまっているからこそ、現在結果が出せていなくても否定し難い部分もある

こういったのって学校生活に限らず、会社などと言った何かしらの組織に属していれば直面する問題だったりしますし、多かれ少なかれ経験したことがある人もいるのではないかと思います

それに対して真っ向から「NO!」と言える強さを持っていれば、今回の神原が言っていたように「辞めたければ辞めればいい」と思えるのかもしれませんが、人はそう割り切れるものでもありませんからね

辞めたことによって生まれる責任やそこから生じる不具合など、自分自身に対してもそうですが、残してきた相手に対して罪悪感のようなものを感じてしまう人もいますし、なによりそのキッカケを作った人物になってしまった時の重荷を背負うのを嫌がる人というのも多いのは事実

ようは悪者扱いされるのが嫌なんですよね

実際問題、そういったことを考え過ぎて変な方向へ考えが言ってしまうこともあるので、中々デリケートな問題だとは思います

そんな中で、阿良々木くんという頼れる変態…もとい先輩がこのタイミングで現れてくれたというのは確かに神原と日傘にとっては僥倖だったのかもしれませんね

ここでの解説は原作から1です

その1つとは、『行方不明』というのを聞いた時に阿良々木くんは他の人が思うほど驚いてはいなかったという点です

そもそも直江津高校というのは進学校であり、偏差値が高いことはこれまで度々登場していました

そんな中で、在学中に不良生徒のレッテルを貼られた阿良々木くんは無事に卒業を果たしましたが、実はそれはかなり珍しいケースでもあったんですよね

直江津高校において阿良々木くんだけが不良生徒だったのかと言われるとそんな訳もなく、他にも不良生徒や学校の授業についてけなくなった生徒というのも当然いたわけで、そういった生徒たちがどうなったのかというのを一言で言えば『いなくなった』になります

転校したり、退学したりもそうですが、中には老倉育のように自宅に引きこもる生徒もいたそうです

そしてそういった生徒というのは、直江津高校において『見かけなくなる』ようになり、結果的に学校から『いなくなる』というのは事実として起こってはいたそうです

落ちこぼれた生徒を見て見ぬ振りをするのではなく、進学校に落ちこぼれた生徒がいた現実を見ないようにする問題自体は過去にも目にしていたので、阿良々木くんは『行方不明』=『学校に来なくなる』ということ自体にはそこまで驚かなかったというわけですね

一応注釈を付け加えるなら、この学校問題に関しては別段、直江津高校が特別というわけではないですし、普通に私立の学校でも起こりえることだと原作でも触れられています

ようは神原の『行方不明』という言い方の問題で、ここも原作で触れられていますが、神原の『行方不明』という言い方は大袈裟な言い方になり、実際は「所在の知れない生徒が五人いるという意味」と日傘は言い直していますね

忍が語る過去話と余接のお土産

画像出典:〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン公式サイト

臥煙伊豆湖から忍を一晩押さえつけておくよう言われた阿良々木くんは、その夜、忍のご機嫌を取るように彼女の大好物のミスタードーナツを用意したりして、なんとか部屋にとどまらせようと画策します

しかし、そんな考えは忍にとっては疑念を抱く材料にしかならず、何か隠し事をしているのではないかと早々に疑われ始めていました

早くも臥煙伊豆湖からの任務を全う出来るか不安を感じていた阿良々木くんでしたが、ここでふと、時間稼ぎの意味合いも込めて、今まで疑問に感じていた「吸血鬼に失敗してたらどうなるのか?」ということを忍に質問しました

その質問に対し忍は、以前に別の時間軸で見たことがあるような思考力を失ったゾンビになる話します

阿良々木くん自身もそれは見ていたので理解は早かったものの、あの時に別の時間軸にいた忍同様に、今回の事件を引き起こしている吸血鬼も自暴自棄に近い状態での暴飲暴食なのか考えていました

ただ、阿良々木くん自身、そこまで多くの吸血鬼に出会ったことがあるわけではない為、具体的にパターン化することは出来ませんでした

そして、そこまで思い至った時に一人だけ、阿良々木くんと直接接点が無くとも、会ったことが無い吸血鬼の存在に気がつきました

それは忍を吸血鬼にした吸血鬼の存在

阿良々木くんは今までその話を聞いたことが無かったので、忍にその存在について質問をすると、忍は「かかっ」と笑いながらこう答えました

ついにそれを語るべきときが来たか。
決死にして必死にして万死の吸血鬼――かつての儂の生みの親にして名付け親、デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターについて語るべきときが

その名前を聞いた阿良々木くんは、今回、臥煙伊豆湖が忍を押さえつけておくように言った任務の意味を大方理解しました

そして、阿良々木くんは今回の事件との関りも考え、おそるおそる忍にスーサイドマスターとはどういった吸血鬼だったのかを聞きました

すると忍は、怪異だろうと何だろうと食い散らかしていた自分とは違って、スーサイドマスターはグルメな吸血鬼だったと話します

こうと決めた食材があれば、それ以外は食べない吸血鬼

そんな生みの親の話をしていると、ふと忍はなぜ今になってスーサイドマスターの話をしているのか疑問に感じ始めてしまいました

これはマズいと感じた阿良々木くんでしたが、タイミングよく部屋のドアがノックされ、これ幸いとドアを開けますが、そこには誰も居らず、そのノックの主はなぜか阿良々木くんの部屋の窓から入ってきたようでした

ノックの主は斧乃木余接

彼女の来訪を歓迎する阿良々木くんでしたが、どうやら余接はそこまで暇ではないらしく、仕事で忙しいながらも久しぶりに戻ってきたら月火が部屋にいたため、阿良々木くんの部屋から入ってきたということでした

なので本当に用事がなかった余接はそのまま部屋を出ていこうとしますが、彼女は思い出したかのように一つの紙切れを取り出し、阿良々木くんに手渡しました

その紙切れは八九寺が神様を務める神社のおみくじ

そのおみくじを受け取り、中を読んでみると八九寺らしい文言で様々なことが書いてありましたが、阿良々木くんはその中の一つである「待人」の部分で目が止まりました

《良吉》
戀愛――今ノ彼女ヲ大切ニ!
學門――油断大敵、壹息ツカズニ頑張ッテ!
健康――心ガ實に不健康デスネ!
待人――自分カラ會イニイキマショウ!
商賣――言イナリハ危険デス!

その意味を理解した阿良々木くんは、余接を阿良々木くんの部屋に残し、阿良々木くんと忍の二人は車で八九寺がいる北白蛇神社へと向かうのでした

感想&解説

ついにここから阿良々木暦とデストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターの線が繋がる!

まだ現状、名前を知っただけではありますが、それでも暗号の意味する「DVS」が「デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター」に繋がるという意味は理解した様子

だからこそ、この状況というのは阿良々木くんにとって複雑ではあるのも事実だったりするんですよね

その辺りは原作でも少し触れられている部分だったりもするんですが、忍がスーサイドマスターの話を嬉しそうにする中で、阿良々木くん自身もその嬉しそうな顔を喜ばしく思いながらも、それはシチュエーションが違えばもっと微笑ましく感じれたとも語っています

確かに、大切な人にとって特別に感じている人が、もしかしたら事件に関わりのある人かもしれないと思いつつ、さらにそれを隠さなければならないというのは中々複雑な心境な気がします

そういった意味合いだと、阿良々木くんが神原や日傘に連絡を取ったタイミングが良かったのに対して、阿良々木くんが忍から生みの親の話を聞くタイミングは最悪だったと言えますね

それでも避けては通れないスーサイドマスターの存在は、今後の阿良々木くんとどこまで太く繋がっていくのかにこの後の展開も今後の展開も含めて注目しながら見ていってほしいです

ここでの解説はおみくじの内容についてしていきますが、この部分に関しては自己解釈が含まれていますので悪しからず

今回、八九寺からおみくじを貰った阿良々木くんが「待人」の部分のメッセージに気付いて八九寺に会いに行きましたが、その他の部分もしっかりと阿良々木くんを表している内容になっていました

「戀愛(恋愛)」に関しては戦場ヶ原との関係、「學門(学問)」に関しては受験勉強で終わらせず大学でも勉学に励むようにという応援の言葉、「健康」は阿良々木くんの残念っぷりってところでしょうか

この辺りに関しては分かりやすい内容になっていましたが、「商賣(商売)」の「言いなりは危険です!」に関してはもしかしたらピンと来ない人もいたかもしれませんね

この「商賣」の部分は、今現在阿良々木くんが臥煙伊豆湖から頼まれている忍を押さえつける役目のことを表していました

この部分は原作で触れられていますね

『商売』が、今僕が臥煙さんから頼まれている役目のことなのだとすれば、「言いなりは危険」は、まさに欲しかったアドバイスという気もする。

原作『忍物語』より引用

また、おみくじで八九寺からお呼びがかかったからという理由や忍の追及を逃れるためだったというのもありますが、阿良々木くんが忍を外に連れ出した理由は、この「商賣」の部分のアドバイスもあったからかもしれないと思わせる語りも原作では描かれています

臥煙さんからは、忍を見張るように言いつけられているけれど、別段、自室で見張るように言われてはいない。前科持ちとはいえ、忍は蟄居(ちっきょ)の刑に処されているわけではないのだ。

原作『忍物語』より引用

「一晩押さえつけておいてほしい」と言われた上に、忍の生みの親とも言えるスーサイドマスターが今回の事件に関わっているかもしれないと判明した状態で、吸血鬼が活動する夜中に外に出るというのは、普通に考えれば悪手のような気がしますし、捉えようによっては臥煙伊豆湖に言われた役目を全うしていないようにも感じます

この捉え方自体は原作にはなく、個人的な解釈の部分になってしまいますが、それでも「言いなりは危険!」という八九寺のアドバイスがあったからこそ、阿良々木くんは忍を連れて外に出るという判断をしたとも解釈できる気がします

八九寺が阿良々木くんを呼んだ理由

八九寺からお呼びがかかった阿良々木くんは北白蛇神社へと到着し、山を登ってその境内へと入りますが、目の前には滝行をしている八九寺真宵の姿がありました

完全に神力の無駄遣いとも言えるその大仰な滝行に阿良々木くんは軽く呆れつつ、八九寺と恒例のやり取り(「嚙みました」のクダリ)を繰り広げた後、今回呼んだ用件を話し始めました

その用件というのは、阿良々木くんに紹介したい幼女がいるということ

正確に言えば、忍に紹介したい幼女がいるそうで、八九寺は二人を神社の本殿へと案内しました

その本殿の内部の床で、祀られているように寝かされていたのは裸の幼女のミイラ

その姿に驚く阿良々木くんでしたが、さらに驚いていたのは忍のほうでした

ス……スーサイドマスター?なんちゅう変わり果てた姿に……

忍はミイラの元へと近づき、その様子を少し見た後、八九寺に対してこの状況は一体どういうことで、この街で一体何が起きているのか聞きます

八九寺はその質問に対して沈黙してしまいますが、その横にいた阿良々木くんがそのミイラの状態を忍に質問をします

忍が言うにはこのミイラ化している状態は乾眠状態になっており、この状態になっているからこそ、八九寺は阿良々木くんや忍を呼んだのだろうと話しました

その忍の予想は大当たりで、八九寺自身も一体何が起きているのか分かっておらず、それを知るためにもこの幼女のミイラを復活させる手助けを阿良々木くんにしてもらいたいと思い、ここに呼んだとの事でした

そしてそのために阿良々木くんには、あの世に行って”ある薬”を取りに行ってほしいとお願いしますが、当の阿良々木くん自身はその”薬”の検討が全くつきませんでした

しかし、八九寺は「ご存じのはずですよ」と阿良々木くんに話した後、あの世に行って取ってきてほしいものを話します

ご存じのはずですよ、阿良々木さんは。だってこないだ、旅したばかりじゃないですか――地獄ですよ。血の池地獄です。

感想&解説

「しのぶマスタード 其ノ壹」の冒頭で、クールにカッコ良く登場していたスーサイドマスターでしたが、数日経ってまさかのミイラになって再登場とは中々予想出来なかったのではないでしょうか?

「犯人だと思われていた人が、実はすでに死んでいた」みたいなのはミステリーでもよく見る展開だったりもしますが、これもまたそれと似たような雰囲気を感じさせる展開でしたね

ただ、そういったミステリー展開と少し違うのは、まだスーサイドマスターは生きているということ

あの冒頭シーンからどうなったらミイラ化する状態になるのか不思議な部分ではあると思いますが、そこはスーサイドマスターの回復を待つばかりといった感じですね

そしてそのスーサイドマスターを回復させて話しを聞くために八九寺が考え付いた「血の池地獄に行く」という発想がこれまた凄いw

乾眠状態の吸血鬼を戻すのにどれほどの血が必要かは定かではありませんが、それでも「血がたくさんある場所=血の池地獄」の発想は中々無いように思います

さすがは神様というべきか、元地獄経験者というべきか、見た目は少女でも経験と場数の違いを思い知らされたような気がしますね

ここのパートでは解説というよりは補足としての意味合いで、八九寺と阿良々木くんの深い友情の部分を話していきます

今回、久しぶりに阿良々木くんと八九寺の「嚙みました」のやり取りが展開され、二人の友情が再確認できましたが、原作だとその後にも八九寺が阿良々木くんの様子から彼を気遣うようなシーンが展開されています

八「ところで、阿良々木さんのほうから、わたしに何かはないんですか?」
暦「ん?」
八「そんなお顔をなさってますよ」
 ううむ、まだまだキャリアは浅いとは言っても、さすがは神……、僕の顔から、僕のカオスを見抜いてくるか。
 とは言え、この件は相談するべきではないと決めている。立場がなかった頃とは違うのだ――神様になったばかりの八九寺を、怪異と人との、板挟みになんてしたくない。
八「はっはっは。案外わたしって奴がわかっていませんねえ、阿良々木さん。板挟みになんてなりませんよ。わたしは常に阿良々木さんの味方です。たとえ地獄に落ちることになろうとも。阿良々木さんと一緒なら、地獄もそう悪い場所ではありません」

原作『忍物語』より引用

こう言っちゃなんですけど、八九寺は阿良々木くんのこと好き過ぎる気がします(笑)

まあ、その辺りに関してはこれまでも散々見せてくれたので、今更感もあるかもしれませんけどね

ただ、この関係性があるからこそ「嚙みました」のクダリも、過剰な二人のやり取りも、どこか特別感のようなものを感じれて良いんですよね

そしてここで地獄について触れていますが、これはこの後の「血の池地獄」の振りにもなっていました

ここがなくてもストーリーの流れに全く違和感はなかったんですが、二人の特別な関係性が分かるこの部分はちょっとアニメで見たかったかなというのは正直なところです

ちなみに、今回披露された「嚙みました」シリーズですが、以前にアニメ&原作&副音声などで登場した「嚙みました」のやり取りをまとめた記事がありますので、この迷言とも言えるやり取りをもっと知りたいと思った方は是非読んでみて下さいね

地獄に落ちず、天国に昇る

スーサイドマスターを復活させる為に、再び地獄へと行くことになった阿良々木くん

ただ、そう簡単に地獄へとほいほい行けるわけもないので、今回も前回と同じ手段を取ることにしました

妖刀『心渡』を使って阿良々木くんをバラバラにし、地獄へ送る

八九寺は忍に一声かけると、忍は自身の体内から『心渡』を取り出し、今まで溜まっていた不満を阿良々木くんにぶつけるように自身の剣技を披露していきました

四百年間研鑽し続けた剣技をとくと味わえ。我が生死流には七つの奥義がある。
一の奥義・『鏡花水月』(きょうかすいげつ)
二の奥義・『花鳥風月』(かちょうふうげつ)
三の奥義・『百花繚乱』(ひゃっかりょうらん)
四の奥義・『柳緑花紅』(りゅうりょくかこう)
五の奥義・『飛花落葉』(ひからくよう)
六の奥義・『錦上添花』(きんじょうてんか)
七の奥義・『落花狼藉』(らっかろうぜき)
――そして七つの奥義を同時に繰り出す、生死流の最終奥義、『七花八裂』(しちかはちれつ)!

忍の奥義によって八つ裂きにされた阿良々木くん

そこから目の前が暗転し、覚醒を果たすと、目の前には地獄とは思えない光景が広がっており、どうやら阿良々木くんは地獄ではなく天国へと来てしまったようでした

心を一旦落ち着かせる為にも一人でボケてみる阿良々木くんでしたが、実はその独り言を聞いていた人物がいました

阿良々木くんのボケに対してツッコむこともなく、冷静に肯定してきたその人物は全裸でありながらも、顔を隠すように鬼の面だけをしているという奇妙な格好をしている女性ではありましたが、彼女が放つ”美しさ”に阿良々木くんは覚えがありました

う……うつくし姫?

その類まれなる美しさで国を滅ぼした傾国の美女である”うつくし姫”は、「天国では、アセロラ姫とお呼びください」と阿良々木くんに話すのでした

感想&解説

今回の「しのぶマスタード 其ノ貮」における最終パートにはなるんですが…

それぞれ理由があるとは言え、地獄に行ったと思ったら天国に行ってしまったり、そこに現れたのは全裸だけど鬼の面を被ったアセロラ姫だったりと、「どういうこと!?」と予想外の展開が多すぎて、ツッコみたくなるような超展開ばかりでしたね(笑)

そして、ここでの一番のツッコミどころは間違いなく『七花八裂』の部分でしょうw

まさか『刀語』の主人公である鑢七花(やすりしちか)の必殺技を決めてくるとわww

ここに関しては原作通りではあるものの、原作者が同じというだけで、作品もアニメの制作会社も違うのでどうするのかと思っていましたが、見事にやってくれました!

正直、〈物語〉シリーズだけでなく『刀語』も大好きな作品の一つなので、これは大歓喜してしまいましたね(笑)

ちなみにアニメではカットされていましたが、原作では忍が『七花八裂』を繰り出した後、しっかり阿良々木くんは鑢七花の決めゼリフも言っています

「――そして七つの奥義を同時に繰り出す、生死流の最終奥義、『七花八裂』(しちかはちれつ)!」
 全部フルコーラスで言っちゃった、と突っ込む頃には、ただし僕は八つ裂きになっていたかもしれなかった。

原作『忍物語』より引用

ここまでアニメでやってくれたら大満足でしたが、さすがにそれは高望みになってしまいますかね(苦笑)

ここのパートでは本編の解説は無しになります

ただその代わりと言ってはなんですが、『刀語』を知らない人の為に少しだけその作品を紹介していきたいと思います

『刀語(かたながたり)』というのは西尾維新先生原作の大河アクション作品になります

刀を使わない剣士・鑢七花(やすりしちか)が奇策を弄する奇策士・とがめと出会い、伝説の刀鍛冶が作り出した十二本の「完成形変体刀」を集める旅に出るストーリーです

こちらの作品は、西尾維新アニメプロジェクトの第2弾として第1弾の『化物語』の後に作られたアニメーション作品になります

十二本の刀を集めるということもあり、話数も12話構成ではありますが、1話辺り46分と放送時間だけを考えれば2クール分の内容になりますね

ただ、その内容に見合うだけのストーリーは非常に面白く、西尾維新作品特有の言葉遊びの数々のみならず、個性が強すぎるキャラクター性や先の読めない展開&予想外の展開などのオンパレード!

見ていた私自身も何度驚かされたことか分かりません

さらに、「完成形変体刀」はそれぞれ主眼を置かれた特性を持っており、例えば「絶刀・鉋(ぜっとう・かんな)」は”頑丈さ”に主眼を置いて作られた刀で、折れず曲がらないこの刀は刃こぼれすらしないという永久機関のような刀となっています

そういった様々な特性を持つ刀を七花が集めていく様子はその戦闘シーンも相まって見応え抜群!

刀の特性もそうですが、刀の所有者自体も一筋縄では行かない強者ばかりとなっているので、なおのことその戦闘シーンは興奮しました

この作品に関しては個人的にはかなり好きな作品であり、「時間があれば見て欲しい!」とも常々感じている作品なので、この機会に是非とも〈物語〉シリーズだけでなく『刀語』からも西尾維新ワールドを体感してほしいですね

ちなみに、今回の「しのぶマスタード 其ノ貮」で『刀語』のネタが登場しましたが、実際に〈物語〉シリーズと『刀語』の世界観が混じったエピソードもあります

それは劇場公開された『傷物語』三部作の際に配布された入場特典小説『混物語』の中の一つ「ひていクリア」というエピソードです

この『刀語』に登場する否定姫(ひていひめ)というキャラが、突如、阿良々木くんの前に現れ、妖刀『心渡』を懸けて勝負を仕掛けてくるというお話になります

ここで登場する刀は「透刀・鉄(とうとう・てつ)」という”透徹”に主眼が置かれた刀で、鎧でも壁でもすり抜けて、内部のものを斬るという特性を持っています

このエピソードはかなり捻りの利いたというか意地悪というか、これもまた西尾維新先生らしい発想の内容となっているので、興味がある方は入場特典小説が一冊の本になった『混物語』を読んでみてもいいかもしれませんね

著:西尾維新, イラスト:渡辺明夫

ちなみに(これが最後)ですが、この『混物語』は過去に西尾維新先生が描かれた小説のキャラたちと阿良々木くんとのやり取りが展開されていき、『刀語』のみならず、『忘却探偵シリーズ』の掟上今日子(おきてがみきょうこ)、『美少年シリーズ』の瞳島眉美(どうじままゆみ)や札槻嘘(ふだつきらい)が登場するエピソードもあるので、その辺りの作品を知っている人も楽しめるかもしれませんよ

まとめ

〈物語〉シリーズのオフ&モンスターシーズン『忍物語』の「しのぶマスタード 其ノ貮」の感想&解説でした!

今回のエピソードはギャグもシリアスも絶妙だったというのもあって、かなり楽しませてもらった印象が大きかったです

これまでの『愚物語』や『撫物語』でも笑い所自体はいくつかありましたが、阿良々木くんやその周囲のキャラたちのボケとツッコミはやはり一味違いました(笑)

なんかギリギリのラインを走っているというか、一線を画しているというか、そういうアクセル全開の感じは阿良々木くんが登場しないと出せない味だなと改めて感じさせてくれましたね

そして、今回明かされた”謎”の部分に関しては、新たに判明した事実から見えなかった線が浮き彫りになり始め、さらには今回の事件の最重要人物(吸血鬼)であるスーサイドマスターがまさかの形で登場するという事態は”謎”を一転も二転もさせてくれると感じさせてくれるには十分な登場だと感じました

ミイラ化してしまったスーサイドマスターを助ける為に再び死ぬことになった阿良々木くんですが、見事に復活させ、スーサイドマスターから事件の真相を聞くことが出来るのか?

そして、天国で再び相対することとなったアセロラ姫は阿良々木くんに何を語るのか?

そろそろ物語も中盤戦へと突入し、これから開示されていく”謎”の数々にも注目しながら、今後の展開を楽しみにしていきたいですね!

それでは今回はこの辺で!

また会いましょう

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