漫画

『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』各巻の感想&解説!ひと時の居場所と時間が心地いい”癒し系”作品!

どうもウハルです!

今回は、『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』という漫画の各巻の感想と解説を語っていきたいと思います!

こちらの作品は、社畜の中年サラリーマンである佐々木さんと行きつけのスーパーで偶然声を掛けてきた奇抜な格好の田山という女性を中心に繰り広げられるヒューマンラブストーリー作品になります

「ヒューマンラブストーリー」とはいうものの、この作品の題材やタイトルに”煙草”が入っていたり、表紙の雰囲気やそこに描かれている二人の格好を見ているとあまり良い印象を持たない方もいるかもしれません

喫煙所というちょっとした空間で交わされる会話の数々は忙しない現代社会から切り離されたようなゆったりとした時間を提供してくれるし、二人の絶妙な距離感が煩わしい人間関係を忘れさせてくれるような”癒し”を提供してくれます

また、この作品に登場する会話は多くの人が抱えるような”悩み”の部分について触れられることも多く、そこに共感しつつも、その言葉が心に寄り添ってくれるようなその時々に欲しい言葉だったりするので、気持ちを軽くしてくれるのもこの作品の良いところです

そんな”癒し系”作品である『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』の各巻のあらすじや収録エピソードの解説をしつつ、感想を交えながらこの作品の魅力を語っていきたいと思います!

以前からこの作品が気になっていた方ももちろんですが、忙しくて疲れている中で”心のゆとり”を得たいと思っている人も是非参考にしてみてくださいね!

なお、今回はネタバレも含んでおりますので無知識で読みたい方は、作品概要以降は進まないようにしてくださいね

あと、念のため言っておきますが、この作品は喫煙を推奨する作品でありませんので、そこはお間違いないよう

『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』とは?

『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』概要

今夜もあなたとこの場所で。

社畜街道をひた走る、くたびれ中年男性の佐々木。彼のひそやかな癒しといえば、日ごろから愛煙する煙草と、行きつけのスーパーで働く女性店員 山田さんのにこやかな接客くらい。
仕事に疲れたある夜、癒しを求めてスーパーに向かうが、目当ての山田さんはおらず、今どき煙草を吸える場所もなし…。意気消沈した佐々木に「ここなら吸える」と声をかけてきたのは、すこし奇抜な服装をした田山という女性だった――。

『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』スクウェアエニックス公式サイトより

2022年3月よりTwitter(現X)にて投稿を開始し、2022年8月より『月刊ビッグガンガン』にて連載されている原作者・地主(@jinusi822)先生によるヒューマンラブストーリー作品で、略称は「ヤニすう」

元々は『スーパーの裏でヤニ吸う話』だったんですが、月刊誌の連載を機に『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』にタイトルが変わっており、話数表記は「〇話」ではなく「〇本目」になります

こちらの作品は2022年8月の『次にくるマンガ大賞2022』のWeb漫画部門にて第1位を獲得

2023年には『マンガ大賞2023』にノミネート、『全国書店員が選んだおすすめコミック2023』では第4位、『出版社コミック担当が選んだおすすめコミック2023』では第1位、『第7回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞』では4位を獲得しています

また、単行本の電子を含めた累計発行部数は2026年1月時点で300万部を突破しています

なお、こちらの作品は『ビッグガンガン』の作品紹介ページにて1話試し読みも出来ます

ビッグガンガン:『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』作品紹介ページ

さらに、こちらの作品は2026年7月よりアニメ放送が決定しています

【アニメPV】

メインキャラ紹介

  • 佐々木さん……ブラック企業で働くくたびれた中年サラリーマン。行きつけのスーパーで働く山田さんの笑顔に癒されつつ、スーパー裏の喫煙所で田山と一緒に煙草を吸うようになる。
  • 田山……佐々木さんに声を掛けてきた女性。スーパーSで働いているらしいが、佐々木さんはその姿を見たことはない。山田さんとは仲がいいらしい。
  • 山田さん……スーパーSの人気店員で佐々木さんが癒しを貰っている店員。田山とは仲がいいらしい。
  • 後藤店長……スーパーSの店長。仕事が出来ると会社でも評判があり、噂では「自分でやった方が早い」と現場メインで働いているが、実は座りっぱなしのデスクワークが合わないだけ。恋愛漫画が好きでよく読んでいる。
  • 大野さん……20年以上働くベテランのレジ係。温厚な人柄で、常に笑顔を絶やさない。
  • 前澤……レジチーフ。子持ち。テンション高めでいつも元気だが、ふいに怖い顔を見せる時がある。
  • 小畑……青果部門のチーフ。身長高め。極度の人見知りで引っ込み思案のため接客でよくクレームを貰っていたが、後藤店長に励まされたということもあり、店長には憧れを抱いている。
  • 西園先生……スーパーSに通うお客の一人で自身の作品がアニメ化するほどの人気漫画家。後藤店長とは知り合いで、家を長く留守にする時に犬の大吾郎の面倒をお願いすることもある。過去にスーパーSの店員の大野さんに励まされたことがあり、それ以来、大野さんのファンになった。

※この後の感想&解説では、基本的には仕事モード姿で描かれている時は『山田さん』、それ以外の時は『田山』で書いていますが、後半になるにつれてただの『山田』として書いている場合もありますので、分かりにくい部分もあるかもしれませんがご了承を

『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』各巻感想&解説

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」1巻 感想&解説

社畜街道をひた走る、くたびれ中年男性の佐々木(ささき)。彼のひそやかな癒しといえば、日ごろから愛煙する煙草と、行きつけのスーパーで働く女性店員 山田(やまだ)さんのにこやかな接客くらい。仕事に疲れたある夜、癒しを求めてスーパーに向かうが、目当ての山田さんはおらず、今どき煙草を吸える場所もなし…。意気消沈した佐々木に「ここなら吸える」と声をかけてきたのは、すこし奇抜な服装をした田山(たやま)という女性だった――。

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」1巻巻末より

もはやブラック企業ともいえるような会社に勤めている佐々木さんですが、会社に癒しは当然なく、趣味というものも無かったので、日常の中でちょっとした癒しを見つけるというのは流れとして分かる気がします

そして、喫煙家にとって居場所がどんどん少なくなっていっているのも事実で、「煙草を吸いたいな」ってなった時に見知らぬ人に声を掛けられたら「まあ一服だけ…」と喫煙所に行ってしまう気持ちも分かります(これは喫煙者じゃないと共感し難いかもしれませんが)

そんな偶然とも必然とも思えるような展開からスタートしていくこの作品ですが、序盤は本当に何気ない日常といった感じ

初対面からからかってくる田山だったり、消臭ミストを貸してくれたお礼に田山に灰皿をプレゼントする佐々木さんだったりと二人の性格がよく分かる部分が多い印象があります

そして、後藤店長が客と喫煙所でタバコを吸っていることを知っても、倫理観よりもロマンスを取って二人の関係性を見守る辺りはちょっと笑っちゃいました(笑)

そんな日常色強めの1巻ですが、心に刺さるような名言も登場し、それもまた普段の日常でよくあるような内容だったりするので、なおのこと心に残った言葉となりました

その名言というのは二つあって、一つ目が6本目で登場したクレームのエピソード

レジに立った時の山田さんは普段朗らかな表情をしており、その接客態度はとても素晴らしいもの

ただ、彼女は喫煙家でもあるので気を付けてはいるものの、煙草の匂いが残ってしまう時もあります

その匂いに気付いてしまったお客様から「普段は朗らかに接客してるのに煙草の匂いがしてがっかりした」とクレームを貰ってしまいました

後藤店長からは「理不尽なお気持だから気にしなくていい」と言われたものの、どこかモヤモヤする田山に佐々木さんは「さびしいね」と声を掛けてあげました

さびしいね。違う面を知った途端…素敵だと思ってるその人を信じられなくなるのは。どっちもその人なのに。

たった一面だけ見てその人の全てを決めつけてしまうのは筋違いですし、また違う面を見たからと言ってその人を否定してしまうのもまた筋違いだと思います

コインだったりカードだったりサイコロだったりとどんなものにも色々な面があり、そしてその面も含めてそれ自身なんですよね

確かに人によって好きな面や嫌いな面というのはあると思いますが、だからといって嫌いな面を知って好きだった面をも否定するのは、否定された側はさびしいものです

そういったことを改めて気付かせてくれたこの言葉は、好き嫌いだけで判断するのではなく、その人自身をしっかりと見ようと思わせてくれました

そして二つ目の名言はこの巻の最後に収録されている過去エピソードで登場します

話数としては0本目になりますが、山田さんが現在働いているスーパーは昔は違う店名で営業しており、その時の山田さんは後藤店長から「スマイル0山田」と言われるほどに接客が苦手でした

そしてその接客態度から特定のクレーマーに目を付けられ、毎回クレームを貰ってしまう

後藤店長自身は「クレーマーに粘着されているだけだから気にするな」と声を掛けてもらっていましたが、それでも迷惑をかけていると感じていた為、少し自己嫌悪に近いものを抱えていました

そんな中、接客中に再びそのクレーマーに文句を言われ、謝罪をしていると後ろに並んでいた男性客が仲裁に入り、その場を収めてくれます

その後、山田さんは喫煙所で煙草を吸っていたその男性にお礼を言うと、彼は「『俺がいつも助かっているレジまで否定しやがって』って勝手にムカついただけ」と話します

「助かってる」の意味が分からなかった山田さんでしたが、その男性は一生懸命やっている山田さんの姿をしっかりと見ていたからこそ、その仕事ぶりに助けられていました

その言葉に涙しつつ、山田さんは「接客がダメだからなんとかしたいのに。仕事好きなのに」と気持ちを吐露します

それを聞いた男性は「仕事が好きなら大丈夫」と声を掛け、続けてこう話しました

好きで続けているんなら、必要なことは全部、君の気持ちに必ず追いつく

この言葉は山田さんを笑顔にし、支えてくれたものとなっていくんですが、この言葉は本当に心に刺さりました

仕事であれ何であれ、続ける理由というのは多くありますが、当然上手くいかないことというのも多くあります

そして、それが何回やっても駄目な時というのは自身の不甲斐なさを痛感したり、時には辞めてしまおうかと考えてしまう動機になったりもするんですよね

でも、”好き”で続けていることだったりすると気持ちの面でしっかりと踏みとどまれることが多いので、「続けていこう」という気持ちにさせてくれます

上手くいかなくて悩んだり、どうしていいか分からなくなった時はまず、自分がそれに対して”好き”かどうかを一度問いかけてみると道に迷わず前へと進めることが出来るのかなとこの言葉を見た時は感じましたね

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」2巻 感想&解説

健康診断の誤診事件によって紆余曲折ありながらも、田山との奇妙ながら落ち着く夜中の喫煙を続ける佐々木。癒しの存在である山田さんとの距離感は変わらぬまま。けれど、スーパーSの個性溢れる新たな店員たちの登場もあり、ほんの少しだが、ゆるやかに変化する田山との関係。そんな日々を繰り返す中で、ある豪雨の日のふたりに契機が訪れる–。

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」2巻巻末より

職場での苦労が絶えない社畜の佐々木さんの癒しは変わらず2番レジの山田さんではありますが、中々会えない日々が続き、病気や事故、果ては退職などと考えてしまう辺りが佐々木さんらしい(笑)

実は、山田さんを最近見掛けなかったのは昇給試験の勉強の為だったんですが、田山からそのことを聞いて一安心する感じがまた佐々木さんにとってどれだけ山田さんが癒しなのかも分かって良かったですね

そんな中で、田山が佐々木さんを騙して「頑張って」というメモを書かせてやる気を出す辺りがまた微笑ましさ抜群!

こういう”お守り”って意外と神様よりもご利益あるんですよね

その他にも田山が付けているチョーカーを首輪だと思っていた佐々木さんだったり、田山がよく使う「おつかれーす」といった若者っぽい挨拶が移ってしまった佐々木さんだったり、幽霊を怖がる田山だったりと言ったほのぼのエピソードが多く収録されていました

そんな2巻でしたが、一番印象に残った話は24本目で描かれている二人が煙草を吸い始めたキッカケが語られるエピソード

佐々木さんが吸い始めた理由が「好きだった人に無理矢理吸わされたから」というのが佐々木さんらしさ全開(笑)

そして、田山が吸い始めた理由というのは本人曰く「なんとなく」とのことでした

というのも、彼女は以前、仕事を辞めようと考えていた時に喫煙所で出会った、あるサラリーマンと話をしたことで「辞めるよりも仕事が好きって気持ちの方が勝つ」ということに気付かされました

そして、その人の煙草を吸っている姿がずっと頭に残っていた為、「”なんとなく”吸っている」と話します

それを聞いた佐々木さんは「それは”なんとなく”じゃなくて、その人にずっと憧れていたんだよ」と話し、田山はそこで初めて、自身も気付いていなかった煙草を吸っていた本当の理由に気付かされました

これに関しては結構共感する部分もあって、自身の尊敬する人や人生を変えてくれたような人の所作や仕草というのを真似したりすると、その人に近づけるんじゃないかと思えてくる時があります

あとは、その人の事を憶えていたいと言った感情もあるかもしれませんね

そういった大切なものを「なんとなく」で終わらせるのをもったいないと感じた佐々木さんが田山にかけたこの言葉は、この後に登場する佐々木さんの言葉も含めて心に刺さりました

人への憧れは道を真っすぐ歩ける力になる

道に迷いそうになったり踏み外しそうになった時に、憧れている誰かを思い出したりすると、人は道を見失わずに済むのかもしれませんね

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」3巻 感想&解説

豪雨の一夜に垣間見えた田山の“憧れ”。佐々木はその想いを自らの山田への気持ちと重ねながらも、おじさんの余計なお節介かも…と自らの発言を自戒する。互いの想いに気づきながらも、大事な存在には気づかぬまま。世間は師走に向かい、予想だにしない佐々木の既婚疑惑やら、個性強めな新店員との聖夜の邂逅など、慌ただしく年は暮れていく。そして、年明けの佐々木に届くある一報に、ふたりの関係は揺れ動く--。

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」3巻巻末より

”憧れ”の件で煙草に旨みが増した田山でしたが、そこからまさかの佐々木さん既婚者疑惑が発生!

それを知って不機嫌になっている田山のまた怖い事(笑)

そして不機嫌な時ほどレジで元気が出るというのが彼女らしくて良かったですね(ストレスは仕事にぶつけるタイプなのかなw)

結局の所は勘違いで終わったんですが、その疑惑に振り回されて恥ずかしくなってしまう辺りが普段の表情とのギャップと相まって可愛らしかったです

また、ここで佐々木さんの出身が三重ということが分かってその方言を言わせるイジリが面白かったw

「○○やに」などを使う三重の方言はここで初めて知ったんですが、これは「ヤニ」繋がりでこの設定にしたんですかね?(詳細は不明)

その他にも青果部門のチーフである小畑の登場、後藤店長が現場で働く理由や過去に抱いていた将来の夢が描かれた描きおろしエピソードなども収録されていました

そして、元々の佐々木さん既婚者疑惑を振りまいた前澤チーフなどもガッツリと出てきて、個性強めの面々もかなり表に出てきた印象がありました

さらに、3巻に関しては佐々木さんと田山の関係性がさらに近づいていった印象もありましたね

そう感じたエピソードは大きく分けて2つあり、一つ目は田山が風邪を引いて休んでしまったエピソード

年末でただでさえ忙しい後藤店長に迷惑をかけたくないと無理をしてでも仕事に行こうとした田山を、たまたま田山と電話中だった後藤店長から頼まれて佐々木さんが説得するエピソードになるんですが、その時の会話が中々に尊い

そもそもこの二人の関係性というのはスーパーの裏にある喫煙所で煙草を吸うだけの関係性ではあるんですが、その出会いが多くの気付きや楽しい一時を与えてくれたのも事実でした

その時間を一緒に過ごせたことへの感謝と来年もまた続いて欲しいと願う二人の描きが本当に良くて、顔のニヤニヤが中々取れませんでしたね

また、その二人の会話を聞いていた後藤店長がロマンスを得てめっちゃ元気になる姿で笑わせてくれたのも良かったです(笑)

そして、二つ目のエピソードは佐々木さんの元上司のエピソード

佐々木さんがお世話になった上司が定年退職することになり、その上司から連絡が来たんですが、佐々木さんは過去にその上司に大きな迷惑をかけたことがあり、それ以降会わずにここまで来ていました

佐々木さんにとっては「会う資格がない」と考えるほどに大きなものでしたが、上司から連絡が来たことも考えて、田山は「考えすぎだ」と話します

それでも頑なに考えを変えない佐々木さんにキレた田山は喫煙所を出禁にし、「すっきりするまで来ないで」と言い渡します

その言葉と行動が佐々木さんの背中を押し、上司と再会する決断をさせてくれたというのが大まかな流れです

先程も少し触れましたが、二人の関係性って「喫煙所で煙草を一緒に吸うだけの仲」でしかなく、そこまでキツく言う必要性もないと感じる部分もあるかもしれません

ただ、田山にとって佐々木さんは多くの事を気付かせてくれた人であり、その本人が気持ちを我慢しているのが許せなかった

この部分に関しては、気持ちの部分もそうですが、二人がこれまでこの”喫煙所”という空間で繰り広げてきたやり取りがあったからこそ説得力がある描きになっていたように感じます

また、上司に会うことを怖がっていた佐々木さんが会う決心をして、その上司に田山との関係性を聞かれた時の言葉がこの作品に於ける二人の関係性を見事に表しているように感じました

俺たちふたりをなんて言ったらいいのか、俺にはよくわかりません。知人というほど遠い距離ではない気がするし、友人を名乗るには知らないことが沢山ある。傍から見ると吹けば消えてしまうような関係かもしれません……
でも、でもあの子は俺の背中が情けなくて縮こまっているとき必ず「なんてことないよ」と背中を押してくれる子です

煙草を吸っている僅かな時間しか一緒にいないし、知人とも友人とも言えないような関係性は確かに煙のように吹けば消えてしまうような関係かもしれません

ただ、それでもその心地の良い時間と場所は二人にとってとても”大切”なもの

その大切さがよく分かる関係性をこのエピソードでは改めて再認識させられたし、なによりその関係性を言語化していることで互いの大切さも認識したのではないかと感じました

こう言った二つのエピソードを踏まえて、気持ちという点においてはまだまだ距離が感じられますが、少なくとも互いの存在がどれだけ自分にとって大切なのかを知るには良いキッカケとなり、これから関係性に進展があるのではないかと思わせるには十分な描き方をしていましたね

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」4巻 感想&解説

「大切な関係」。田山と自らの間にできた透明だけれど確かな絆を、不器用ながら少しずつ受け入れ始めた佐々木。新たな一年は自らの歳を忘れることから始まり、大五郎の飼い主との出会いや、田山の予期せぬ一面が発覚したりと、振り回されてばかりのおじさんっぷりは変わらず。騒がしいけれど、不思議と楽しいこの日々が続けばいい。胸に灯ったそんな小さな希望を、大きく揺らす夜がやって来る--。

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」4巻巻末より

個人差はあると思いますが、誕生日って年を取っていく毎に忘れていくものなんですよね(笑)

それは佐々木さんも同じくで、自分の誕生日というのを見事に忘れており、山田さんから最高のスマイルを貰っても意味が分かっていませんでした(山田さんはポイントカードを見て知った)

さらに、会社の上司から「そのままだと何も得せず、ただトシを食ってくだけ」と言われていたこともあり、自身の不甲斐なさに落ち込みます

そんな佐々木さんを見て、田山が言った「年を取ること」については凄く心に刺さりましたね

手は見ればなんとなくその人の今までの積み重ねがわかるって、昔、店長が言ってた。使えば使うほど様になるって。佐々木さんがちゃんと今までやってきて、そうして今この手があるんだったら、あたしは…年食うのも悪くないって思うんだけどな

これを読んだ時に思わず自分の手を見てしまいましたよね

そしてその手が不甲斐ないので「これからちゃんと年を取っていこう」と思いました

また、今回の4巻ではもう一つ名言がありまして、それが描きおろしエピソードで登場してきます

犬の大吾郎の飼い主である漫画家の西園先生の過去話になるんですが、彼女はスーパーSで働いている大野さんに救われた過去がありました

多くの人気作を世に排出するほどの売れっ子漫画家だったものの、一つの連載を無事に完結させた時に、やりたいことをやり切ってしまった虚無感を感じてしまいました

それが表情に出ていたのか、スーパーで買い物をした際に大野さんから声を掛けられ、西園先生はふと大野さんに「早くして人生をやりきったらどうしますか?」という質問を投げかけます

その質問を受けた大野さんは柔和な表情を崩さずにこう答えました

そーですねえー…そんな人生舐めてる考え持っちゃったら、自分に喝入れるためにパチンコにでも負けを込みに行きましょうかねえ…映画じゃないんですから、やり切ったところで綺麗に終わりが来る私たちじゃありませんし、終わらないなら次です次!大きさ関係なくいいと思ったことをかきあつめて夢にして、片っ端から叶えていけば人生なんてあっという間だと思いますよ?

ド直球な正論(笑)

そして、この考えを見た時に「やり切ったからやることがない」というのは”人生”において一生来ることはないのかなとも感じました

やり方ややりたいことは人それぞれですが、少なくとも「やりたいことがない」と感じたら自分に喝を入れながら”夢”を集めて次へと進んでみようと思いました

こんな感じで名言が登場し、さらに大吾郎の飼い主である西園先生初登場、田山がピアスを開けた理由や彼女のかなり酔っぱらった姿が見られたりなど多くのエピソードが描かれていきますが、4巻で一番重要なのは佐々木さんと田山との距離が気持ちの面でかなり近づき始めたということ

ここまででも、互いの気持ちというのは描かれてきてはいるんですが、その正体というのは当の本人にとっては不明瞭なものでした

「なぜそう思ってしまうのか?」という疑問だけが心に残りつつも、その疑問が一つずつ気付きとなって描かれていく様子は一歩ずつ互いに近づいているようで凄く良かったです

ただ、それでも踏み込めない一歩というのがあまりにも遠い

互いに踏み込みすぎないように一線を引いているというのもありますが、なにより”今”という時間が二人にとってあまりに心地良すぎるのもあります

喫煙所という限られた場所だったからこその絶妙な距離感だったものが、今度はその距離感の所為で一緒に外に出ることが出来なくなってしまっている

それにどこかもどかしさを感じてしまいながらも、二人が今後その”外”への一歩を踏み出してほしいなと感じてしまう巻となっていましたね

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」5巻 感想&解説

「きみはそんなやつじゃない」
偶然にスーパーの裏以外で初めて交わした紫煙。その最中で少しずつ輪郭を持ち始めた淡い感情と、未だに分からない過去と大切な言葉。
未来に進む足を躊躇う佐々木。過去に囚われ足を止める山田と田山。
優しくて臆病な人間たちに差し込む光とは――。

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」5巻巻末より

まだまだ互いに踏み込み切れない距離感を感じさせる二人ですが、少しずつ、けれど着実に抑えきれない感情というものが見え隠れし始めてきて、その一つ一つが成長を感じさせてくれながらも、今まで隠してきた”自分”というものが出始めてきたからこその自己嫌悪に陥る辺りがしっかりと変化を感じれる内容だったように思います

今までも本音で語ってきていたのは事実ではありますが、それはあくまで相手の気持ちを考えた上での言葉

それが今回の5巻では、相手が大切にしているものを否定してしまうような言葉を言ってしまう辺りは綺麗とは言い難い、人間らしさのようなものを感じれた気がします

ただ、そこから二人の心の距離がさらに縮まっていく辺りは恋愛作品としての面白さがありましたし、これまで積み重ねてきた会話や経験などが良い意味で作用してドラマ性を見せてくれた辺りも二人の言葉や表情の変化に説得力があるように感じれて凄く良かったですね

その描きに関してはこの5巻の表紙のイラストと大きく関係していたので、読み終わった後にこの表紙を見た時のベストシーンっぷりも半端なかったです

そして、5巻から新キャラである川上が登場してきますが、彼女自身も何やら抱えている様子

彼女が今後の展開にどう関わってくるのかにも注目しながら、次巻以降も注目していきたいですね

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」6巻 感想&解説

「今夜だけはきみとふたりで」
佐々木と田山、過去から生じたすれ違いは今の互いを支える言葉によって終わりを迎えた。
いつも通りのせわしない日常が戻ってきたが、ふたりを取り巻く状況と相手への想いはかたちを変え、新たな気づきにつながっていく。

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」6巻巻末より

この作品自体が優しさに溢れているような内容となっていますが、その空気を感じれる大きな要因として感じているのは、佐々木も田山も相手が欲しい時に欲しい言葉をくれるからだと思っています

これに関しては別にこの二人同士に限ったことではなく、周囲にいる人達に投げかけてあげる言葉も同じで、それが見事に今回の6巻でも描かれていました

鮮魚部門のチーフとしてやってきた川上は元々このスーパーで働いていたので出戻りという形ではありますが、さらにその前に別のスーパーで働いていました

川上は積極的に仕事をこなし、その実力も認められていたので前のスーパーの従業員たちとも仲良くやれていたんですが、ささいなすれ違いから文字通り孤立してしまいます

そんな過去があった為、山田のいるスーパーで働くことになった時は人間関係に気をつけようと様々なことを我慢していましたが、山田にそのことを見抜かれた結果、前のスーパーでの出来事を話します

それを聞いた山田は”ある言葉”を投げかけ、その言葉によって川上は救われました

その恩もあり、川上は山田のことをかなり慕っていたんですが、戻ってきたら佐々木という訳の分からないおっさんが山田の周りをうろちょろしていて、川上はそれが気に入らなかった

そして、偶然酒の席で川上が佐々木と出会ってしまい、酒の勢いもあって勝負に発展

結果的に佐々木が勝ったんですが、川上はこんな回りくどいやり方をしなければ本音を言えない自分を責め、余計なことをしてまた居場所を失ってしまうかもしれない悲しさと不甲斐なさを佐々木にぶつけました

川上の過去のことも含めて、彼女が抱えているものを受け止めた佐々木は、川上に対してかつて山田が言った言葉と同じ事を彼女に言ってあげます

俺がそこにいたのなら、絶対…ひとりにしたくない…

孤独という寂しさを経験し、その苦しさも辛さも身に染みている川上にとって、「絶対ひとりにしない」という言葉はどれだけ嬉しかったかは図り知れません

山田も佐々木も、誰かを救うという大それたことは出来なくても、その人が寂しくならないようにせめて傍にいてあげようという優しさを感じられる描きは、二人らしさを感じさせてくれましたし、もし自分自身も川上と同じ状況になってしまった時にこの言葉を言われたらどれだけ救われるだろうと考えるととても心が温かくなって、改めてこの作品が見せてくれる優しい空気感は良いなと感じさせてくれましたね

そんな川上とのやり取りを見せてくれた佐々木と山田ですが、二人の距離感は今回の巻でかなり近づいた印象

これまでそれぞれが互いに感じている想いというのに蓋をしていた印象がありましたが、多くの気付きを経て、その蓋がついに空き始めた気がします

何かあった時にその話をしたいと思える相手がいることに気付き、頑張った時に「頑張ったね」って自分が一番に褒めてあげたいと思える相手がいることに気付く

そんな大切な存在が自分の中にいることに気付いた二人が見せてくれる展開が、恋愛作品としてニヤつかせてくれない訳がないですよね(笑)

特に比較的に感情があまり表情に出ない田山が、様々な表情を見せてくれる辺りはかなりギャップを感じれて本当にヤバかったですね

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」7巻 感想&解説

「もっと。なんて、欲張りかな。」
田山を巡った川上との競争劇は、佐々木に思わぬ気づきと疑問をもたらした。山田と田山。
ふたりの女性を意識しようとするほど、疑問は大きくなり、大事な何かを見落としてしまう…。
そんな折に出会った思わぬ人物から告げられる言葉と、いつも通りではない最悪の出来事に佐々木は決断を迫られる。

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」7巻巻末より

あらすじにもありますが、今回の巻で描かれている”最悪の出来事”というのは、端的に言ってしまえば山田の行方が分からなくなってしまったこと

スーパーという接客業において様々なお客様が来店してきますが、その中には当然、クレーマーもいたりします

そんなクレーマーに対し、山田が対応したところ、その場は収まったものの、後日、生意気だと言われ、さらに「お前の家まで行って説教をしてやってもいい」と脅迫まがいのことまで言われてしまいました

山田自身は気にしないようにしていたものの、それでも不安と恐怖は拭えない

誰かに相談すれば良かったんでしょうけど、山田は店の人に心配や迷惑をかけまいと黙っていました

しかし、結果として山田はその不安から出勤日なのにもかかわらず店に行くことが出来ず、何の連絡もなく山田が休むわけがないと店の人達は必死になって山田を探していると、偶然、佐々木もそれを知ります

佐々木は山田を探して駆け回り、山田を見つけることが出来ましたが、そのことがキッカケで、以前より何となく気づいてはいた田山の正体に確信を持ちます

ただ確信はあるものの、そうなると一つの疑問点が佐々木の頭に浮かびます

そのことに疑問を持ちながらも、山田自身も理由があって佐々木に嘘をついていることを知り、佐々木は山田が話してくれる”その時”まで隣に居続ける事を誓うというのが今回の大きなターニングポイントですね

今まで田山と山田を別人として接してきたからこそ出来ていた関係性が崩れるということは、これから先、少なからずその関係に変化が生じてしまいます

変化を好む人というのは当然いますが、この二人にとっては変化することよりも、今のままでいることの方がよっぽど大事であり、大切な居場所でもあります

そんな居場所を無くさないことを選び、それでも”その時”が来るまで待ち続ける関係性というのは、互いを思いやれる優しさを持ち合わせながら、自分には優しくなれない二人だからこそのように思えましたね

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」8巻 感想&解説

「あなたはそうだ、いつだって。」
行方不明になった田山を救い出した夜、彼女の嘘の真意を知った佐々木。
傍にいてくれた彼女のため、待つことを決めた彼の決意とは裏腹に田山の感情には今までと違う色が滲む。
意識するほどいつもと違ってしまう自分に、田山は忘れかけていた大事なことを思い出す…。

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」8巻巻末より

ついに「山田さん=田山」というのに確信を持ってしまった佐々木ですが、”その時”が来るまではこれまで通りの関係を続けようとしますが、隠しきれないのが佐々木さんの良い所であり悪い所(笑)

田山のことを「山田さん」とつい呼んでしまったり、彼女の見せる表情や仕草に対して、今までとは違う表情を佐々木も見せてしまう辺りは、彼らしい気もします

ただ、今回の8巻では佐々木が見せる変化から二人の関係性が変化する内容というよりは、山田自身に大きな変化があった巻と言えるような気がします

山田自身、これまでも佐々木を意識することは多かったものの、前巻での事件を経て、さらに佐々木の存在が大きくなったのか、普段のクールな山田とは思えない表情を見せてくれる辺りはとても可愛かったですね

また、山田が言っていた”その時”に関する事柄にも触れられており、その内容というのは山田の夢に関する事

山田はかつてこのスーパーの社員になることを夢見ていましたが、現在はその夢を諦めて、アルバイトとして働き続けていました

しかし、佐々木と出会い、その夢を再び目指したいと思い始めたものの、一度捨ててしまった夢をまた目指すという中途半端なことをしてもいいのか悩んでもいました

そのことを佐々木に相談すると、佐々木はこんな言葉を山田に与えてくれました

手放したものとまた向き合うために変わろうとするのは一体…どれだけ勇気のいる凄いことなんだろう。
たとえそれが、考えを簡単に変えただけに見えても、甘っちょろいように感じても、それはそう思うくらい向き合い続けてる証明で。そんな真っ直ぐなことを俺は中途半端だなんて思えなくて…

「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」8巻より

この言葉に心動かされながらも、それでも山田は「半端な気持ちに振り回されたら、そんな優しいことも言えませんよ」と佐々木に言います

しかし、佐々木は「そんなのどうってこと…ないのになぁ」と返し、山田は改めて佐々木の優しさに触れていくんですが、この二人が醸し出すこの空気感は本当に最高でしたね

恋愛面での空気感というのもそうですが、言ってほしい言葉を言ってくれた時の救われたような安堵感や安心感を与えてもらった時のそっと心に灯がついたような温かな空気感は、この二人らしかったですし、この作品らしくて素晴らしかったです

まだまだそんな二人の光景を見ていたいと思いつつも、話の流れ的にはもう終盤まで来ているのではないかと感じさせる内容にもなってきたので、二人の今後の行く末をしっかりと見ていきたいなとより一層感じさせるような内容になっているでしたね

まとめ

『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』の各巻の感想&解説でした!

人は多くの面を持ち合わせていますが、そういった面というのは知ってみないと分からないものです

特に第一印象があまりよくないと、そこに引っ張られてそれ以外の面を見ようとしないというのはよくあること

この作品に関してはタイトルや表紙の第一印象で敬遠する人もいるかもしれませんが、それは本当に勿体ないと感じています

多くの癒しを提供してくれるというのもそうですが、日常で抱える不安や悩みという部分を登場人物の心理描写や身近な日常で描いてくれているからこそ共感出来る部分も多くある

そして、心に寄り添いながら背中の荷物をそっと降ろさせてくれるような内容は、忙しい現代人だからこそ必要な時間を提供してくれているのかなとも感じます

そんな貴重な時間を、この作品と共に味わってほしいなと思っているので、是非気になった方は一度手に取ってみてくださいね!

それでは今回はこの辺で!

また会いましょう

こちらの記事もおすすめ!